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第23話 夏祭り③

 お祭りが開かれている神社が近づくにつれて、琴美のように浴衣を着た女性の姿が増えてきた。

 それでもやはり琴美の浴衣姿は特別目を引くようで、周囲からの目線を感じる。

 中には女性と来ていた男性が琴美の方を見つめて、相手女性に怒られるといった場面も見受けられた。

 普段から手を繋いで学校に行っていることから、ある程度衆目を集めることには慣れてきたと思っていたけど、その目線が学生以外も含めたもので、さらにお祭りという人が多く集まる場所となると、まだ緊張してしまうようだ。

「さすがに、浴衣姿って目立つね」

 美人で人目を引きがちな琴美も、さすがにここまでは予想外なようで、苦笑いを浮かべていた。

「琴美は、ここのお祭り来るの初めて?」

「ううん、去年も友達と来たけど、その時は普通の恰好だったから」

 どうやら、浴衣でお祭りに来るのは初めてだったらしい。

「いや、その、やっぱり浴衣って大変だからさ、見せる人がいないとなかなか、ね」

 表情を照れ笑いに変えながらそう言う琴美に、俺はまた顔が赤くなってるんだろうなあと感じながら、

「ええと、ありがとう、で、いいのかな」

「よろしい、ふふ」

 そんなやり取りを返すのだった。


********


 さて、せっかくお祭りまで来たのだ、楽しまなければ損というものだ。

「どこから回ろうか?」

「そうだねぇ、なんかやっぱ、お祭りといったら焼きそば、って感じしない?」

「確かに」

 ということで屋台が立ち並ぶ中から焼きそばの屋台を見つけ、列に並ぶ。

 無事購入し、二人で一旦屋台群を抜けて、幸運にも空きがあったベンチで並んで食べることにした。

「う~ん! このいかにも焼きそばソースって感じの香り! お祭りに来た! って感じするね!」

 お祭りらしい味に満足気な表情を見せる琴美。

 やっぱり、琴美のこういう顔を見ると、来てよかったな、って改めて実感する。

 そう思いながら、俺も自分の焼きそばを食べ進めていたとき。

「っ!」

 ふと顔を上げたとき、周囲にいる一組の男女が目に留まった。

 女性のほうが男性に向けてたこ焼きを、いわゆる「あーん」の姿勢で食べさせ、男性側も「熱っ!」といいながらはしゃいでいた。

 あの「あーん」っていうやつ、琴美も時々やりたがるけど、未だに恥ずかしさに慣れないんだよなぁ。

 そんなことを思っていると、横からツンツンと指でつつかれた。

 思わずそちらの方を向くと、いたずらっぽい笑みの琴美がいて、

「はい、あーん」

 なんてことを言い出した。

「ちょっ、えっ、今!?」

 ここは家でも学校でもない、公共の場だけど!?

 しばらく目を泳がせてみても、琴美はやめてくれる気配がない。

「……わ、わかった。……あ、あーん」

 結局俺は、応じる他なかった。

「熱くない?」

「……顔はめっちゃ熱い」

 でもそのときの、イタズラが成功した子供のような琴美の表情が、とても可愛い、なんて思ってる時点で、本当に、しょうがないなあと思ってしまった。


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