遠出をしよう(出題5問)
「ギルスさんもアイカもさすがです」
俺は問題の回答をした2人を誉めた。
さすがですお姉さま。さすがですアイカさま。
さすおね。さすアイ。
「同じブロックでも色々な名前があるのね」
おねーさんは不思議そうに言う。
「色々な組み立て方がありますからね。ブロックの命名もブロックの組み合わせ方も複数あって、正解はどれでもいいのがニーニーニーニーパズルの強みです」
答えが1つしかないとか悲しいじゃんかよ。
みんな違ってみんな良いのだよ。
などと、俺は小学校の頃に聞いて、成長してからはその逆が正解だったと思い知らされた標語を思い出した。
「ありがとう楽しかったわ」
おねーさんが言う。
パズルの話題が一段落ついたので、俺はおねーさんに気になることを1つ聞いてみることにした。
「クエストの納品のワイバーンの卵はどうするんですか? 食べるんですか?」
俺はワイバーンの卵をどうするか興味があった。
「食べるの? おいしそう」
アイカが食べるというワードに反応した。
「誰かが食べたという話は聞いたことはないわね。 ワイバーンの卵はね、国王軍のワイバーン飛行部隊で使うのよ。ワイバーン飛行部隊はワイバーンにウィザードやランサーが搭乗して、空を飛びながら戦う精鋭部隊なの」
食べるか聞いたからだろうか、少し微笑みながらおねーさんが説明してくれた。
ワイバーン飛行部隊というのはかっこよさそうだ。
大空を大勢の兵が飛んでいる様子を想像すると、ファンタジー感が溢れてワクワクする。
「大人になったワイバーンは捕まえても人間になつくことはほとんど無いわ。 だからワイバーン飛行部隊で使うには、卵を捕獲して赤ちゃんの状態から育てるのよ。そうすれ大人になったワイバーンは人を背中に乗せて飛ぶことができるわ」
おねーさんが説明してくれた。
卵を取る理由はずいぶん現実的だった。
「なるほど。 よし、やる気が出ました。 国王軍のためにワイバーンの卵を取ってきます」
俺はグッと拳に力をいれて前へ突き出した。
「頑張ってね。 無理はしちゃダメよ」
おねーさんが優しく見送ってくれた。
冒険者ギルドをあとにした。
「さて旅立ちの準備をしよう」
必要物資を買うわけだけど、見方によってはアイカとのデートだ。 楽しい楽しいアイカとの買い物だ。
「食料の準備と食事は任せて」
アイカが言う。
俺は食事はほとんど作れないので、アイカが頼もしく感じた。
必要なものは、食料、回復アイテム、野宿用のテントや寝袋、着替え、包丁や飯ごうなどの自炊セットなどだ。
木炭も買っておこう。
俺とアイカは店に入る。
店の商品は見ているだけで楽しい。 あっちの店を見たり、こっちの店を見たりと歩き回った。
そして必要なものを買いそろえたのだった。
重量を無視して収納できるインベントリが頼もしい。買ったものを次々に入れていく。
必要なものを全部買った時、俺たちは手ぶらだった。
さあ出発だ。
王都の門を抜けてフィールドに出た。
するとデジャブ感を感じた。
門から見える範囲でそれなりの数の初心者冒険者がゴブリンを倒していたが、気になるのはそのうちの一人だった。
ゴブリンを倒しているその人は、いつもその場所に居る。
思い出してみると、いつもいつも居る。居ないときが無い。
たまに俺が門の前を通りすぎるときに必ず見かけるということは、ほぼずっと居るのだろう。
性別は男で体格は普通。 初期装備である皮の鎧と短剣という格好をしてた。
その威力は初心者のものではない。 むしろもっと上級のモンスターでも一撃で倒せるのではないかと感じるほどの威力を見せていた。
この【アスペルガーオンライン】には様々な人がいる。
町の周りでひたすら雑魚狩りをし続ける人がいても、それがその人の楽しみ方であるならいいだろう。
彼の行動は遊びというよりも修行のように感じた。
先に進む。移動手段は徒歩だ。
森の中に入り、出会ったゴブリンやウルフを倒した。
バチンッ!
「痛い」
俺は歩いていると急に攻撃を受けた。
俺とアイカはすぐに戦闘体制に入る。
見ると目の前の木が鞭のようなツタを使って攻撃をしていた。
ホイップウッドという植物型のモンスターだった。木に擬態しているので近づくまで気づかなかった。
再びホイップウッドから攻撃が飛んできた。
鞭の射程は広く、後ろに飛んで射程外に出た。
「大丈夫? いま回復するね。 ホーリーヒーリング」
アイカが回復魔法を唱えてくれた。
俺の足場に魔方陣が出現して、光の柱が体を包む。HPが満タンになった。
再びホイップウッドが攻撃をする。
射程外なので攻撃は届かない。
その動作は遅く、攻撃が来るのが丸分かりだった。
速度が遅いのは植物型モンスターの特徴だろうか。
ホイップウッドが攻撃し終えた後を狙って攻撃を仕掛ける。
せっかくなので昨日装備した【ファイアの指輪】を試してみよう。
「ファイア」
俺が魔法を唱えると、手から小さな炎が飛び出した。
炎はホイップウッドに当たり、部分的に燃えて表面を焦がした。
威力がいまいちなのは俺の職業が物理攻撃を得意とするソルジャーなので魔力が低いからだろう。
「ここは私に任せて。ライトアロー」
アイカが魔法を唱えた。
アイカのやや後方の上空に光の矢が出現して、レーザーのような勢いで飛んでホイップウッドを貫通した。
木のような体に大穴が開いている。
アイカは魔力が高いので魔法攻撃の威力も高いのだ。
その分防御力は乏しいので、戦闘中はモンスターの攻撃がアイカに向かわないように守ってあげなければならない。
「ライトアロー・・・・・・連射」
ボソッとアイカが言った。
すると光の矢が無数に現れた。
スドドドドドドド!
機関銃のような弾幕でホイップウッドを撃ち抜き始めた。その全てが貫通していた。
「ちょ、オーバーキルだって。MPを節約しよう」
俺は慌てて止めに入る。
ホイップウッドのHPが0になった。
「ふうー、倒せたー」
アイカは仕事を終えてひと安心という様子で言った。
「倒してみれば何てことはないモンスターだったな」
俺もひと安心だ。
ホイップウッドは一匹一匹は弱いけど、不意打ちには注意する必要がありそうだ。
木はそこら中に生えているので隠れる場所はいくらでもある。
森を歩くだけで何度もバシバシ攻撃を食らっていてはたまらない。
その後は植物型モンスターにも注意しながら進むのだった。
森の道は坂道になり、山を登っているという実感が湧いてきた。
日が落ち始め、辺りは暗くなりつつあった。
森の中だと日の光が木に遮られるので余計に暗く感じた。
俺は周りに木がない場所を発見した。
ミステリーサークルのように円状にキレイに木や草が無くなっていた。
まるで何者かがこの場所で巨大魔法をぶっぱなした形跡であるかのようだ。
「今日はここで野宿しよう」
「うん」
俺の提案にアイカが応じた。
「俺はテント張りと周りのモンスターの警戒をするから、アイカは食事作りをしてくれるか?」
「分かった。 食事は自信があるから期待していいよ」
インベントリの中からテントや食材を取り出して作業をした。
俺はテントを組み立てる。
地面の小石などを取り除いて軽く整地をしたあと、支柱を組み立てて折り畳まれたテントを立体にしていった。 オーソドックスなドーム型テントだ。
フライシートを被せたあと、テントが風で飛んでしまわないようにテントから伸ばした何本かの紐をペグで地面に打ち込んで完成させた。
快適さの向上のためにテントの床に銀マットを敷いた。こうすると地面の冷たさが体に伝わりにくくなるのだ。
次に簡易的なカマドの製作をした。
地面を少し掘り下げて燃やすための空間を作り、地上部分は大きめの石で囲って壁を作った。
食材を切っていたアイカの、料理の準備が終わった。
複数の飯ごうの取手に横方向に棒を通してカマドの上に吊るした。
燃料は木炭だ。 水や着火は生活魔法があるから便利だ。
料理ができるまで暇だったので、俺はインベントリから取り出したニーニーニーニーパズルの初心者用問題集を開いたのだった。
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◆ニーニーニーニーパズル初心者用問題
全ての問題は、4つのブロックを使って正方形の形で組み立てることができます。
第1問
【123456456123456456】
第2問
【123423423123423423】
第3問
【123123233123123123】
第4問
【123452345123123123】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺は余った時間で問題を解くのだった。
40分ほど調理をして完成した。飯ごうで炊いたご飯とすき焼きだ。
「「いただきーす」」
「うまいうまい」
俺は熱いすき焼きをご飯にのっけて食べた。
アイカが作ってくれた料理は美味しかった。
きっと味のせいだけではなく、俺のために作ってくれたということが美味しさにプラスされているのだろう。
モシャモシャモシャ・・・・・・。
食べ終えると片付けをした。
水がいくらでも使える生活魔法って本当に便利だ。
生活魔法の水を使い、お互い少し離れてタオルで体を拭き洗いした。
テントの中で2人分の寝袋を広げて、あとは寝るだけとなった。
寝袋に入って横になった。アイカの顔が近い。
アイカと一緒のテントでおねんね。
これはアイカの吐く息を俺が吸っているということだな。
すーはーすーはー。
森林の空気は澄んでいて最高だ。
すーはーすーはー・・・・・・はっ!!
じーーーーーーーーー。
見るとアイカが半目でこちらを見ていた。
「まだ起きていたんだね」
俺は後ろめたい気持ちを抑えながら言った。
「123456666、123451115、123123233」
アイカは言った。
「アイカさん。桁数が多いんですけど」
「あとの1ブロックは自分で考えて」
アイカは言った。
どうやら変則的な問題らしい。
普通の問題では出題者が2ブロックの形を決めて、回答者が考えた2ブロックと合わせて正方形もしくは長方形を作る。
今回は出題者が3ブロックを指定してきたので、回答者は残る1ブロックを考える。
「123412344」
俺はしばらく考えて答えを出した。
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回答の例
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(■と◆と□が出題者のブロック。◇が回答者のブロック)
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「正解。ふわーぁ。おやすみ」
アイカは眠そうな顔をしながら反対側を向いて寝た。
「おやすみ」
俺も寝よう。
明日は登山だ。
ワイバーンの卵の捕獲、うまくいくといいなあ・・・・・・グー。
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◆初心者用問題の答えの例
(正解の形は、他にも多数あります)
第1問
【123456456123456456】
組み合わせの形
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(■と◆が出題者のブロック。□と◇が回答者のブロック)
第2問
【123423423123423423】
■■■■□□
■■■□□□
◆■■□□□
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第3問
【123123233123123123】
□□□◇◇◇
□□□◇◇◇
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第4問
【123456566123123123】
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