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次に向かうのは……

 さて、場面は回想から戻って、昼の伯爵の館。

 廊下で立ち話もなんだと、セリナが眠っていた部屋に入り、語りあっていた3人であったが、

 

「不幸な男じゃったのじゃったの」

「はい……」


 ローゼの言葉にヘンリは大きく首肯する。


「で……も、最後に……話はできた? 充……分だ……った?」

「はい、もちろん! セリナ殿には本当に、いくら感謝しても感謝しきれません」


 何に? だが、


「あのままでは、サトレイ……ご先祖様はただ消え去るのみでした」


 ヘンリの剣の威力が、サトレイの斧を上回った瞬間、崩壊が始まった。

 伝説の勇者の動きは止まり、その体は少しずつ崩れ始めた。

 それはそうだ。

 眠りの秘術により老化を防いでいたと言っても、本来ならとっくに朽ちていないといけない体なのだ。ヘンリに打ちのめされ、地力の制御を失った途端に、後は消え去るのみしかない。

 はずであった……


「話した……そうだっ……た。あの……男……は」


 セリナが崩壊寸前のサトレイの時を止めたのだった。

 

 もともと、時が止まった世界の中での戦いであった。

 しかし、戦いの当事者二人と観戦者の時間だけは動かしていたのだが、その中で更に時間を止めたのが時の魔女——セリナであった。


 サトレイの崩壊する時だけを止めたのであった。

 我々は時と一言に言うのだが、実は多層的に折り合った現象の結果が時なのである。


 ならば、時の魔女セリナは、単純な時をあやつるのではない。

 折り重なり、絡み合った現象を操作するのであった。

 起きつつある崩壊という事象、その時だけを止めたのだった。


 止めた時の中で、ヘンリは、サトレイと様々な話を交わすことになるのだが、そのことに、そこで得た情報に非常に感謝していたのだった。


 まあ、何を話して、何を得たのかは、また別の機会にとして、


「これで、ご先祖様……サトレイも報われます」


 今は、ヘンリが言った感謝の言葉と、


「まあ、あの男もお前がこの後、この星を救えば報われよう」


 どうやら、重大な使命をヘンリを得たということだけ皆さんには伝えておこう。


 ともかく、


「はい」


 かなり重いローズの言葉を受けて、心から真剣に受け取ってうなずくヘンリ。


「……これから、いろいろと大変なことがあるぞ」


「覚悟しております」



「ふむ、お主を疑うわけじゃないのじゃがの」


「はい?」



「がんばるだ……けじゃ……だめ」


 セリナが優しく、少しだけほほえみながら言い、


「なこともあるのじゃから」


 ローゼが念押しするような表情で続ける。


「なのでじゃな」


「はい?」


「合 ……流す……る」


「どなたと?」


「それは、もちろんじゃな」


「勇……者……」


「勇者?」


 と言ってももはやこの世から旅立った伝説の勇者サトレイではなく、


「当代の勇者アウラじゃ」


 なのであった。


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