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ヴィンの誤解

 妖精の羽を隠して幼子にしか見えないフェムと、質の良いメイド服を来た妙齢女性サクア。

 高貴な家の幼子の旅行に付き添っているお付の者。

 二人の外見だけでみえばそう見えないこともない。


 しかし、普通はありえない。

 メイドがついて旅行しているような幼児に護衛がつかないなんてことがあるだろうか。

 現代の日本ではないのだ、荒野の真っ只中でいつ何に襲われるかわかったものではないのに。

 少なっくともただ(・・)の旅のものというのは嘘に違いない。


「なにか事情があるのでしょうか?」

「事情?」


 ヴィンがフェムに話しかける。


「例えば、お嬢様たちは遠方のバカンスから帰る途中、冒険者を護衛に付けて、古くから家に仕える執事と一緒に移動中」

「ん……あ、そうかな」


「ところが、荒野の一本道で、突然現れた盗賊の襲撃にあって護衛の冒険者は全滅……」

「え……そいういうこともあるかな?」


「でも、冒険者は全滅しても、元は有名な騎士であった執事が盗賊たちに立ち向かう」

「お、かっこいい!」


「元騎士の執事には、そのへんの盗賊たちなんてまるで歯が立たない。次々に敵を切り倒す執事」

「がんばれ執事!」


「しかし……」

「?」


「多勢に無勢、幾多の盗賊と切りあった剣にヒビが」

「やばい」


「ついに、盗賊頭の剣を受けた瞬間、折れた剣が地面に転がる」

「執事、逃げて!」


「しかし、執事は腹に剣を刺されながらもそのままタックルして盗賊の体を転がすと、後ろに回って首を折る」

「やった!」


「しかし、腹の傷は深く、命も絶え絶えな執事は言うのです『ここは私に任せて先にいってください』と……」

「それはフラグだよ」


「……であなた達は盗賊から逃げて荒野をあてもなく歩いてきた」

「ふむ、可哀想な女の子だな……盗賊共が憎いぞ」


「え? 本当にそうなのですか?」

「何が?」


「……盗賊に襲われて逃げてるって」

「誰が?」


「あなた達が」

「あたしたちが?」

「はい……」


 キョトンとした顔で首を上下させるヴィン。

 すると、


「なるほど……うん……そうだね」

「そうしましょうか」


 フェムとサクアが頷き合う。


「あたしたちがそんな可哀想な女の子だったら、やらなきゃいけないことがあるよね」

「そうですね」

「?」


 ヴィンの背中に、先程倒れかけてしまった時に負けず劣らずのゾットする寒気が走った瞬間、


「敵討ちをしないとね」

「徹底的にね」

「……何を、いったい」


 女子二人は声を揃えて言うのだった。


「「盗賊(おぶつ)は消毒だ」」


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