神々の派閥
「なるほど、そういうのはありそうだね」
「そっちのほうが自然ですね」
フェムとサクアは頷きながら言った。
魔族は神全員に疎まれていないのでもなければ、贔屓されていないのでもない。
人間派の神と、魔族派の神がいたというのであった。
「神々も争っていたといいます。その中で様々な派閥があり、その駆け引きの中で、魔族は新大陸に渡れずにいた……それが魔族を思ってのことなのかそうでないかは、どちらの派閥の神が通れなくしていたのかわからないのでなんとも言えませんが」
「結局、何が正解かわからないということだね」
「神々の心なんて今ではまるでわからないってことですね」
「はい。そしてなぜか、神々が消え去ってからずっとたってから、魔族の危機に突然魔通れるようになり……」
「そして、今度は、転移門じたいが消えたということか」
「タイミングが良すぎですね」
「魔族を思う神がまだ生き残っており。この絶対絶命のこの時にたすけてくれたという説がありますが」
「そんなんなら、もっと先に助けてほしいよね」
「なにか助けられなかった理由があるのかもしれませんが」
「どちらにしても……正解は誰にもわからない……あの、こんな話で役にたつのでしょうか」
「いや、問題ないよ」
「異説も含めて聞かせてほしいですね」
「はい……他に言われているのは、魔族の危機を予見していた神が。ちょうどその時に転移門が開くように仕掛けを残していたとあか」
「なるほど、理屈はあうね。神が消えているのだとしても、連中が残した転移門という仕掛けは残っていたんだからね」
「本当にそうなのかは、やっぱり誰もわからないのかもしれないですが……ですね」
キミーは同意の首肯をしてから言う。
「あとは、神の御業ではないという説ですね」
「ほう」
「偶然都合が良い時に門を通れるようになったとかではないよね」
「ええ……そうではなく」
キミーは、何者かを怖れたような表情を、顔に浮かべながら言った。
「それは古き神々の使徒たちの仕掛けた罠だと言うのです」