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岩拳のダギ

 そして、


「で、武器は何を使うんだ?」


 もう一歩踏み込めば、戦いが始まるという場所で立ち止まって、ダギが言う。


「武器?」


「見栄をはらずに魔剣とやらを使っておけばよかったのにと思うが……かわりに使うのは何だ? 剣か? 槍か?」


「ああ、そういうことですか……では、あなたは何を使うのですか? もちろん……」


「聞く必要無いだろ。俺は……」


「岩拳のダギですか」


 分かっているなら聞くなといったように、少し顔をしかめながら頷くダギ。

 彼の名はこの地に来て日が浅いヴィンの耳にも届いていた。


 武器を一切使わずに拳で敵を倒す。

 己の拳のみで生きて、街のチンピラから王国の警備団の幹部にまで成り上がった異例の経歴を持つ男である。

 もちろん、剣だ槍だに対応するわけであるし、本当に生身の拳だけでは限界がある。

 ダギには、ある特技があった、


「闇精霊術——硬化レベル1」


 短い詠唱の後、どす黒い煙に包まれて彼の拳が硬い岩に包まれる。


「さてどうする? そこらの剣などでは、この岩と化した拳をとめることなどできないぞ」

 

 自分の勝利を確信して、いやらしい、相手を蔑んだような笑いを浮かべるダギ。

 確かに、岩と剣では、槍でも、まともにぶつかったら岩の勝ちは揺るがない。

 少し岩がかけることくらいはあるかもしれないが、圧倒的な質量差によって、剣が折れ曲がって終わりである。

 武器がなくなれば、その後は剛腕により岩を連続で叩きつけるタコ殴りで一貫の終わり。


 この技によって、剣士殺しの異名をとるダギであった。

 しかし、


「……では拳には、拳で対抗します」


「はあ?」


 お前は馬鹿かと言った表情のダギであった。


「だってせっかく拳で名高い相手と戦うのに、剣で切りつけても修行にならないじゃないですか」


「何を言ってるんだ……もしかしてお前も硬化の術が使えたりするのか?」


「ぜんぜん」


「はあ?」


「拳を痛めるといやなので、革ぐらい巻いても良いですかね?」


 キョトンとしたままのダギを無視して、拳に革を巻き始めるヴィン。


「おまえは……」


 おちょくられているのかと思い、激昂するダギ。

 岩となった相手に手をすこし保護したところでどうなるというのか。

 そして、


「殺す……」


 ダギの怒りが最高潮となったところで、


「では!」


 遂に戦いの始まりであった。


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