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マヌカハニー

 ところで、セラフィーナがヘンリたちに合う前、ローゼと街道をブラブラと彷徨っていた頃に、こんな事があった。


「ごほっ……ごほっ!」


「なんじゃセラフィーナ、風邪でもひいたのか……なのじゃ」


「ローゼ様、それは……ぶごほっ!」


「随分とひどいようじゃな」


 旅の途中、昨夜は街までまだ随分と遠いので野原にテント泊となった二人であった。昨日今日と峠道を進み、随分と冷え込んでしまったので風邪でもひいてしまったのかもしれない。


「お前のような者は風邪をひかないということわざもあるのじゃがな……地球という場所の日本という国にじゃな」


「なんですか? 美人は風ひかないとかですか?」


「まあ……そう思いたければ、そう思っていればよいのじゃ」


「あれ! でもそれじゃ、風邪ひいた私が美人じゃなくなるじゃないですか!」


「そうかもな……じゃ」


「大変ですローゼ様……一刻も早く治さないと!」


「なんでそうなるのじゃが……」


「ここは、そうだ、ローゼ様の魔法でちゃちゃっと治してもらえないでしょうか」


「お主、この頃、妾の魔法にたよりすぎじゃないか……なのじゃ」


「そうでしょうか?」


「そうじゃ……今日も少し歩いて疲れたからといって疲労回復魔法、食事の片付けが面倒だから洗浄魔法、というか食事の準備も妾が調理魔法で……村人に地域の宿屋聞くのも面倒くさいといって読心術魔法、果てには魔法に頼りすぎなので体がなまっていると行って筋トレ魔法……」


「はいヒップを重点的に鍛えてもらいました」


「お主、調子に乗って妾に頼り過ぎじゃ」


「そんな……ローゼ様ほどの偉大な魔術師が、私ごときの小さな者の、細かいこと気にしちゃだめですよ」


「全く、あああ言えばこういう女子(おなご)じゃ……いい加減もう騙されんぞ」


「そこをなんとか……風邪辛いんです……ごほっあ!」


「なんとなくわざとらしいのじゃが……どっちにしても、あまり魔術に頼りすぎると体の自然治癒力が劣ってくるぞえ。精神力もそうじゃ、少し辛いことがあれば、すぐに諦めてしまようなダメ人間になってしまうのじゃ」


「ああ、大丈夫ですそれ」


「なんでじゃ」


「わたし、もともと、少しでも嫌なら何事もすぐあきらめちゃいますから」


「……なんでこんなやつを従者にしちゃったんだろ妾」


「いやローゼ様の魔法が凄すぎるんですよ。だから渡したよちゃって……げほぉおおおお!」


「ともかくじゃ、その風邪はなおさんと旅に差し支えがでるのじゃ。とはいえ魔法に頼り切りもなんじゃし……そうじゃ」


「?」


「これでもなめてみなさい……のじゃ」


 ローズは空中に手を突っ込んで、魔法の収納から何かを取り出した。


「はちみつ? 確かに喉に良いって聞きますね」


「これはな、妾のもとパーティメンバーの故郷の地球という場所で珍重される『高級なはちみつでな……マヌカハニーと呼ばれるものじゃ」


「高級! すでになんか聞いてきた気がしますローゼ様」


「舐める前から聞くわけないじゃろ! このいい加減女が!」


「まあまあ……うわ、美味しい! 全部舐めちゃってよいですか!」


「一気に舐めるのではなく徐々に……ってもうひと瓶なめおわったじゃないかなのじゃ」


「なんか、喉ちょっと良くなった気がします」


「まあよいわ。甘いものそんな舐め続けられるもんじゃないからの。ほらこれ……」


 ローゼはバケツのように大きな瓶をセラフィーナの前に置く。


「今日は暖かくしてもう寝るのじゃ」


「はい……おやすみないさい」


 というわけで、セラフィーナを彼女のテントに残し、暖房魔法を適度にかけてあげてると外に出たローゼだったが……


 次の朝、


「ローゼ様、大変です!」


「なにがじゃ」


「今度は……歯が痛いです」


 空っぽになった大きな蜂蜜の瓶とほっぺたを晴らしたセラフィーナの姿を見て、心のなかで嘆息しながら、結局魔法を使うことに名乗るのじゃなと小さくつぶやく。


 今日も旅路を急ぐ、ふたりなのであった。



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