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イチャコラは後にして……

2023/3/27 城の名前を訂正しました。

 さて……


 伯爵の御曹司ヘンリを前にして、悪徳子爵の放蕩娘にして——今はローゼの助手であるセラフィーナ。

 彼女は、か弱き女のふりをするのに忙しいようだ。顔を赤らめて後退りしそうなヘンリを逃すまいと、体に手を回してギュッと抱きしめるついでに、柔らかい部分をぐっと押し付ける。


 困った顔になりながらも拒否する様子のないヘンリ。

 こりゃ御曹司は陥落寸前、勝ち目ないねと思われたが、


「……ふたりとも、乳繰り合うのは後にして、まずはここに来た目的を思い出すのじゃ」


 ローゼがふたりの様子を見かねて諫める。

 セラフィーナが調子に乗り過ぎで古城の魔物退治がいつまでたっても始められない。

 放っておいたら朝までイチャイチャしかねないような感じだった。


 とはいえ、父親である伯爵の命を受けてここに来たヘンリである。


「はっ……セラフィーナどの、ともかくこの後の心配はなさらずに、このヘンリを信じていただいて……魔物を退治に行きましょう」


 確かに、こんなことをしている場合ではないと、あわてて体を離すヘンリに、


「……ちっ」


 悔しそうに顔を歪めるセラフィーナ。

 もちろん、絶妙な角度で下を向いて、醜い表情はしっかり隠しているよ。

 ヘンリからみたら、怖くてうなだれてしまったかのようにしか見えない、自然な動きで……

 

「……女優よのう。まあ、セラフィーナも城の中に向かう気になってくれたなら問題ないのじゃが」


 どうやらヘンリの同情をかうチャンスとわかり、怖さなどとっくに吹っ飛んでいる元不良令嬢さまであるが、 


「ローゼさん。わたくし、頑張ります。少しでも、ヘンリ様の助けになるように」


 演技はまだ続けるようであり、


「セラフィーナどの……」


目にハートマークが浮かぶ 御曹司は、大根役者に騙され続ける。


「まあ……良いかなのじゃ」


 まあ、少なくとも、さっきまでのへっぴり腰はどこへやら。このまま古城に突入する気満々のセラフィーナである。 

 ならば、ローゼとしては、


「では、さっさと城に入ることにするかのう。魔物退治したら二人でどこかでしっぽりやってもらっても、まるで構わないのじゃが、ともかくひと仕事終わってからじゃな」


 と言うと城門をくぐる。

 慌ててついてくるヘンリとセラフィーナを従えて……

 こうして三人は魔物がでるといわくつきの場所、ペルコ城の敷地に足を踏み入れるのであった。


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