四天王で最弱!
そして、ヴィンのパンチの後、ゆっくりと地面に倒れたダギ。
その姿を見て、サクアが言う。
「ヴィン君なかなかやるね」
「さすがセリナが予言した男だよね。これは、きっと……」
フェムも感心した表情で何か言いかけるが、
「なんだ!」
「ダギが倒されたのか?」
「誰がやったんだ」
砦の方から現れた騒がしい三人の声にかき消される。
「あいつか」
「ダギの前にいる奴か」
「おい、おまえ!」
「はい?」
ヴィンが呼びかけにこたえると、
「こいつで間違いなさそうだな……だが……」
「ダギを倒したくらいでいい気になるなよ」
「奴は四天王で最弱」
こんなことを言う連中は間違いなく、
「俺は、オプシディアン盗賊団四天王が一人、疾風のジグ」
「同じく、四天王、業火のドガ」
「四天王、獄凍のビギ」
四天王の残りが登場であったが、
「おお、有名な皆さんと戦えるんですか!」
随分とうれしそうなヴィンである。
「……戦う? それはそうだが」
「怖くないのか?」
「おまえ大丈夫か……」
完全に危ない奴扱いのヴィンであった。
そりゃ、まあ、その通りなのであるが、
「誰からやりますか!」
「なに」
「誰っからって……」
「そりゃ……そうだな……」
お互いに牽制する四天王……じゃなくて一人かけて三天王であった。
最初に負けた、ダギが最弱とは言ってみたものの、別に天と地ほどの知新の差があるわけではない。
次に戦うのは自分は嫌だ。ヴィンの実力をもっと見てみたい、もっと疲れさせてから戦いたい。そんな風にお互い思ってしまっていたのである。
「みなさん、決まりましたでしょうか? 戦っていただける人は」
「何? 急かすのか?」
「おまえごときに手を汚すのが誰なのか迷ってるだけだ」
「戦っても何の面白みも無いからな」
「そうですね……修行中の冒険者ごときに、有名な皆さんが真面目に相手してくれるのは過ぎた願いですが……どうせなら、一度に全員ではいかがでしょうか?」
「……」
「は?」
「なんだと……」
アホを見る目になる盗賊団の三人であった。
あるいは、挑発なのか。
若造がまとめてかかってこいなどと舐めやがって……とか。
「じゃあ、やってやろうじゃないか」
「おまえが自分で行ったことだからな」
「三人でまとめて相手になってやろう」
汚いなどとは言うまい。
こいつらは所詮盗賊団なのだ。
正々堂々など期待する方がおかしい。
一対一で戦ったって、形勢が不利になったら、あっさり背中から襲ってくるだろう。
それくらいなら、
「それじゃ……お願いします」
三人まとめて相手するほうがまだまし。
適当そうに見えて、実は、結構ちゃんと考えている、ヴィンなのであった。




