第24話 夏祭り④
その後は、二人でかき氷を食べてお互い頭がキーンとなったり。
射的で、「ねぇ、あれ、狙ってみせてよ」と言われたぬいぐるみを予想通り外してガックリしたり。
大きな綿あめを、二人で分け合いながらしばらく食べ歩きをしたり。
そんな俺たちらしい過ごし方をしてるうちに、時間はあっという間に過ぎて。
「そろそろ帰ろうか。足は大丈夫?」
「うん、おかげさまで。行こっか」
二人並んで、行きと同じように、手を繋いで帰る。
ふと顔を上げると、進行方向の正面に三日月が浮かんでいた。
「綺麗……」
隣で琴美が、ふとそんな言葉をこぼした。
どうやら、琴美も俺と同じように、月を見上げていたようだ。
……でも、好きな人から、「月が綺麗」と言われると、どうしても意識してしまう。
「あ、今ドキッとした? ドキッとしたでしょ!」
おかげで、俺の変化を目ざとく見つけた琴美に、そうからかわれてしまった。
「……そりゃ、するでしょ。好きな人なんだから。琴美には、ずっとドキッとされっぱなしだよ」
俺は、そんな正直な気持ちを、また言わされてしまうのだった。
今日は琴美に恥ずかしいところを見せてばっかりだなあと、ぼんやり考えていて。
「……そっかそっか、じゃあ、おあいこだね」
琴美が事もなげにそんなことをつぶやいたのを、危うく聞き逃しそうになった。
「……えっ!?」
俺の反応も、ワンテンポ遅れる。
「おお、アタシの家、見えてきたねぇ、悠珠、今日はエスコートありがとうございました!」
そのせいでそんな言葉と、仰々しいような礼に、紛れさせられてしまう。
「そ、それはどうも……じゃなくて!」
「次のデートはいつがいいかな? また連絡してね。それじゃ!」
そんな明るい言葉を残して、琴美は扉の向こうに消えてしまった。
「……全く」
琴美の姿が見えなくなっても、頭の中は、さっきの琴美の言葉でいっぱいで。
あれは、本当に琴美が俺にドキドキしてくれてるって捉えてもいいのか。
それとも、そんな深い意味はない言葉なのか。
そんなことを、俺は家に帰ってからも考えてばっかりで。
相変わらず、琴美との恋人生活は振り回されてばっかりだなと、改めて思った。




