後日談5話 悠珠 in 琴美グループ・前編
ある日、学校の放課後、琴美が俺の席までやってきた。
「ゴメン、悠珠、今日は友達と遊びに行くから、今日は一緒に帰れないや」
両手を合わせて「ゴメン!」って感じで、琴美が謝りにきた。
「ああ、わかった」
琴美は交友関係が広いタイプなので、珍しいことではない。
だから、全然問題ないという態度で返答する。
……本心?……そりゃあ、もちろん、琴美と一緒に帰れないのは残念だよ?
でも、「自分以外見ないで」みたいな束縛する男にはなりたくないし、琴美には琴美の時間を楽しんでほしい。それは本当だ。
そんなやり取りをしていると。
「ってかさ、緒方も来ればよくね?」
突然そんなことを言いだしたのは、同じクラスの、確か、東浜さん。
「確かに、私たち、緒方くんのことあんまり知らないかも」
「琴美の彼氏ってどんな人なのか、気になる~」
周りの女性たちも、東浜さんに同調する。
これは、断れない空気かな。
「えっと、悠珠、大丈夫?」
上目遣いにこちらの様子を伺いながら訊ねる、琴美。
「大丈夫、大丈夫」
俺としても、あまり知らない人たちと話すのは緊張するとはいえ、この後予定があるわけでもないし。
それに、そういえば、琴美が今友達と普段どう過ごしてるか、よく知らないな、と思って。
琴美のことなら、何でも知りたいな、と思って、琴美の友達含めて出かけることになったのだった。
******
琴美と東浜さん、それとさらに女子二人を含めた女子四人と、男子の俺一人という構成で歩き出す。
琴美の友達たち同士は元々よく話す間柄だから、珍しいメンバーである俺について質問が集中する形となった。
「二人はどんな経緯で付き合うことになったの?」
「あんまりかっこいい話じゃないんだけど……。琴美が他の人に告白されてるところに出くわして、その中で琴美が俺の事を好いてくれてるって話になって……。その後、立ち聞きしてゴメンって話をしながら、俺も、その、好きだよって話になって」
「琴美のことは、いつから好きだったの?」
「実は、自分でもよくわからないかな、ずっと前から、だとは思う。気づいたのは最近だけど」
「琴美のどんなところが好き?」
「えっ、えーと、もちろんどんなところも好きだけど……やっぱり、一緒にいて、琴美が全力で楽しんでくれて、こっちも楽しい気持ちにさせてくれるところ、とか? 本気で楽しんでる琴美の表情、可愛くて好きで……」
「ちょっと! 悠珠、なんでも話し過ぎじゃない!?」
そうやって話を琴美に制されていたりしているうちに、目的地のショッピングモールまでやってきた。
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「ほらほら、緒方くん、この服なんか琴美に似合うと思わない?」
「っ! い、いやそりゃ似合うかもだけど、ちょっと、なんというか、際どすぎるというか……」
目的地に到着してからも、専ら俺たち二人は話題の中心に持っていかれて、タジタジとしていた。
「琴美、いつもこんな感じなの?」
「そんなわけないでしょ! 悠珠がなんでも話すから、みんな面白がってるの!」
琴美が膨れた表情で俺に向かってくるけど。
「でも、そんな正直な緒方くんも好き、でしょ?」
「っ! それは、それはそうだけどさぁ!」
東浜さんからそう話を向けられると、自分も正直に答えてしまう琴美なのだった。




