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一触即発

 そして、盗賊団の前にヴィンが立つと、ニヤリと笑いながら筋肉ゴリラ男——四天王ダギが言う。


「……一人でやってきた度胸だけは褒めてやる」


「あんたも一人で戦うって保証してくれるのですか」


「なに!」


 指摘が図星なのか少し目が泳いでいて、


「負けそうになったら、他の連中が加勢してくるんじゃないんですか」


「……!」


 それとなく顔をヴィンからそむけるダギであったが、


「おまえ何を言ってるんだ!」

「ダギさんがそんな事をさせるわけ無いだろ!」

「ふざけたこと言ってんじゃねえ!」

「身の程知らずが!」


 盗賊団の悪役モブたちが逃げ道を塞ぐ。

 ダギはちょっとあせった顔になりながら言う。


「……ふ、舐めやがって。俺を本当に怒らせてしまったようだな。いいか、おめえら、この戦いに手を出すんじゃないぞ……なるべく……できればだがな……」


「わかりました」

「ダキさんさすがです」

「おまえ、(あに)さん怒らせたこと後悔するぞ」

「もう、きさま命も長くないな」


 子分たちが空気を読んでくれないのに、苦虫を噛み潰したような顔になるダギは、


「……では、やるかな。かかってこい……本当に来るか? 良いのか? 死んじゃうかもしれないぞ」


 やっぱり気乗りしない様子であったが、その理由は、


「まあ、これだけの盗賊団の幹部、さすがにただの脳筋のバカというわけではなさそうですね」

「自分たちの砦が何かで破壊されたんだからね。相手がそれだけの攻撃力もってるのなら警戒するよね」


 ダギの様子を遠くから観察しながら、彼の胸の内を探るサクアとフェムであった。

 もちろん子分たちになめられないように後ろ姿は堂々としたものであるが、サクアとフェムの方から見ると、明らかにヴィンのことを警戒している様子が表情から読み取れる。

 ヴィンも、盗賊団の出方を伺うために立ち止まり、睨み合いが少しの間続くのだが、


「けどな、ダギさんに相手させるほどの奴なのか?」

「確かにな……」

「兄さんに()ってもらうのは失礼なんじゃないか?」

「俺たちでしめちゃおうか?」


 どうも、子分たちの方は戦いたがっているような様子だ。


「え……そうか、お前たちがそういうなら挑戦させてみるのも上司の勤めというか……なんというか……」


 ならば、この流れにうまく乗ってしまおうと思うダギ。

 相手の力を子分で探ろうとしているようだ。

 その様子を見たサクアとフェムが言う。


「こりゃ、このままじゃヴィン君が無意味ザコと戦わされて、時間が無駄になる流れですね……ちゃんと言ってあげたほうが良いですよね」

「そうだね……じゃあ……」


 サクアとフェムが大きく息を吸って、


「おおい! そこの筋肉おじさぁああん!」

「気づいてるかぁああい!」


 那義に向かって言う。


「なんだ」


「そこの人ぉおおお……ヴィン君だけどぉおお……」

「砦を破壊した、この魔剣はこっち置いて行ってるよおおお!」 


 フェムがひらひらと頭上でふる剣をみたダギは、


「何!」


 思わず顔に笑みが浮かぶのであった。


「……お前ら……やっぱり俺がやるからな!」


「……」

「……」

「……」

「……」


 ダギの変わり身の速さに、さすがに無言の手下たちであったが、


「それじゃ話まとまりました? 準備良いですか?」


 騒ぎの最中に盗賊たちの近くまで歩いていたヴィンが言う。


「……ふん、いいだろう。しかし、俺が誰だか分かってそんな事いってるんだろうな」


「もちろん」


「ふん、その魔剣とやらがなければ……お前みたいな若造如き……」


「はい、魔剣は使いませんので……ではお手合わせお願いします」

 

 ジリジリと近づいて、一触即発の状態となる二人であった。


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