ヘンリのピンチ
ヘンリの宣言のあと、明らかに動きが変わった。
パワーもスピードも段違いにとなり、それになにより……
気合が違った。
「はあああああ!」
「!」
元勇者のサトレイも余裕ではいられない。
打ち込む剣を、一太刀目はいなしても、
「——はっ!」
すぐに次の太刀が来る。
「は、は、はああああああ!」
「……」
連続で繰り出される攻撃に、石化して全盛期の力はないとはいえ、伝説の勇者は防戦一方である。
しかし、ヘンリ、いくら何でも気合が入りすぎのように見える。
この一気呵成の攻撃で相手を仕留められるなら良いが、
「……」
元勇者は淡々と攻撃を受け流す。
「はぁ、はぁ、はぁ……はあ……」
正直、ヘンリの攻撃は段々と弱々しくなっていき、
「——うぁっ!」
隙をつかれて反撃された勇者の一撃に剣が止まり、
「ヘンリさま!」
セラフィーナの叫んだ瞬間、体ごと飛ばされ、床を転がる。
「まだまだです……」
ヘンリはすぐに立ち上がりながら言うが、明らかにふらふらとした彼をセラフィーナは心配そうな顔で見つめる。
「大丈夫です」
しかし、
「段々とわかってきました」
ヘンリは、再び剣を構え直しながら言うのであった。