I 軍靴と焼けた故郷
宇宙。一箇所の銀泉圏内。名はクァノリア。
俺は、クァノリア銀泉が三分割した頃から数えて86年目の現代にある作戦部隊への召集令状が渡された。
そんな銀泉を跨いだ戦争の作戦に加わらなければ、俺のような落ちこぼれは、短命で終わっていたはずだ。
銀泉系の自立明光天体『炎核』を発光源、発熱源にすることが可能であり、エネルギー供給はそこから分け与えられる。
当時の銀泉民は炎核を火の神と賛えて崇拝した。
崇拝行為だけならまだしも、火の神の儀式を騙った抗争事件拡散といった事態から開戦に及んだ86年間の戦争は止む事を知らなかったらしい。
ただ冷戦時代が現代なだけで、停戦だと勘違いした者の思い込みが激しかったのは、言うまでもない。
訳も判らないままひたすら上位監督である指揮官の命令で動けばそれで良い。飯やシーツの配給があるからか、従うのはそんな生活のためだからだ。
軍が俺を拾わなければ、飢え死になる時代。落ちこぼれの市民ならば軍兵の靴裏に踏まれるだけのひもじい生活で短命になる。
拾われて召集されて作戦で働く。その繰り返しが俺たち落ちこぼれのカラスたちだろう。
上等の階級章の士官なんて使い捨ての軍兵をカラスと呼び蔑むのが当然だと言う。
まだゴキブリ呼ばわりよりかはマシと思わなければならない。
「今回はいつもの作戦とは違うからな‼ お前たち、粗暴に働けば飯と寝床がないと思って勤しむがいい‼」
派手で粗悪な監督をする士官『ゾラノ』。こんな野郎でも上官なんだ。逆らえば即座殺処分。たまったものじゃない。
メタルブレイザーといった作戦執行科学兵器に搭乗しては常時危険な内容を駆使し打開もした。
怪我なんてものは子供が転んで擦り傷を創ったものに等しく、大病じゃない限りはへばる訳にはいかないもの。軍兵ならば、作戦中疾病に減らず口を叩いては切り捨てられて殺処分もの。俺は殺処分なんてものはゴメンだ。
だから、上官の言葉を吟味にし、作戦を完全執行する。ただそれだけだ。
作戦軍兵コードは2968号。軍兵属コードネームは『ライクス・アーフェー』。落ちこぼれ時代の本名はとうに捨てた。
俺の永遠い過去は、どの辺に流れたろうか?
そう、ここはどこかのみすぼらしい都会だ。村のようで、どこかしら花の都らしい華やかさはあった。
そんな時だ。軍靴の足音が風情のある世界を一変させていった。
「女、子供以外は作戦隊員に強制就任。女、子供は陸上サブブロックに収容。直ちにかかれっ‼」
指揮官の怒号が幼い俺の鼓膜を破れさせるようで畏怖した。
名は『リオム・レスドル』。そんな本名なんて、当時の幼い時代では特に生活するための保険適用の記号でしかなかった。
サブブロックなんて保険の整理番号で賄いがつくだけの単なる理不尽なシステム。幼い俺にはそんな事は理解できないでいた。
保険適用でも育ち盛りの子供にたらふく食える飯なんて保証もなく栄養失調の子供はたくさん存在した。
サブブロックなんて地獄の空間だ。閉鎖空間恐怖症の人のパニック障害が発作したりと色んな症状の民だらけで俺は吐気がしてきた。そんな時もあったのだ。
避難世帯数はざっと言っても400乃至500ほど。これでは難関な生活能力では、持ってほんの3日でしかない。
俺はこの500程の中で家族と逸れた。こんな大数の中の海を大人二人を探すのは諦めた。
なら、どうするか?
こんな俺は知恵を振り絞って困難のさ中を潜る。もがいて掻き分けてひたすら皆と平等に生きる事を止めなかった。
だが、同い年と思わす児童たちは飢え死にした。
避難当初はあんなに食べていた児童の群れだのに、飢え死に至ったのは、食糧飢饉だ。大量摂取の成れの果てだ。
「小僧、何故だ? 小僧だけは子供たちと違い生きてるではないか?」
「俺の方が知りたいです。賢くパン屑をポケットの中に保存しといて空腹時に摂取しました。今こうしているのがその証拠です」
「だから飢え死にしなかったと……大した能力の小僧よの。お主、名は?」
「リオム・レスドル、9歳です」
「レスドル? はて、聞いた姓名だ。確か……西ゲート収容ハッチ辺りで女兄弟の死亡事故があった。なんでも子供の名を叫び涸れた時に呼吸器疾患で倒れて致死したとな」
「母さんたち、死んだ⁉ 見つかるまでこんな密閉世界で叫んで呼吸器を壊すだなんて……逸れたから」
「悔いても仕方あるまい。今は一人で自分のやれる精一杯を見つけるのだ」
その当時、俺を介抱した大人は『ニログ』という高齢者だ。生存していれば俺の祖父と同い年くらいの老体だ。
「ニログさん、俺……やれる事見つからない」
「人に聞くな。周りをよく見て判断しろ。さすれば自ずと何か導いてくれるはずさ」
「判りました」
俺はステーションジョイントユニットを見つけて、ユニットエントランスの坑口を見つけ出した。
そこのスライド式操作パレットを見つけ出したは良いのだが坑口壁の開放技術力がないもので諦めかけた。
「パレットの中の配線コードが離れてる。繋げるジョイントラインがロック時間でなかなか配列の位置が判らないんだ」
「うむ、その内容が濃いとは。中に秘めたる意志、火の神のお導きした結果だ。堂々と胸を張るがいい。リオムの小僧、お主はこの事態を打破できよう」
ニログ老人は余りに喋り過ぎた。密閉世界で呼吸し過ぎたからだ。息継ぎが散乱して落ち着かなくなった。
「あっ、このカラーのチューブを延ばす代わりの導線さえあればな」
針金とも言えようキーホルダー的な装飾品の連結部を、俺は亡骸から入手後にパレットの所に戻ってみた。
「よし、導線代用品で繋げた、後はパネル表示を下部に刻まれた4桁数字を入力させるか」
俺は躊躇いもなく、パネルの液晶画面に数字を埋め込んだ。すると、まぁ……ハッチ坑口壁面が展開しだした。3時間以上もぶつけ本番で作業した甲斐は確かにあった。
「リオムの小僧、よく堪えたな」
「これが外の空気だ。やっと、俺は外の世界へ舞い戻れたぞ」
それは余りに焼け寂れた殺風景な環境に一変されてあった現実だった。
俺は確信した。これが大人の戦闘してきたふざけたリアルなんだと。
「誰もいない。いや、戦争で負けたんだ。こんな事って……」
俺は吐き気はしなかった。
もう、何もかもが殺風景の世界としか目に収まらなかったからだ。政府が戦争を好きこのんだわけではない。
人類史にはこんな比類ない状況を繰り返してきたんだと改めて実感させられた。