心が酒浸りたがってるんだ
愛はいつも嘘を吐く。
暗い灯りに照らされた狭い空間が、私にはよく似合う。
ガラスと氷の擦れる音を響かせながら、ひとりグラスを傾ける。
あの人には、激しい愛を惜しみなく与えたいと思える女性がいた。
あの人には、私よりも遥かに素敵なパートナーがいた。
グラスに入った液体の、鼻を掠める淡い香りが、余計に脳を痛め付ける。
バーのマスターは、いつも私の心を柔らかくしてくれた。
バーのマスターがいなかったら、今の私はいない。
住んでいるマンションの部屋で、ひとり寂しく、グラスに入ったオレンジジュースを飲んでいる。
浮気された挙げ句、私をふったバーのマスターを思いながら。
心が酒浸りたがってるんだ。
でも、酒は弱いから。