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第3話 7年ぶりの日常

「お、()()のお弁当、ハンバーグ入ってるじゃん。悠珠のお母さんのハンバーグ美味しいんだよね。ちょっとちょーだい」

 入学式から数日経った頃、俺と(こと)()は時々昼休みに一緒に弁当を食べるようになっていた。

 俺は特に拒絶する理由もないので、弁当内のハンバーグを箸で切り分け、左手を下に添えながら琴美の弁当箱に渡す。

 これだけ聞くと俺と琴美が二人で弁当を食べているかのように思われるかもしれないが、当然ながらそんなことはない。

「ふふ、相変わらず緒方(おがた)くんは、琴美に甘いねえ」

 そう言って微笑む女性は、俺の前の席に座る江藤(えとう)()()さん。

 黒髪のサラサラロングにヘアピンを添えて、垂れ目気味のおっとりとした、琴美とは違うタイプの美人だが、なんだか琴美と相性が良く、二人はすぐに仲良くなった。

 江藤さんと琴美が仲良くなって、江藤さんの席の周りで琴美が弁当を食べているときに、近くにいた俺も「一緒に食べようよ!」と誘われて、それから時々一緒に食べるようになったというわけである。

「ん~! やっぱり美味しい! 毎日食べたいくらい!」

 琴美は心から美味しそうな笑みを浮かべて、俺が渡したハンバーグを食べる。

「アタシも悠珠のお母さんにお弁当作ってもらいたいな~」

「いや俺はともかく母さんに迷惑かけるのはダメだろ……」

「それもそっか! ま、これからも悠珠からもらえばいいしね」

「いや、俺への迷惑もできるだけ抑えてくれよ……」

 やれやれというような顔で返答をする俺だが、琴美とのやりとりは嫌いじゃない。

 これだけ琴美と話すのはほぼ7年ぶりのようなものだったが、実際に話してみると全くブランクを感じることなく、昔と同じように話せている。

 琴美のコミュ力の賜物という側面もあるだろうが、俺としては琴美と昔のように話せるようになって嬉しかった。

「いやあ、二人のことは見てて飽きないなあ」

 一緒にいる江藤さんも俺がグループに加わっても嫌がる風も見せず微笑んでくれているし、嫌われているということはないだろう。

 つまり、俺は琴美の協力もあって、無事にぼっちを回避できたのだ。


 また、話し相手が琴美たちしかいないというわけでもない。

 別の日、今度は男子グループに昼食に誘われた。

 琴美たちも別の女子グループで食べるらしかったので、俺としても断る理由がない。

 自分から話しかけるのは苦手な俺だが、話しかけてもらえる分にはありがたい。

 こういうときには大抵、琴美のことを質問されるところから会話が始まる。

 つまり、美人である琴美とお近づきになりたくて、仲のよさそうな俺からアプローチのヒントを探ろうというわけである。

 俺は「琴美との仲をとりもつとか、そういう器用なことはできないよ?」と最初に伝えているのだが、琴美の好きなことを聞いたりなど、何かしらの情報を得るだけでも価値がある、というのが彼らの意見らしい。それも子供の頃のことくらいしか喋れていないが。

 俺としても、彼らは琴美に嫌われたくないからだろう、俺に嫌がらせをしたり嫌味を言われたりするわけでもないし、会話のきっかけだと思って、不快感もなく対応している。

 話し始めたら、意外と話が合って、仲が良くなる男友達ができることもあるだろう、まあ、そのうち、きっと。

 ともかく、琴美の影響力もあって、俺は中学以前よりもだいぶまともな学生生活を送れるようになっていた。


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