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 そして、斧と剣をぶつけあった二人の男。

 一人は人類を救うために勇者となり、しかしその力を人類のために使おうとする子孫を殺すために眠りについたサトレイ。

 もう一人は、代々伝えられた虚偽の修行を極めていたが、その枠から飛び出ることを選んだヘンリ。


 どうやら、二人の力は互角のようだった。

 地力(マナ)から地以上の力を引き出しぶつける。

 さっきまでヘンリに残っていた、戸惑いや怖れはまるで消えていた。


 サトレイには意外なことだっただろう。

 ついさっき覚醒を果たした者だ。

 この前の太刀までは、強すぎる力を怖がって恐る恐るそれを使っていたのだ。

 

 しかし、今は二人の力は拮抗している。

 今達することができる最大の地力(マナ)が彼らから放たれていた。

 どちらも引かぬ、押せない。


 彼らは、地力という媒介を通じて、地力を超えた力を、その深淵につながる何ものからか引き出しているのであったが、これが限界のようだった。

 地力という仕組み(スキーム)の限界であった。

 それ以上の力を、地力というパイプは送り出すことができない。


 はずであった……


「なに……!」


 突然驚愕した顔となるサトレイ。

 ヘンリの剣が明らかに勝り始めていたのだった。

 ジリジリと後退して、


「馬鹿な」


 弾き飛ばされるサトレイ。


「少なくとも……俺が負けることは……!」


 伝説の勇者の言う通りであった。

 理屈で言うならば。

 限界を超えるものはない。


 地力の限界をサトレイは使っていた。

 それ以上の力が、まだこの世の深淵に潜んでいることに彼は気づいていたが……

 使えないものを知っていてもしょうがないし、それ(・・)でも過ぎたものなのだ。

 

 人間には扱えない。

 扱ってはいけない力がある。

 その片鱗を知っただけで、サトレイは、それをなんとしてでも葬り去ることを決心した。


 自分が永遠の番人となって、その力に気づいたものを倒す。

 相手が、力に気づいたばかりの未熟なうちに。

 そう、先程までのヘンリのような。


 だが、


「もう御曹司のほうが上じゃな」

「そう……彼……に……は地力という枷がない」


 二人の戦いを見ている、ローゼとセリナの会話。

 

「この土地(ほし)の連中の言う地力(マナ)とは、あくまでもこの世の深淵から力を引き出す方法の一つでしかないのじゃ」

「そ……の……限界に触れ」

  

「立ち止まるものと……先に進むものの違いじゃな」

「先……祖の方の負け」


「うぉおおおおおおおおお!」


 雄叫びとともにヘンリの剣が輝きを増した。

 この時、彼は限界を越えた。

 サトレイが怖れ、立ち止まった暗闇を、未来に向けて届く、まばゆい光が照らしたのだった。

 この星の人類が長らく探求して、洗練させた、地の精霊との契約はヘンリによって書き換えられたのだった。

 宇宙(そら)との契約へと……


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