表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/89

深夜の追跡者

 自分をつけていた男が誰なのかに気づいたディーノは言う。


「勇者を助けた男ですか」


「ほう、それを知っているのか」


「ええ」


 首肯し、


「……じゃあ。どこまで事実を掴んでいるのかな?」


「……」


 無言となるディーノ。


「言うわけ無いか」


 また首肯しながら、ディーノは、


「何の用ですかね。あなたと敵対する気は無いのですが」


「俺も、無意味におまえらに難癖をつける気はない。誰が善なのか悪なのかここ(・・)での善悪など判断できないからな」


「ここ? はて、あなたは一体どこから来たのやら?」


「……まあ、どこかは勝手に想像してもらって良いが……」


「……食人鬼(グール)を悪としない国などどこにあるのやら」


 と、少し、拗ねたような、皮肉っぽい口調のディーノに、


「行ってみたいのか?」


「は?」


 イクスは至って真面目な顔で、


「そんな世界もある」


「どこに?」


 ふざけて言っているのなら、許さないという表情のディーノに……


 イクスは星空を見る。


「……(そこ)にあると」


「お前が信じるならな」


 相変わらず、冗談などまったく言ってるそぶりのないイクスに、ディーノは、


「なるほど……信じたいところですが、あなたは私に希望を伝えるために来たわけではないですよね」


「そうだ」


「罪を問いたいわけでもないのですか」


「おまえらの善悪に関わる気はない」


「泣き叫ぶ女たちを食い殺したことも不問にしてくれるのですか。それはありがたい……しかし……」


 ディーノは右足を前にだして攻撃の構えを取りながら言う。


「なら私になんの用……ですかね!」


 と言うと、瞬く間にイクスの懐に飛び込んで、目にも止まらぬ速さで手刀を放つ。

 何十発も。疲れなどいっさいないかのように、スピードも威力も変わらずに。食人鬼の驚異的な体力を、爆発的に集中させる。

 手に長く鋭い爪をたてて、ただの人間では、いや勇者でもこの猛攻に無傷とは行かなかっただろうが……


「……終わりか?」


 何事もなかったかのように、退屈そうな顔で立つイクス。


「触れることさえできずですか」


 ディーノの攻撃は全てイクスにかわされた。


「これで終わりか?」


「いえ……」

 というと体が膨れ上がり、食人鬼(グール)の真の姿に変形するディーノなのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ