第21話 夏祭り①
とある、夏休みの日のこと。
今日は、琴美のお母さんである響子さんが、母さんと家のリビングで談笑していた。
二人は昔から仲がいいため、こういうことはこれまでも時々あった。
そんな中、俺は自分の部屋で夏休みの課題を進めていたのだけど、そのうちに部屋に持ってきていたコップのお茶を、飲み切ってしまった。
暑い日々だし、水分補給は大事だ。というわけで、冷蔵庫からお茶を継ぎ足そうと思い、一旦部屋を出た
「あら、悠珠くん、お邪魔してます」
そんな時、響子さんに声をかけられた。
響子さんは髪色がちょっと琴美よりは落ち着き目な色だけど、琴美と同様、綺麗な髪質をしていて、琴美の母なだけあって、とても美人だ。
同じく整った顔立ちの母さんとの美魔女二人がコーヒーを飲んでいる姿は、それはそれで絵になっていた。
「ど、どうも……」
同級生の保護者と会ったときって、イマイチどういう反応をするのが正解かわからない。ましてや恋人の母親となると、特に。
とりあえず会釈とともに返事をした後、そのままキッチンに行ってコップにお茶を注ぐ。
「そうだ、悠珠くん、ちょっといいかしら?」
そこでもう一度響子さんに呼び止められたから、一旦コップはキッチンに置いてテーブルの方に向かう。
「いやね、来週に、近くの神社で夏祭りがあるじゃない? あれ、今年は琴美と一緒に行くのかな? って思って」
そういえば、そんな張り紙を近くで見た気がする。
「ええと、今のところは、まだ琴美とそういう話はしてないです」
とりあえず現状は実際そうなので、今のそのままを話す。
すると。
「あら、そうなの、いやね、もし琴美が悠珠くんと二人で夏祭りに行くようなら、週末にでも琴美に浴衣を新しいのを買ってあげようかと思って」
そんな返答がきて、思わずドキリとしてしまう。
琴美の……浴衣姿……。
和服美人の……琴美……。
思わず、その姿を想像してしまう。
さらさらとした亜麻色の髪も、艶やかな白い肌も、キラキラした青い瞳も、どれも浴衣にマッチしそう。どんなきらびやかな和服も、琴美にとてもよく似合うことだろう。
「ふふ、どうやら決まりでよさそうね」
そんなとき響子さんがそう言って微笑んでいた。
まずい、人前でだらしない顔を見せていただろうか?
恥ずかしくなった俺は、キッチンにコップを取りに戻るとそそくさとリビングから離れ、自分の部屋に逃げ帰った。
「琴美に、連絡しないとな……」
デートの約束を、相手の母親伝手に伝えるのは、さすがにあまりにも締まらない。
まずは琴美の予定確認からだなと、俺はチャットアプリの琴美のページを開くのだった。




