第11話 何気ないことが
買い物を終えた俺たちは、ちょうど昼時から少し遅くなった時間ということもあり、お腹が空いていた。
そこで、俺たちは、ショッピングモール内に入っていた、格安で有名なファミレスに入ることにする。
程なくして入店することができ、俺はハンバーグのセット、琴美はパスタを注文する。
このファミレスは、一部のインターネットで「デートにこのファミレスはありえない」なんてことを言われることもあるが、俺はレストランの引き出しもあまり多くないので、ついよく知っているこの店に入ってしまった。
でも、琴美の反応は。
「あっ、悠珠のハンバーグも美味しそうだね。一口ちょーだい」
「ああ、いいぞ、ちょっと待ってな」
俺はハンバーグを切り分け、フォークとナイフで琴美の皿まで運ぶ。
「ありがとう! いっただっきまーす。……うん! ハンバーグといえば椿妃さんのハンバーグだけど、こういうのもたまにはいいよね!」
とても美味しそうに食べる、琴美の笑顔。
気を悪くしてそうな様子もなく、心から楽しんでいるように見える。
そんな琴美の笑顔を見ていると、俺の方も嬉しい気分になる。
それから俺と琴美は、いろいろな話をした。
今日のショッピングのこと、琴美の教えてくれた美容院のこと、学校のクラスメイトのこと、そして、小学校低学年のときの昔話も。
話の内容としては、ありふれたものなのだろう。
でも、俺はそれでも琴美と話すのと、違う人と話すのは違うと感じていた。
琴美と一緒に話すと、楽しい。
琴美と一緒にいると、居心地がいい。
そんなことを、実感する一日だった。