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目を覚ましてみたら

「――ッスか!? 大丈夫ッスか!?」

 

 ――だれかの声がする。

 それに、周りですごいたくさんの音が響いてた。

 

「ここ、は……?」

 

 つぶやきながら、ボクは目を開ける。

 

「よかったぁ……! 無事だったみたいッスね」

 

 ボクの横で声がして、そちらに視線を向けてみると、そこには体が大きくて人間みたいな姿をした――

 

「わんこぉっ!?」

 

 ヒトに似た姿のケモノ……獣人(じゅうじん)ってなんて初めて見たから、おもわず声をあげてしまった。

 

「とりあえず、大丈夫みたいッスね……」

 

 犬獣人は、驚いた顔をしていた。

 

「ごめんなさい。 ホンモノの獣人なんてはじめて見たからおどろいちゃって」

「平気ッス。 オレも、本物のニンゲンははじめて見たんで」

「そうですか」

 

 そういえば、ここはどこなんだろう?

 周りには真っ白なカベとか、SFっぽいデザインの通路があるけど、詳しいことはわからない。

 

「ここはいったい……」

「わからないッス。 オレたちも、ここから外に出たことがないッスから」

 

 建物の作りから考えて、なにかの研究所?

 動物の魂とヒトに似た姿の人形さえ用意できれば、死霊魔術であのヒトみたいな存在は作れるだろうし……。

 

「たぶん、野良のネクロマンサーが作った研究所だと思います。 ネクロマンサーのなかには、アカデミーに入らないで好き勝手に活動してるのもいるから」

「そういうキミもネクロマンサーなんスか?」

「まだ見習いです」

 

 見習いと聞いて、犬獣人は首をかしげた。

 

「基本中のキホンもできないですけどね」

 

 ネクロマンサーの基本。

 それは、どれだけの人でなし(・・・・・・・・・)でいられるか。

 

「キホン?」

「パートナーとして大切に育てたペットを、1時間後には生贄にするとか、動物をカワイイと言いながらゾンビにするとか。

 そういう、ひとでなしの考え方ができないと、立派なネクロマンサーにはなれない。 ボクはそれができなかったんです」

 

「キシャァァ!」

 

 色々と考えていたとき、ボクの背後で鳴き声がした。

 

「――――!?」

 

 ふり返ると、そこにはひと昔前のマンガに出てきそうな半魚人がいて、ボクたちに飛びかかろうとしていた。

 しかも、そいつのうしろにも奇妙な見た目をした半魚人がたくさんいる。

 

「半魚人!?」

「あれもアンゲルスッスよ! 名前はバキエル」

「教科書で見たことがあります。 たしか、量産型の天使ですよね」

 

 アンゲルスが現れたなら、戦うしかない――!

 ボクは横に置いてあったケースを蹴って、フタを開けた。

 

「やっぱり、それはキミのものだったんスね」

「アカデミーからもらったコフィンです」

 

 このケースには、ボクが進級したときにアカデミーからプレゼントされたコフィン『アジ・ダハーカ』が入っていた。

 

「キミも戦えるなら心強いッスよ。 オイラだけじゃ、これだけの数は相手できませんから」

 

 イヌの獣人も、ボクと同じように、大剣型のコフィンを構えていた。

 

「オレが前に出るッス。 後ろは任せました」

「わかりました。 えっと……」

 

 そこで、ボクたちはまだ自己紹介してなかったことを思い出す。

 

「オレはアキラ。 アキラ・アグネス・アルギアデスッス」

 

 名乗ってから、イヌの獣人はニコっと笑う。

 なんていうか、いかにもわんこらしい笑顔だった。

 あと、その名前を聞くのは久しぶりみたいな、そんな気がしたんだ。

 

「ボクは、御園・ベラドンナ・アマリリスです。 アマリと呼んでください」

 

 なんとなく、フルネームで名乗っていた。

 たぶん、名前でバカにされないと思ったからかもしれない。

 

「これからよろしくッス。 だから、アマリもリラックスしてくださいッス」

「リラックス?」

「ていねいな話し方ばかりしてたら、すぐに疲れちゃうッスよ」

 

 アキラがコフィンを構え、飛びかかってきたバキエルを止めた。

 

「そういうことなら、楽にさせてもらうね」

 

 ボクはアジ・ダハーカを構えて、アキラに攻撃をガードされてバランスを崩したバキエルを狙い撃つ。

 

「あいつ、固い……」

 

 ちゃんとコアを狙ったはずなのに、装甲でレーザー弾がはじかれてしまった。

 

「ふつうのより強化されてるッスね。 アマリはコイツじゃなくてコンフェッサーを!」

「コンフェッサー?」

「バキエルの部下ッス!」

「り、了解!」

 

 ボクは狙いを変え、アキラに飛びかかるタイミングを見計らっていたコンフェッサーを撃つ。

 

「キュイー!」

 

 ボクの攻撃をよけた何体かのコンフェッサーが、すばやい動きで近づいてきた。

 

「数だけいたって――」

 

 杖のカタチをしたコフィンのアジ・ダハーカは、シューティングとアタックモードに変形できる普通のコフィンとは違って、変形しない。

 向きを変えて構えるだけで、モード切り替えができる。

 

「弱くちゃ意味ないでしょ!」

 

 ボクは、アタックモードに替えたアジ・ダハーカをフルスイングした。

 その一撃だけで、3匹のコンフェッサーを倒す。

 

「なかなかアグレッシブじゃないッスか!」

 

 バキエルを攻撃しながら、アキラは口笛を吹く。

 

「でも、数が多すぎる」

 

 切っても撃っても、数が減らない。

 ボクは起きたばかりでうまく動けなくて、前に出て戦うのはちょっとニガテだし、アキラにだって体力のゲンカイがあると思う。

 このままじゃ……

 

「ふたりとも離れて!」

 

 いきなり、通信機から女の人の声が聞こえた。

 

「ちょっと失礼!」

「うわっ!?」

 

 いきなり、アキラがボクを抱えてジャンプする。

 そのあと、窓ガラスを割りながら光の塊が飛んできて、バキエルたちを攻撃したんだ。

 

「いま、外から狙撃してきた?」 

「隣の建物にいる仲間がやったッス。 このままアジトまで逃げるッスよ」

 

 バキエルが動きを止めたスキに、ボクを抱えながらアキラは走り続けた。

 そして、建物を見て気づいたんだ。

 この建物は普通じゃないってことに。

 

「ねぇ、ここから外には出られないの」

「無理ッスね。 この研究所は、ナゾの結界で封印されているから、脱出は不可能ッス」

 

 脱出……不可能!?

 

「だって、建物の外から狙撃してたよね!?」

「あれは、となりの建物の中からこっちを狙撃したからッス。 窓ガラスやカベは、割れてもすぐにふさがるんで、壊して脱出することもできないんスよ」

 

 ――アンゲルスがうじゃうじゃといる、脱出不可能なナゾのダンジョン。

 ボクは、どうしてこんなところにいるんだろう?

 アキラに抱えられたまま、そんなことをずっと考えていた。

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