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第20話 夏休みの始まり②

 さて、勉強を進めていくうちに、昼食の時間となった。

「どうしようかね?」

「まずは、冷蔵庫に何があるか見たいかな」

 そう琴美が言ったことから、二人でキッチンに向かう。

「野菜の類は一通り揃ってる、お肉は……あ、豚肉があるね」

 琴美は着々と状況確認を進めていく。

「調味料は……あ、カレーのルーがある! これがいいよ、簡単だし!」

 そう言っていそいそとキッチンに食材を並べていく琴美。

「えっと、俺に手伝えること、何かあるかな?」

 そんな琴美に、俺はそう申し出た。

「えー、いいよいいよ。アタシ自身、作りたいって気分になってるし」

 やんわりと断られる。でも。

「世話になりっぱなしは、俺が気にしちゃうから」

「じゃあ、ご飯炊いてもらうとか」

「それはスイッチ押したら一時間待つだけじゃんか」

 俺のわがままに、琴美は色々考えてくれている。

「んー、でも包丁を二人で使ってるとかだと危ないしなあ……そうだ! ポテトサラダでも作ってもらおうかな! ジャガイモをチンして、潰してもらったり、キュウリをスライサーで切ったり!」

「了解」

 無事俺も仕事をもらうことができた。内心で「俺の気持ちを汲んでくれてありがとう」と思いながら。


*******


 トン、トンと琴美が包丁で具材を切る間、俺はジャガイモの皮むきを進める。

 琴美が具材を煮込み始める横で、俺はボウルに入れたジャガイモをマッシュ状にしていく。

 そんな、キッチンに二人並んでの時間が、続いていった。

「なんか、いいね、こういうのも」

 琴美は微笑みながら、こちらを向いてそんな言葉をくれる。

「……そうだね」

 

 まるで夫婦みたいで、とは口にしなかったけれど、琴美も同じことを思っていてくれたら嬉しいな、と俺は感じていた。


*******


 ご飯が炊きあがる頃には、カレーもポテトサラダもすっかり調理が完了して、すぐに盛り付けをすることができた。

 テーブルには俺と琴美が向かい合わせになるように、配膳をする。

「いただきます」

「いただきます」

 二人合わせて、挨拶をしてから、スプーンでカレーをすくって食べる。


「……美味しい」


 一口食べて、思わずそんな言葉がこぼれた。

 ルーやレシピは、普段母さんが作るものと大きく変化はないだろう。

 それでも、琴美のカレーは特別な味に感じた。

 以前琴美がハンバーグを作ってくれた時も特別に思えて、これが「隠し味は愛情」というものかと感じたけれど、今回はその時とも違う感覚が胸に広がっていった。


「えへへ、二人で作ったから、かもね」


 琴美が照れながら、そんな言葉をくれる。

 琴美の表情にも、満たされた気持ちがあふれているように見えた。


「これからも時々、こうしようよ。夏休みの間、さ」


 俺の提案に、琴美は晴れやかな笑顔で頷いてくれた。


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