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さてその頃、イチャコラカップルの方は

 さて、別大陸の勇者ヴィンたちがこの世界の秘密に迫っているその頃、同じく勇者に覚醒した伯爵の御曹司ヘンリたちは、


「ヘンリ……いえダーリン、お疲れじゃありありませんか」


「大丈夫だよセラフィーナ……それよりもハニーのほうが心配だよ」


「は……ハニーだなんて、私がハニーならあなたは、もっと高級なマヌカハニーです」


「いいよ、ならばマヌカと呼んでくれ」


「はい、マヌカ、。ヘンリ。私のローヤルなマヌカ様」


「ならば、君もただのハニーではない高級な……ローヤル……ローヤルゼリーだよ」


「それならばゼリーと呼んでください!」


「おお、ゼリー!」


「おお、マヌカ」


 絶賛イチャつき中であった。


 馬車の中、何も無い大草原の中の一本道でのことだった。


「……なんじゃな、このバカカップル、妾らをまったく気にしなくなったの」


「そ……うだ……ね。でも……」


「なんじゃ?」


「わる……く……ない」


「そうじゃな」


 ローゼとセリナは微笑ましい表情で同じ馬車に乗るヘンリとセラフィーナを見る。

 特にセリナは、いつもとはずいぶん違うリラックスした様子だ。どうやら、眼の前のカップルに触発されて、なにか楽しいことを思いだしているようだ。

 陰鬱の魔女とも言われるセリナが時たま見せる、彼女本来の姿が垣間見える瞬間。それに気づいたローゼも嬉しそうだ。


 このまま、この星に来た目的を忘れて、気楽でほんわかした時間をずっと過ごしていられたら。ローゼはそんな柄にもないことを思うのだったが、


「妙な連中がいるのじゃ」

「そ……うね」


 そんな平和はローゼたちにはありえない。

 とはいえ、潜んでいるのは、


「ろくでもない小物の野盗といった感じじゃが」

「で……も……すこし……は」


やる(・・)のもおるようじゃな……」


 眉を少し歪ませたローゼは振り向いて、


「時にそこのマヌカ君」


「はい……?」


 振り向くヘンリ。


「この星にマヌカハニーなんてあるのかの?」


「?」


 そういえばマヌカって何? と言った顔のヘンリに、


「まあマヌカの話は後でセラフィーナにきいてもらってじゃな……お主も気づいておるだろう」


「ええ……」


 首肯するヘンリ。


「ずっとつけられてますね。でも、ローゼ様が気にするほどの相手ではないでしょう」


「それはそうじゃが、お主にはどうなのじゃ。楽勝かえ?」


「中に……二、三人が気になりますが……」


「まあお主なら大丈夫じゃな、油断しなければじゃが」


 と言われて、勿論といった顔のヘンリ。

 イチャイチャとだらけきってるように見えて、この御曹司、心の底まで緊張を解くことはないようだ。


「考えてみればなんぎな身分よの」


 高貴な身分の代償といえばそうなのだが、この後、伯爵家のみならず、この星を守るかなめとなる彼は、この後死ぬまでずっと心の底から休むということかがないのだ

 まあ、もっとも、


「ヘンリなら、誰が来ても余裕で大丈夫でよ!」


 横で、心から彼を信頼して、屈託のない笑顔を向けるセラフィーナ。彼女がそばにいるのなら、きっと御曹司の心も折れることはないだろうとローゼは思うのだった。


「ところで、その曲者らじゃが、魔法剣士と幻覚使い(ヒュプノス)。魔獣使いと地竜もそばに控えておるな」


「襲ってくる気でしょうか」


「わざわざ、こんな荒野ずっとついてきて、他にやることもないじゃろ」


「ローゼ様をメッツァに行かせたくないのでしょうか」


 英雄アウラたちも参加するメッツァの街での式典。そこに向かった第二聖女と一緒のイクスとロータスとに、ローゼは合流するつもりだ。

 といっても、何者かわからぬローゼだけ言っても城壁の中に入れてもらえないだろうから、ヘンリも同行することになっただが……


 ただし、後を追っている連中がローゼの邪魔をしたいと思ってる可能性は低い。そもそもローゼのことなど、もし存在を知っていたとしても、物好きな伯爵家が興味本位で世話をしている道化程度にしか思っていないだろう。


「それとも……狙いは私ですかね」


「そうじゃろな。勇者として覚醒したことを知っておるのかわからぬが……そうでなうてもお主の家を疎ましく思っている貴族の心当たりなど巨万(ごまん)とおるじゃろ?」


「そうですね。私から事を構えたくはないですが」


「相手は構わず襲ってくるのなら……」


「はい」


「少々めんどくさいあいてじゃが……任せてみても良いのじゃな?」


 勿論と頷くヘンリなのであった。


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