ヴィンの正体
オプテシアン盗賊団四天王が全員地面に転がると、
「拘束!」
ヴィンの詠唱とともに四人が鉄の帯で拘束される。
冒険者として魔物を生け捕りにするときの魔道具として携帯していたものだが、こうやって賞金首を捕まえるのにももちろん役に立つ。
なぜなら、
「こんな盗賊でも、命までは取らないんですね」
「ヴィンくん優しいんだね」
「……違いますよ……あっ」
意識を少し取り戻しかけて、モゾモゾと動き出した岩拳のダギの頭を蹴っ飛ばして、もう一度気絶させながらヴィンは言う。
「生け捕りのほうがだいぶ報酬高いんですよ……みんなの恨みを公開ではらされますからね」
「……おっと打ち首獄門」
「釜茹での系とか、鋸挽きとか……」
「……? まあ、ここで死んでたほうがこの連中が幸せだったことはまちがいないですね」
「なるほどですね」
「犯罪者の人権なんてまだ無い時代だよね」
「……でもですね。ちゃんとこの連中を冒険者ギルドが引き取ってくれればですが」
「あ、そうでしたね」
「盗賊団と敵意対すると魔族たちと戦うことになってしまうんだよね」
「そうなんですよ……引き取ってくれなくて、人質交換に使われてしまうかも……いや魔族が人質返したくらいで戦うのをやめるとも思えないですが」
「戦争になるんですか」
「ヴィンくんが罪に問われたりしないのかな」
「……それは」
ヴィンは苦笑いしながら言う。
「あなた達からいわれたくないですが……」
魔剣とやらを振らせて、盗賊の砦どころか魔族の住む山にまで攻撃をしてしまった——元凶の二人がよく言えるなと思いつつ。
しかし、
「まあ、じゃあ、このまま続けるしかないよね」
「戦争を私達で」
と、あっけらかんと言うサクアとフェムに、
「最初からそのつもりだったんでしょ」
不敵に笑いながらヴィン。
「さすがにわかりますよね」
「あたしらの目的は」
「なんでか知らないですけど……魔族と戦いたいんですね」
頷きながらサクアが言い、
「まあ、そういうことです……この後も頼みますよ」
そして、フェムが続けるのであった。
「勇者ヴィンくん」
と。