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ギルドに行こう(出題1問)

 俺らは王都ヘラクレスで冒険者ギルドに向けて歩いていた。


「ギルド♪ ギルド♪ ギルドに行こう」

 アイカの機嫌が良い。歩きながら手を大きく振っている。まるでピクニックに行くかのような雰囲気だ。


「アイカは何のクエストを受けたい?」

 俺は聞く。


「ケンジ君の受けるクエストなら何でもいいよ」

 アイカは返す。


 何でもいいと言われると困るが、何でもいいなら自分の好きな討伐系のクエストを受けようと思う。

 俺は物理戦闘職であるソルジャーなので前線に立って戦える。アイカは回復職であるヒーラーなので回復付きの戦闘職は無理ができる。


 RPGの機能であるマップ表示を見ながらギルドのある場所へ歩いていった。

 マップを見ているのは、俺は道を覚えるのが苦手だからだ。

 現実世界でも頻繁に行く場所以外は、ナビがなければ目的地に行くことができない。スマホのマップ機能は必需品だった。



 冒険者ギルドにやって来た。

 建物の中に入ると受付のおねーさんが笑顔で愛想を振り撒いてくれた。


「こんにちは。ケンジ君。それにアイカちゃん。二人は仲がいいね」

 受付嬢が話した。

 受付嬢は赤髪で体格は大きめ、スポーツでもしていそうな凛々しい顔をした女性だった。

 OLのようなタイトスカートで、胸の上部をやや強調して露出させたギルド指定制服を着ていた。


 アスペルガーオンラインに登場するNPCは全て中身入りである。つまり人間がキャラを操作している。だから言葉で話しかけることができる。

 一人のスタッフが何役もしてるそうだが、ここら辺の裏事情はプレイヤーは気にしなくてもいいだろう。


「こんにちは、ギルスさん」

 俺は挨拶をしたものの、何を話せばいいのだ?

 続きの言葉がわからず詰まってしまった。


「掲示板にあるクエストを見てね。やりたいクエストがあったら私のところまで持ってきてね」

 ギルスさんが言ってくれたので、ひとまずクエストを選ぶことにした。



「ふむふむ」

 俺はクエストの紙を読んだ。


 クエストには様々な種類がある。

 薬草採取やモンスターの討伐、貴重なアイテムの納入、迷子のペット探しなどだ。


 ダンジョンのボス討伐クエストもあるが、俺らのギルドランクでは受けられなさそうだ。

 まあ敵は強そうなので、たとえクエストを受けることができても勝てないだろう。


 ちなみにギルドランクはSからFまであり、初めてギルドでクエストを受けるときにFランクを授かる。

 クエストをこなしていけばどんどんランクが上昇していき、より高度で難易度が高いAやSといった高ランクのクエストを受けられるようになる。


 俺とアイカは何度か簡単なクエストをクリアしていて、現在はEランクだった。


 俺は弱いモンスターの討伐クエストの紙を持ってギルドのお姉さんの所に行った。


「このクエストをお願いします」

 受け付けにいるギルドのお姉さんにクエストの紙を渡す。


「ゴブリンの討伐ね。了解。ケンジ君ならもう少し難しいモンスターの討伐もできると思うけど、これでいいの?」


「まだ戦闘にあまり慣れていないので、これでいいです」

 俺は遠慮がちに言う。


「分かったわ。ゴブリンは王都の近くにある森に出現するわ。倒したら討伐の証拠となる部位がドロップするからそれをギルドに納めてね」

 ギルドのお姉さんがゴブリンの情報を教えてくれた。


 もっと強いモンスターを倒せと言われたらどうしようかと焦った。ゴブリン討伐のクエストを順調に受けられて安心した。


「では行ってきます」

 俺は自宅から出かける時のような感じで受付のお姉さんと別れた。


「頑張ってねー。アイカちゃんも頑張ってねー」

 ギルドのお姉さんはアイカに手を振った。


「うん。頑張る」

 アイカも応じて手を振ったのだった。


 俺たちはギルドから出て王都の近くにある森に向かうことにした。



 この王都は城塞都市であり、都市の周りを高い壁で覆っている。

 こうすれば町へモンスターが侵入するのを防ぐことができるのだ。

 王都と外を繋ぐ門は大きくて立派で、王都の繁栄を示しているかのようだった。



 門を通ってフィールドにやって来た。

 するとアイカが話しかけてきたのだった。


「ねえねえ。パズルしよう?」

 アイカは横を歩きながら上目使いで見てくる。

 アイカの方が身長が低いので自然と上目使いになった。



「パズルか。いいよ。アイカが出してくれるかな?」

 俺はアイカが出題してくれることを期待する。


「うん。じゃあいくよ~。【123452345221343432】」

 アイカが出題した。


 俺は必死になって手元のメモ帳に書き写す。


「ヒントをあげる。今回の答えは回転を除けば一種類しかないと思う。もしあったとしても数種類だけだと思う」

 アイカは言った。


 ヒントをくれるなんて、今回の問題は自信作らしい。


「うーん。うーん」

 かなり悩んだ。

 そして答えを出した。


「123451224123456336」

 俺はアイカに答えを伝えた。


「正解。えへへ~、ケンジ君は偉いよ~」

 わずか数秒の検算のあとにアイカは言ったのだった。


 誉められた。アイカに誉められると悪い気はしない。

 というか、頭の中で数秒で計算できるアイカはすごいね。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




アイカの出題


□■■■■

■■■■■


□■■□

□□■■

■■■■

□■□□


(■はドット。□は空白)




ケンジの回答


□■□□□

■■□■□

■■■■■


□□■□□□

□□■□□■

■■■■■■




4つのブロックを合わせた形


□□◆◆◇◇

□□□◆◆◇

□◆◆◆◆◇

□□◆◇◇◇

□■■■■◇

■■■■■◇


(これは回答例です。4つのブロックを組み合わせて正方形または長方形になるならば、どんな組み合わせでも正解です)




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 森の入り口にやって来た。

 辺りには薬草採取のクエストをする人が何人か見えた。

 この森は薬草が豊富で、強いモンスターも登場しないために駆け出し冒険者がクエストに馴れるには最適な場所だった。森に出現するモンスターはゴブリンとウルフだ。

 ただし森の奥にはボスといった強い敵も登場するらしい。


「じゃあゴブリンを探そう。準備はいい?」

 俺はアイカに聞いた。


「いつでもOK。傷ついてもたくさん回復するよ」

 アイカは返事をした。


 俺はアイカの前に立ち、剣を取りだして森の奥に歩いていった。


「ぎゃー」

 鳴き声と共に1匹のゴブリンが出現した。


 ゴブリンは身長は1mほどで人間の子供ぐらいの大きさ。皮膚は緑色で体毛や髪の毛はなかった。手には古びたナイフのような刃物を持ち、ボロボロの布を服として体にまとっていた。


 ゴブリンは叫びと共に襲ってきた。しかしその動きは遅かった。

 ゴブリンが突こうと出してきたナイフをこちらのナイフで弾き、隙ができた胴体を攻撃した。

 ゴブリンが倒れたので、倒れたゴブリン相手に連続攻撃をして相手のHPを0にした。


 倒すと煙のようなエフェクトと共にゴブリンが消えて、討伐証明となるゴブリンの耳をドロップした。

 いくらかの経験値が入ったようだ。パーティを組んでいるので経験値は俺とアイカで均等割りされる。


「まあゴブリンならこんなところかな」

 俺は余裕を見せた。


 ゴブリンはこのゲームで一番弱いモンスターである。これを倒せなければレベルが上げられない。


「大丈夫だった?」

 後ろの木の影で見ていたアイカが声をかけた。


「大丈夫大丈夫。これぐらいなら複数出てきても楽しょーだよ」

 さてガンガンレベル上げをしていきますか。


 俺らは森の奥に向かった。


 次に出会ったのはウルフ2体だった。

 ウルフは集団で行動するのが特徴だ。素早い動きで相手の周囲を走り回って翻弄しつつ、ターゲットになっていないウルフが死角から攻撃してくる戦法が得意だ。


 ウルフが走り回りつつ口を開けて襲ってきた。なので腕を噛ませてガードする。

 冒険者の格好の下にチェーンメイルを装備してあるので、ダメージはほとんどない。

 するともう一匹のウルフも飛び出してきて足首に噛みついてきた。こちらは無防備なのでダメージを負った。

 俺は落ち着いてナイフで腕に噛みついているウルフの腹を突き刺して倒した。

 次に足首に噛みついているウルフをナイフで切りつけた。ウルフはダメージを受けて足を離す。ウルフは距離をとろうとするがもう遅い。何度も攻撃してウルフのHPを0にした。


「ホーリーヒーリング」

 アイカが回復魔法で回復してくれた。2体と戦うとダメージを受けてしまうので、アイカの回復はありがたい。

 回復魔法がなければ回復アイテムの薬草を使いまくりで赤字だろう。



 ここでシステムの説明をしておく。

 アスペルガーオンラインのHPは二段階制になっている。

 一つは簡単に減って簡単に回復できるHP。

 敵からダメージを受けると減るし、薬草や回復魔法で瞬時に回復できる。

 もう一つは宿屋以外ではほとんど回復手段がない第二HP。こちらはHPが0になってさらにダメージを受けると減り始める。薬草や回復魔法ではほとんど回復しない。

 その他に疲労や空腹などでも減っていく。

 第二HPがあるために、何日も町に寄って休息しない冒険を続けていると総合HPの絶対値が減っていく。だから長旅は難しいのだ。

 第二HPを回復するには宿屋で休息しなければならない。



 何度かゴブリンやウルフといったモンスターと遭遇して倒した。


「たくさん倒したね。そろそろ王都に戻ろうか?」

 俺はアイカに聞く。


「いいよ」

 アイカは答えた。


 なんだか俺がひたすら動いてアイカは見ていただけになってしまった。まあ回復職に危険が及ばないのはいいことだ。


 俺らは王都に戻ろうと、……戻ろうとした!

 すぐ先に巨大なモンスターの輪郭が見える。


「これはゴブリンやウルフじゃない。この森のボス、オーガだ」


 オーガは体長は2.5mほどの大型で、オレンジ色の皮膚をしていた。ゴブリンを大型化して筋肉をムキムキにしたような見た目だ。

 そしてネームをよく見ると、嬉しいやら悲しいやら、ここで出会ってしまったことを後悔する表示があった。

【ユニークオーガ】

 これがオーガの名前だ。

 ユニークモンンスターは通常のモンスターの中から稀に出現する珍しいモンスターだ。他のモンスターが使えない特技や魔法を使う。通常のモンスターの何倍も強い。

 ボスでユニークな個体に出会えるのはよほど運がいいだろう。適正レベルだったらね。


 ボスのネームは赤かった。自分よりも強さが上であることを示してる。少し上であればオレンジだが、大きく上であれば赤く表示される。かなりヤバイ状態だった。


 逃げようとしたがアイカがいる。一緒に逃げられるだろうか?

 俺がどうしようか迷っていると、オーガがアイカに襲いかかった。


(勝てるかどうかは分からないけど、戦わずに負けるのは悲しいじゃないか)


 俺はオーガに強襲し、オーガの背中を切りつけた。

 オーガへのダメージが1と表示された。たった1だ。


 オーガはアイカへの突撃を中断して俺の方を向いた。

 俺がしたのはヘイト管理ってやつだ。モンスターの攻撃が接近職ではないパーティメンバーに向かわないようにするのだ。


 オーガが素早く腕を降って俺を殴った。

 ガードの姿勢をとったので倒れることはなかったが、防具の上から伝わる衝撃が体にダメージを与えた。

 俺のHPは一気に3割も削れた。

 オーガには小細工など必要ない絶対的な力の強さがあった。


「食らえ」

 俺がナイフで攻撃する。

 オーガの薄皮が切れてオーガに1のダメージが入った。


(ダメージが1ねえ。……なんてことだ。与えるダメージが1もあるなんて)


「アイカ!これなら行けるよ!全力でオーガを倒そう!」

 俺はアイカに向かって叫んだ。


「分かった。でもメンドイ。まあケンジが頑張るなら私も頑張る」

 アイカは本当にめんどそうだ。

 理由はすぐに分かる。

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