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朝のトイレで(出題2問)

 朝、旅館のベッドの上で俺は目覚めた。


 部屋を見渡すとアイカの姿が見えない。どこかに出掛けているのだろうか?


 まだ眠い体を起こし、ノソノソと歩いて廊下の隅にあるトイレに向かった。


 トイレのドアを開けるとアイカがいた。

 パジャマの短ズボンとパンツを足首までおろし、洋式便器に腰をかけておしっこをしていた。


 ジャーッという陶器に叩きつける水の音が聞こえる。

 うん。たぶん外で誰かが花壇に水やりでもしているのだろう。

 俺は視力が悪いから、何が起きているかよく分からないぞ。見えないったら見えない。



「・・・・・・ごめん」

 俺は謝った。


「123452344123434323!」

 顔を真っ赤にさせながらアイカは叫んだ。


 俺は急いでドアを閉めると、慌ただしく走って自分の部屋に戻ったのだった。



 部屋にて、どうやってアイカの機嫌を取り戻そうか悩みつつも、もう一つの問題を考えていた。

 アイカが言ったのはニーニーニーニーパズルの問題である。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 俺はメモ帳に問題を書いた。

 問題を整理しつつ解いてみよう。



 アイカが言った問題は【123452344123434323】



 2つに分解すると【123452344】と【123434323】になる。



 これをブロックに変換すると次の2つになる。


□□□■□

□■■■□

■■■■■


□□■□

□■■□

□□■■

■■■■


 この2つのブロックを使いつつ正方形もしくは長方形を作るのだ。


 どうやって求めるかというと、答えが出るまで試行錯誤をするのだ。




□□□□□□□

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□□□◆□■□

□◆◆◆■■□

◆◆◆◆◆■■

□□□■■■■


 2つのブロックの窪みを合わせてみたが、6×6を越えてしまった。

 4×9もできそうにない。




□◆◆◆◆□

□◆◆□□□

□□◆◆□□

□□◆□■□

□□■■■□

□■■■■■


 ブロックを真ん中において左右の空白をそれぞれ9ドットとする作戦。

 左の空白は9ドット分を確保できたが、真ん中の1ドットの空白が孤立してしまった。




□□◆◆◆◆

□□◆◆□□

□□□◆◆□

□□□◆■□

□□■■■□

□■■■■■


 それならばと、孤立した空白がなくなるように上のブロックをずらしてみたところ、左右の空白のバランスが崩れた。




◆□□□□□

◆□◆□□□

◆◆◆◆■□

◆◆■■■□

□■■■■■

□□□□□□


 ブロックを下と左に置いてみたが、上の空白は11ドットで下の空白は7ドット。うまくいかない。


 どうすりゃいいんじゃ?

 正方形を作ろうとするのは止めて、長方形で考えるべきなのだろうか?

 様々な試行錯誤を続ける。



□□□□□□

□□□◆◆□

□◆◆◆◆□

□□◆■◆□

□■■■◆□

■■■■■□


 下と右からアプローチしてみた。

 これだ! うまい組み合わせが見つかった。

 この組み方なら空白が繋がっているので融通が効く。

 連続した18ドットの空白を9ドットで区切って、そこに2つの9ドットのブロックを当てはめることができるのだ。




□□◇◇◇◇

□□□◆◆◇

□◆◆◆◆◇

□□◆■◆◇

□■■■◆◇

■■■■■◇


 4つのブロックの組み合わせが完成した。

 次は作った2つのブロックを数値に変換しよう。




□□□□□■

□□□□□■

□□□□□■

■■■■■■


□■□□□

■■□■□

■■■■■


 この二つのブロックを数値に変換。


【123456666】と【123451224】になった。


【123456666123451224】

 二つの数字をくっつけたものが答えだ。


(これは答えの一例だから、正解の答えは他にもあるよ)



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 俺が部屋で考えているとアイカが戻ってきた。

 アイカは部屋にいる俺の姿を見つけると、ビクッと体を震わせた。


「123456666123451224」

 俺は言った。


「正解。今回だけは許してあげる」

 アイカは顔をそむけながら言った。まだ恥ずかしそうだ。


 そうだ。プレゼント作戦をしよう。


「ちょっと待ってて」

 俺はインベントリから指輪を取り出した。

 昨日ユニークオーガを倒して手に入れた【ファイアの指輪】だ。


「これをアイカにあげる」

 俺は指輪をさし出した。


「くれるの?」

 アイカは驚きながら指輪を受け取った。


「ぜひ薬指にはめるといいよwww」


「・・・・・・」

 アイカは半目の表情になった。


 うん。距離感を間違えたね。

 えーほんとーうれしー、などと言いながら薬指にはめて、これじゃ結婚指輪じゃんかと言いながら指輪を外して床に叩きつけるぐらいのジョークができる仲になれるように頑張ろう。


「嬉しいけど、これはケンジ君が持っていて」

「魔力が高いアイカが持っていた方がいいと思う」

「私は攻撃魔法が使えるから大丈夫。物理攻撃が効かないモンスターもいるから、ケンジ君が持っていて」

「そういうことなら貰うよ。ありがとう」


 俺が幅広いモンスターに攻撃できるように配慮してくれたんだね。

 アイカは人想いで優しいなあ。


 俺たちは朝食をとると、旅館を出発した。

 荷物を収納できる【インベントリ】があるので、旅館に荷物は残していない。




 冒険者ギルドに到着した。

 まだ早い時間帯であるが、大勢の冒険者で賑わっている。

 人が多いのは、日帰りでクエストを受ける場合は早い時間から始めた方が都合がいいからだろう。


「あらおはよう。ケンジ君、アイカちゃん」

 ギルドのおねーさんが声をかけてくれた。


「おはようございます。ギルスさん」

 とりあえず挨拶。まずは挨拶。

 挨拶しかしないのは、俺が他の有効な人付き合いの仕方を知らないためだ。

 世間話とかできるといいんだけどね。


「もしかしてクエストを達成してきたのかな?」

「はい。ゴブリン討伐をしてきました」

「すごいじゃない」

「けっこう倒してきました」

「ケンジ君やるねえ」

「そんなことはないですよ」

「いえいえ、ちゃんとクエストを達成してきたんですもの。偉いわ」


 受付のおねーさんが誉めてくれるのはいつものことだ。

 誰でも倒せるゴブリン討伐だからどこまで本気で言っているのか分からないけど、言われると嬉しくなる。


「それとユニークオーガを倒してきました」

 俺はちょっと自慢そうに言う。


「それは!」

 おねーさんの目が見開いた。


「Cランクの冒険者が念入りに準備をしてやっと倒せるオーガを倒したの? しかもユニーク個体!? すごい。 オーガのクエストがあったので、クエストの達成扱いにしましょう」

 おねーさんが興奮している。


「ありがとうございます」

 俺は応えた。


 カウンターで討伐証明となるゴブリンの耳とオーガの耳、そしてウルフの耳をさし出した。

 報奨金が支払われた。

 俺とアイカはしばらくは働かなくていいぐらいの小金持ちになった。


 クエストの功績が認められ、俺とアイカはギルドランクDに昇格した。

 ランクCではないのは、オーガ討伐一回の功績ではポイントがCへの昇級に届かなかったからだ。



 さて次のクエストを受けようかな。

 俺はアイカの方を向く。


「次のクエストを受けようと思うけど、どうする?」

 俺はアイカに聞く。


「ケンジ君が受けるのだったら何でもいいよ」

 アイカは言う。


「じゃあせっかくDランクになったし、Dランクのクエストを受けてみようか? 遠出なんかもいいかもね」

 俺は強い敵を倒してちょっと自信がついていた。


「遠出! 行く。ケンジ君と一緒に遠くに行く」

 アイカが行きたそうに言った。


 俺はクエストの中から、それほど日にちがかからなそうなものを選んだ。

【ワイバーンの卵採取】


「これを受けたいのですが」

 俺は受付のおねーさんのところにクエストの紙を持っていった。


「ワイバーンね。ケンジ君たちが昨日行った森は山の麓なの。 森をさらに奥に進んで山を登ると、その山頂付近がワイバーンの生息地になっているわ。 ワイバーンは強いけど、討伐が目的ではないから手はあるはずよ。日帰りでは行けないと思うから、食料や夜の準備などしっかりと準備して出掛けてね」

 おねーさんが説明する。


 ギルド職員のおねーさんはモンスターの知識が豊富だ。説明をしているときのおねーさんは輝いて見える。


「ふむふむ」

 討伐ではなくて採取かあ。倒さなくてもいいけど、下手するとワイバーンの集団に襲われる可能性もあるだけに危険なクエストだ。


 俺はクエストを受注した。


「頑張ってね。応援してるわ。 それと困ったことがあれば何でも相談してね。できる限りのお手伝いをさせてもらうわ」

 ギルドのおねーさんは微笑みながら言った。 笑顔が眩しい。




「ねえケンジ君。ニーニーニーニーパズルしよう?」

 クエストの話が終わると、アイカが話しかけてきた。


「おう」

 俺は応じる。


 とそこにおねーさんが興味を示してきた。

「ニーニーニーニーパズル? 面白そうなことをしてるわね」

 おねーさんが言う。


「ええ、俺とアイカの二人の間で流行っているパズル遊びなんですよ。いつでもどこでも遊べるのが良いです」


「もしよければ私にも教えてくれないかしら?」

 ギルドのお姉さんは、珍しいものを知りたがる様子で言った。


 ニーニーニーニーパズルができる人が増えてくれるのはこの上ない喜びだ。

 ぜひ知ってもらいたい。


「すまんアイカ。あとでいいか?」

「うん。あとで」


 パズルをやりたいアイカには少しの間待ってもらって、俺はおねーさんにパズルのルール説明をした。

 おねーさんはギルドのクエスト受付の仕事があるので、時おり離れては仕事を済ませて戻ってきた。

 しばらく説明を続けておねーさんはルールを理解してくれた。



「ではニーニーニーニーパズルの基本問題を出します。【123123123123123123】」

 俺は言った。


「えーと・・・・・・」

 おねーさんは紙にメモを取りながら考えた。


 慣れるまでは数字をブロックに変換するのも大仕事だろう。


「あら、答えも同じ形でいいのね。答えは【123123123123123123】かしら」

 おねーさんは組み合わせの形を閃いたようだ。答えを言った。


「正解です。これでギルスさんはニーニーニーニーパズルを完全に理解しましたね」

 俺は嬉しかった。 これでおねーさんともパズルで遊べる。



「ケンジ君ー。パズルしよー」

 アイカから催促が来た。


 じゃあ変則的な問題を出そう。

 俺はメモ帳にブロックの形を書いた。


■■■■

■□□□

■■■■



「違う名前でも同じ形のブロックを示すことがあるよね。それはドットを組み立てる順番が違うからなんだ。このブロックの名前を10個答えよ」

 俺は問題を出した。


「ギルスさんも、もしよければどうぞ」

「ええ参加させてもらうわ」


「432111234」

 アイカが言う。

 いきなりすごい命名をぶっこんできた。開始座標が4から始まる命名だ。


「123411234」

 おねーさんがオーソドックスな命名をした。

 左下を座標1として左下から命名するのは基本だよね。


「789666789」

 アイカはブロックの途中から組み立てをするのと、なおかつ開始座標を大きな数字にした命名をしてきた。


「回転させてもいいよ」

 俺はヒントを出す。


「123111333」

 おねーさんは凹の形に回転させた状態のブロックの命名をした。


「123131313」「123113313」「321333111」「211113333」「123444321」「434421321」


 その後も2人は答えを出してくれた。

 基本に忠実なのはおねーさんで、ひねくれた命名は主にアイカだ。

 パズルは対戦なので、分かりにくい命名にするのも大事なのだ。

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