ヴィンの気づき
「四天王ダギ……」
彼も名を知る強敵の登場に、少しこわばった面持ちになるヴィンであったが、
「お、ネームドがきましたね」
「強いのかな」
相変わらず緊張感のかけらもないサクアとフェムである。
ヴィンは、そんな二人を見て、苦笑しながら、
「……あなたたちが何を考えているのかわかりませんが……この後、放っておいても大丈夫なんですね?」
サクアとフェムが、見た目の通りのか弱い女子二人ではないのに、流石に気がついたのであった。それどころか、自分が今まで手合わせをした誰よりも強い——比べ物にならないと思っていた。
この二人の本当の力は、入念に偽装されていたが、
「もちろんです」
「助太刀が欲しかったらいつでも言って」
と言いながら、真の力を、ちら見せしたサクアとフェム。
「……あなたたちが盗賊に襲われて逃げ惑っていたわけはないですね」
と、一瞬感じた途方もない力に、背中をゾゾッとしながら言うヴィンであった。
「嘘ついていたのは誤りますが」
「というかヴィンが勝手に勘違いしたのもあるよね?」
「それは……認めますよ。まあ、どうやらお二人はここの盗賊全員が襲ってきても全く問題ないのは理解しました」
「なら、後は思う存分やってください」
「その剣使っても良いけど」
「……いえお返しします。こんなもの使ったら修行にならないんで」
と言いながら魔剣をサクアに渡すヴィン。
「なんか楽しそうですね」
「ヴィンはこのまま盗賊と戦ったら魔族と全面戦争になると心配しないのかな」
「……それは今更でしょう」
「確かに、盗賊の砦だけでなく、魔族の本拠地の山脈まで攻撃してしまっていますからね」
「ヴィンくん大変なことしちゃったね」
「……誰がやらせたんだか」
「というか、君、怒ってないでしょ」
「むしろ嬉しそうだけど」
「……そうですね」
ちょっと恥ずかしそうな顔で頷くヴィンは、
「おいおい、お前、俺を無視してふざけてんのか」
盗賊団のダギに怒鳴られると、
「……では、あの人怒ってるみたいなので」
ちょっとウキウキとした足取りで戦いに向かう。
「ありゃこまった戦闘狂ですね」
「イクスと同じ匂いがするね……」
それを見て、仲間の同類の男を思い出すサクアとフェムなのであった。