page0,彼のように
何もない平野にて、一人の男が歩いている。
身長は180センチほど。
その高身長には見合わぬ細身で、筋肉も皆無。
10人が見れば9人が「ヒョロい」と言うであろう見た目である。
男の背中には、大きなリュックが抱えられており、各所に見える汚れやほつれから、一目で使い込まれたものと分かる。
「あー……眠い、さっさと店構えて布団に入りたい……」
男は疲れた表情を浮かべると、目の前に反り立つ城壁……そこに空いている城門へと向かう。
「そこの者!我が国に何の用だ!」
重そうな鎧をガシャリと鳴らし、地面に刺していた槍を向けながら、"いかにも"な様子の門兵が男へ問いかける。
「あーいや、俺は怪しいもんじゃなくて……って、こんな言
っても意味ねぇんだよな……」
男は門兵の言葉に肩を竦めると、慣れた様子で言葉を紡ぐ。
「ここの国で一月ほど金を稼ぎたいんだ……。
勿論おたくのルールには従う。
入れない理由があるんなら諦める。」
門兵は男の、よく言えば人の良さそうな、悪く言えば気弱そうな雰囲気に毒を抜かれたようで、警戒を解くと……
「あぁ……悪い。我が国への入国者は少なくてな。
どうしても態度は厳格になるんだ……
入国希望なら大歓迎だよ。」
そう男に言いながら、入国者用の書類を取りに行く。
手を動かしながら、門兵は男へと尋ねる。
「詳しい身元なんかはあとで書いてもらうが……
先に言っておくことなんかはあるか?」
男は、これまた慣れた様子で、門兵に向かってすらすらと口上を述べる。
「そんじゃあ……」
「この国で使われている最も広く、早い通信手段で、以下
の 三つのことと俺の泊まる宿の住所を国民に伝えてく
れ。」
一,俺が一ヶ月この国に滞在すること
二,俺は来国した国で何でも屋をしていること
三,何でも屋としての依頼は泊まっている宿で行うこと
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男は足取り重く、門兵に手配してもらった宿へと向かう。
「先ずは仮眠、んで店のセットをして……
そしたら適当に外回りでも行くかな……」
どうやら、身体の疲れとは裏腹に、心境は明るいようである……