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マスカットの合流

 マスカット・(エース)

 暗殺者として育てられて、最後は自爆攻撃でヴィンを殺そうとした少女である。

 その、まだ短い生涯はとてつもなく悲惨。

 妹を守るために仲間を殺し、感情のない殺戮マシーンとして育てられてと思ったが……


 実は——


 というのは少し待って、今はマスカットはヴィンたちの仲間として活動しているということだけ語っておこう。


 で、ココ・ダメダに入ってから、別行動で街の様子を探っていた彼女は、調査が終わると

厳重なセキュリティに阻まれているホテルの最上階の部屋に安安と侵入を果たしたのだった。

 なんていうところから入ってくるんだという顔をしているヴィンをみながらマスカットが言う。


「私のいた組織の者なら余裕です」


「……とすると、ここに()もっていてもヴィンくんを襲撃に来る連中は諦めてくれないんですね」

「まあ、チンピラが次々に襲ってこないだけでも価値あるでしょ。コバエを払うのめんどくさいし」


 もちろん、サクアとフェムは、といってもまったくビビる様子はないが、


「組織——スキン・ウォーカーも、このホテルで騒ぎはなかなか起こしにくいと思います。この街の有名どころとは、いろいろな取引で深くつながっているので」


 マスカットもこの部屋に誰か攻めてくるとは思っていないようだった。


 悪徳の街——ココ・ダメダと暗殺者の組織は深く関わっていた。

 賭博場でイカサマを行った人物のみせしめの処罰や、街に敵対する人物の排除。

 表向きはできない、闇の行動を一挙に引き受けているのだった。


 街を代表するようなこのホテルであればかなりの付き合いもあるのだろう。

 ならば、宿泊客が殺されるような評判が立つような事は組織としてもやりにくい。


 危ないのは、ホテルを出る時、もっと危ないのは街を出る時。

 組織の街とのしがらみが消えるときであった。  


 あるいは、公的にヴィンを犯罪者としてしまって、引き渡しを要求するというのもあるかもしれない。


 本来は、盗賊団を壊滅させて、褒められることはあるにせよ、命を狙われるなどと言う理不尽な目にあうことはないはずである。

 しかし、すでに暗殺者も差し向けられている状態では、冒険者ギルドもどれだけ守ることができるかだが、


「ホテルの中で暴れられると困ると思いますので、ここを出てから、街に迷惑がかからない場所で仕掛けてくると思います」


 どうやら、すでにギルドはヴィンを売り渡したところまでマスカットは調査済みのようだ。

 なら、


「じゃあ、街に迷惑がかからない場所に真っ先に向かうとしましょうか」

「組織とか言う連中もその方がめんどくさくないでしょ」


「それは……」


 サクアとフェムの言いたいことがわかって言葉を詰まらせるマスカット。


「組織のアジトに突撃か。もともとそれをやりにこの街に来たんだ……」


 何の問題があるのかという顔のヴィン。 


 ヴィンたちは、逆に攻め込むつもりだったのだが、そのためには、

 

「組織の場所はわかったんですか」


「はい……でも……」


 マスカットは、自分と同じような暗殺者が多数控えてる、この町の組織——スキン・ウォーカーの拠点のことを思い浮かべる。

 自分の教官だった者も何人かいて、かっての絶対的な力の差を思い浮かべるだけで、背筋に冷たい感覚が走り、足がすくんでしまうのだった。

 しかし、実は、それよりも、


「暗殺者の少年少女たちと戦いたくないのですよね」

「マスカットちゃんは真実を知ってしまったからね」


「……」

 

 無言で頷くマスカット。


「それは私たちでなんとかしましょう」

「完全に染まって(・・・・)いたらどうしようもないけど」


「ありがとうございます」


「まあ、これは本来の目的のついでですから」

「イクスも現地に不干渉だなんて無粋なことは言わないよね」


「?」


 イクスと言われても、今は別の大陸にいる者のことなど知るわけもないが、


「あ、気にしないで」

「あんな根暗な男のことを詳しく知っても何にも得なことはないから」


「はあ……」


「それよりも、ヴィンですね」

「君には頑張ってもらわないと」


 サクアとフェムは振り向いてヴィンに言った。

 すると、


「はい、もちろん。全力で行って良いんですね」


 のりのりの様子だが、


「いや、いや。待ってください」

「君、本気でやったら大地斬り裂いてしまったの覚えてる」


「……」


「人間の街を破壊しちゃったら、それこそ大手を振って指名手配されちゃうよ」

「そうなったら弁護できないね」


 そうであった。

 魔剣を振るったら、盗賊の砦どころか、地平線の彼方の魔族の本拠地まで切り裂いてしまったのだ。


「すでに魔族には相当恨まれていると思いますが」

「そっちはすでに弁護できないね」


 ヴィンの一振りで大地に、一直線に刻まれた、大きな傷跡を思い出しながらサクアとフェムが言う。


「でも……そうでもなさそうです」


「そうでもないのですか? なにが?」

「魔族の恨みのっこと?」


「はい。というのも……」


 マスカットが言葉を遮るように、


「こんにちは魔族ヨーテ族の長——キミー・ダ・レンと申します」

 

 頭に角を生やした女性がベ横から現れたのであった。


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