物語の導入部とパズルのルールブック
俺は自分の部屋でパソコンを使ってネットサーフィンをしていた。
スマホが鳴った。
スマホを見ると仲間からMMORPGのお誘いメールが来ていた。
今は暇しているので断る理由などない。
ネットサーフィンを終えてMMMORPGを起動する。
【アスペルガーオンライン】
これが今からやるMMORPGの名前だ。
政府が作ったゲームで、この世に生き辛さを感じているアスペルガーの人々が交流する目的で運営されている。
内容は剣と魔法の世界。クエストを受けてモンスターを倒すという、中世風のよくあるゲームだ。
利用者は個性的だけどね。
タイトル画面からユーザー名とパスワードを入力してログインした。
見慣れた姿の男のキャラクターを選択してゲームを開始した。
キャラ名は【ケンジ】だ。体型は痩せ型。髪は短髪の黒色。どこにでもいそうな地味な見た目をしている。顔は平べったくて、これはアスペルガーの外面的な特徴だ。
フィールドに降り立つとフレンドをチェック。
フレンド帳の【アイカ】の名前がログイン中になっていた。
囁き機能で他人には文字が見えないようにして、アイカにチャットを打つ。
「今ログインしたよ~」
「待ってた。今日も一緒に冒険しよう」
アイカから返信が来た。
「今どこにいる?」
早く合流したいので居場所を聞いた。
「王都のヘラクレス」
アイカから返答が来た。
現在地の森から近い場所にアイカはいるようだ。
俺は雑魚モンスターを倒しつつ、王都を目指した。
王都に到着した。
王都はこのゲーム最大の都市であり、あらゆる店が揃っている。
待ち合わせ場所として有名な王様の銅像前に行った。
そこにはアイカがいた。
身長は低くて髪の毛は青髪。ラインの整った顔つきに大きな目が特徴だ。丸い童顔で顔の位置が低くて幼く見える。胸は控えめで、身長のわりには太ももと尻が大きい。
アイカは回復職で、スカートが短い白色のドレスを着ていた。
「やあ、元気してた?」
俺はアイカに話しかけた。
「元気してた~」
アイカが言う。
「123423423112333233」
そして間を開けずにアイカが言った。
桁は言わずに、イチニーサンヨンと発音した。
アイカの口から放たれた18桁の数字。
これは【ニーニーニーニーパズル】だ。
俺は頭の中で考えようとしたが難しかった。
メモをしながら答えを出した。
「123423434123456233」
俺は答えた。
アイカは数秒検算して笑顔になった。
「当たりー」
アイカがハイタッチのポーズをする。
「「いえーい」」
俺はタイミングを合わせてアイカとハイタッチをした。
【ニーニーニーニーパズル】は、相手が言った2つのブロックに自分が考えた2つのブロックを組み合わせて、正方形もしくは長方形を作るゲームである。
あとで詳細なパズルの仕組みやルールを説明するが、アイカが言ったのは次の2つの形を表している。
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俺が言ったのは次の二つの形を表している。
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「次はそっちの番」
上目使いでアイカは言う。
「222222222222222222」
ニーニーニーニー・・・・・・というように、俺はノンタイムで2を18回言う。
「222222222222222222」
アイカは2を18回言った。
少し不満そうな顔なのは、俺が問題を考えるのを手抜きしたからだろう。
ではここで物語の時間を止めて【ニーニーニーニーパズル】の仕組みを説明しよう。
まずはブロックの数字と形を交互変換する方法からだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◆ブロックの命名規則の説明
ブロックは9つのドットで構成されている。
どのブロックでも9という個数は変わらない。
例を見てみよう。
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(■がドット。□は空白)
ドットが9つある。
ブロックを構成する■をドットと言う。
ドットは飛び地になっているのはNGで、一つ一つのドットは必ず他のドットに接触していなければならない。斜めにあるドットは接触しているとはみなされないので注意。
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例としてこの形の命名をしてみよう。
ブロックの命名を1ドットずつ順番に見ていく。
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【1】
一番左下のドットの配置から始める。
最初のドットを座標1と決めて配置する。
座標は左から数える。
■■
【12】
最初のドットの右にドットを配置する。
最初に配置した座標1のドットの右隣なので、座標は2である。
■■■
【123】
さらに右にドットを配置する。最初のドットの二つ右なので座標は+2で3となる。
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【1234】
さらに右にドットを配置する。
これで底部のドットを起き終わった。次は縦方向のドットを置いていく。
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【12341】
座標1の上に座標1で新たなドットを置いた。
同じ座標に複数のドットを置くと、上に積み重なる形で置かれる。
□はドットがないことを示す空白。
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【123413】
座標3にドットを配置した。
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【1234134】
座標4にドットを配置した。
以下繰り返すので省略する。
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【123413434】
座標3と4に複数回ドットを配置して完成した。
これがこのブロックの名前であり、構造を表す設計図である。
例としてもう一つ作ってみる。
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この形の名前を作る。
□■
【2】
底部から作りたいのだが、今回の形は上部を見ると底部より左にドットがあるので、最初の座標を2として作り始める。
最初に配置するドットは全てのドットの座標の基準となる存在であり、任意の座標から初めても構わない。
□は空白である。底部の座標1には何もないことを示している。
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【234】
横にドットを配置していく。これで底部は完成した。
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【2342】
座標2にドットを配置した。
同じ座標に配置すると上に積み重なる。
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【23421】
座標1にブロックを配置する。
底部から一段高い場所にある座標2のドットの左に配置された。
ドットは決めた座標の上から落とすと考えて、他のドットに隣接する場所で停止するルールがある。
なので縦方向で接触したドットは他のドットの上で止まるし、横方向に接触したドットは他のドットの隣で止まるのである。
ドットを配置する順番に気をつけないと、ドットが狙った場所よりも上で停止してしまう場合があるので注意する必要がある。
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【2342121】
座標2と1にドットを配置した。
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【23421214】
座標4にドットを配置した。
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【234212145】
座標5にドットを配置した。
ドットは決めた座標の上空から落下させると考えて、隣にドットがあると止まるルールがあるので、底部から一段高い場所で停止した。
これで完成。
以上でブロック命名規則の説明を終える。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◆次に【ニーニーニーニーパズル】のルールと進行を説明する。
相手は出題するときに18桁の数字を言う。
これは半分で切って2つの9桁の数字になる。
自分が返す18桁の数字も9桁の数字2つをくっつけたものである。
順番は決まっていないので1つ目と2つ目のブロックを逆にしてくっつけてもいい。
9桁の数字はブロックの形を表している。
【ニーニーニーニーパズル】は、相手が言った2つのブロックに自分が考えた2つのブロックを組み合わせて、正方形もしくは長方形を作るゲームである。
9ドットのブロックが4つあるので、ピッタリと合わせると36ドットの正方形もしくは長方形になる。
正方形もしくは長方形として使う形は次の4種類。
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【6×6=36】
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【4×9=36】
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【3×12=36】
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【2×18=36】
これらの形になるように、相手の考えた2つのブロックに自分の考えた2つのブロックを組み合わせる。
そして自分の考えたブロック2つを繋げた数字が回答となる。
では例として先程出題された問題を解いてみよう。
相手から次の出題がされた。
【123423423112333233】
出題する側には制約があり、答えの出ない形は使ってはならない。
間違えた出題をすると出題側の負けである。
18桁の数字を真ん中で区切って二つの数に分離する。
【123423423】と【112333233】
数字をブロックに変換すると、次の二つのブロックになる。
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与えられたブロックは90度ずつ回転させて使ってよい。
これを含めて、正方形もしくは長方形の形になるような新たな二つのブロックの形を考える。
色々と組み合わせを考えた結果、次の形が余りのない長方形の形としてできた。
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■と◆は相手の言った形。
□と◇は長方形になるように新たに作り出した形。
分かりやすいようにドットの種類をブロック別に変えている。
今回はこの形にしたが、答えがあっていれば違う形でもよい。あっていれば違う答えでも正解とされる。
答えが複数あるのがこのパズルの特徴である。
この4つのブロックで長方形が完成したので、次は自分が作り出したブロックを数値に変換する。
作り出したブロックは次の2つ。
命名しやすい形になるようにブロックを回転させてよい。
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これらのブロックをブロック命名規則にしたがって数字に変換する。
【123423434】 と 【123456233】になった。
変換が完了した。
二つの数字を合体させて18桁の数字にする。
【123423434123456233】
これが相手に返す答えとなる。
相手はこちらの答えがあっているかどうかを確かめる。
こちらの答えが間違っていたらこちらの負けになる。
答えがあっているのに相手が検算ミスしたら相手の負けになる。
パズルは対戦なので、どちらかが間違えるまで交互に出題する。
お互いが答えを間違えないほどプロである場合は、あらかじめ出題数と、使っていい秒数を決めておく。
そして全ての問題を答えるまでの秒数の少なさを競う。
競技ルール上は回答や出題を考えるときにメモ帳などの思考の助けになるものを使ってよい。
以上で【ニーニーニーニーパズル】のルールと進行の説明を終える。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「じゃあ次の問題はね~」
アイカが次の問題を出そうとしている。
「それよりもギルドに行ってクエストをやろうよ~」
俺は提案する。
ニーニーニーニーパズルは頭を使う。 頭を使うのは疲れるのだ。
「じゃあパズルはまた後でね」
アイカは言った。
俺たちは一緒に王都ヘラクレスにあるギルドに向かった。