更に魔物
暗闇の中から更に現れた魔物たち。
それはローゼが倒した鎧をきた骸骨だけでなく、
「ちょっとぉおお、キモいんですけどぉおおお!」
甲がとれて頭の骸骨がむき出しな男。そもそも鎧もつけていなかった雑兵であるのか、胸当て以外の衣服も破れて体がむき出しの、手足を滑稽な様子で振り回す。すると、ミイラ化した肉が離れて飛んできて……
ピチャ。
「ひぃいいええええええ!」
セラフィーナの顔にべったりとくっつく。
……のは無視をして。
「……なるほど、これだけ集中して襲ってこられたら手練が一人二人踏み込んだぐらいではどうしようもないな」
「軍をまるごと投入したらなんとかなるかもしれませんが……」
「城から出てこない魔物相手にそこまでして、軍が弱ってしまったら元も子もないの」
「はい。そもそも、夜に魔物が出ることで城に興味本位で入っていく者たちの牽制になりますから、実はそこまで討伐にこだわっていないのですが」
「世間体かえ?」
「受け継いだ城の魔物討伐をする気がないとなっても不味いですので、我が伯爵家はかなりの報酬で討伐クエストを出しているのです」
「それで面目を保とうと言うことじゃろが……応じる奴らがいるのかえ?」
「腕に覚えがあって、命知らずという連中はどこにでもいて、今までにそれなりの数のパーティがこの城に入っていったのですが……大抵はほうほうの体で逃げかえることになってしまっています」
「大抵はということは、大抵じゃない奴らもいたのかえ?」
「大抵じゃ——なかった残りの、少数の冒険者たちは、惨殺されて、あの仲間入りです」
ヘンリの視線の方向には、まだ随分と肉のくっついた、ゾンビのような者が数人混ざっているのが見えた。
「最近、連中の仲間になったのがおるようじゃな」
「若手の注目株パーティだったのですが。へたに実力に自信があるせいで逃げ時を失ってあのざまです」
「若さゆえのあやまちかなのじゃが……結果があれなのはご愁傷さまじゃの」
「この城内で死んだものは、魔物として夜に徘徊することになることは広く知られています。あの者たちも分かっていてクエストを受けての結果ですから同情はしなくても良いのですが……」
「このまま魔物として、永遠を生きるのは流石に可哀想な気がするの……とはいえ、単に死体を操られているだけではあるのじゃが」
「ええ……魔物は、この城の残留思念に操られた、魂もない抜け殻ではありますが、あの者たちを不憫と思うのなら……」
「どっちにしろやることは同じじゃ……ちゃっちゃとやってしまうのじゃ」
とローゼが言うとととも、魔物たちは全て、一瞬光った後、消し炭も残さず消え去るのだった。