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蚊帳の中のふたり

 私が松永まつなが先輩と最初に出会ったのは、大学に入学したての頃のこと、校門付近で様々なサークルの上級生たちが勧誘のためチラシ配りをしていたある朝。

 地味系の私は、きらめきを放つ先輩たちの目には留まらなかったようで、奇跡的に私の手の中には1枚のチラシも無かった。


『お願いします』


 そんな中、私の胸の辺りに、毛筆で書いたような文字が躍るモノクロのチラシを寄越す人がいた。

 チラシに通せんぼされて、思わず立ち止まり見入ってしまった。


 【まちなみ観察同好会】? 何をしてる同好会なんだろ?


 ただ受け取って、通り過ぎるだけのはずだった。

 ところが、その時おそらくよそ見をして歩いていただろう誰かにドンと後ろからぶつかられて、私は前によろけてしまったのだ。


『あっ……』


 目の前にいた人に腕をしっかり支えられ、私は転ばずに済んだけど、大量のモノクロのチラシが足元に散乱してしまっていた。


『す、すみません!!』

『きみは悪くないんだから、謝る必要はないよ』


 落ち着いたというか、あまり抑揚のない低い声。

 そこで、初めて腕を支えてくれた人を見た。

 その男の人は、私が見上げるくらいの身長でひょろっとしてて、切れ長の目が印象的だった。

 涼しげというよりは、少し怖いような目つきだったけど、大切なチラシを落としても私を支えてくれたんだから優しい人なのだと思った。


『なにやってんの? マツ……』


 どこからともなく現れた、爽やかな明るい声の別の男の人が、すぐにチラシを拾い始めた。

 切れ長の目のこの人は、【マツ】っていう名前なんだ。


『スギ……。手が滑った。悪い』

『しかたねーな』


 こっちの明るく懐っこい感じの人は、【スギ】さん。

 ぶつかってきた人はどこかへ消えてしまっていて、下に散らばっているチラシを3人で拾った。


『きみ、ありがとね。チラシを拾ってくれて。今日4時からサークル棟の203でうちの同好会の説明会をするから、来てくれると嬉しいな』


 声をかけてくれたのは【スギ】と呼ばれた爽やか系の杉本すぎもと先輩だったけど、私に強い印象を残したのは目に力のある【マツ】こと松永まつなが先輩のほうだった。

 その日の4時、誘われたのでただなんとなく説明会に行ってみたら、案の定見学者が私を含めて3名しか来ていなくて……。


『来てくれてありがとう~。きみお名前は?』

平河友陽ひらかわゆうひです』

『【ゆうひ】ちゃんて言うんだ? 可愛い名前だね。同好会の存続がかかってて。来てくれたってことは少しは興味を持ってくれたんだよね。お願いします。同情でもいいから、うちに入ってくれない?』


 たたみかけるように杉本先輩にお願いされて、逃げられず捕まってしまった。

 松永先輩は、杉本先輩に背中を叩かれ促される形でようやく一言ひとこと口にしただけだった。


『お願いします』

『……』


 心がこもってないようなお願いだった。

 他に興味のあるサークルも無かったし、活動内容を聞いたらまあまあ面白そうだったので入会して、今のこの状況に至る。



♢♢♢♢♢♢



 あの時から2年、最初はただの不愛想な先輩だったのに。


―じゃあ、婚約者なら?


―私と結婚するつもりなの?

―そうだけど


 ここまで松永先輩の方と関係が進展するとは、全く思ってなかった。

 松永先輩の何発もの爆弾発言に吹っ飛ばされた私の頭の中は、相当ぐちゃぐちゃだったけど、蚤の市は根性ですべて見て回った。


 そして夕方、夕飯の材料を一緒に買うと、私たちは恋人のように手を繋ぎながら先輩のアパートに向かっていて……。

 これだけならリア充的な夢のような状況だけど、急展開すぎて気持ちが追い付かないし、暑いから手汗が……半端ない。

 先輩のアパートに近づくにつれ、変な緊張も……。


 松永先輩のアパートは、外階段はさびだらけ、外壁もひび割れが見えていて、本当に人がまだ住んでるの? と疑問に思いたくなるくらいぼろい。

 アパートの外壁の半分を、他を寄せ付けないほどうっそうと茂った蔦が覆ってるのも相まって、まるで廃墟のよう。


 これはこれで味わいがあって、私は嫌いじゃないけど、修繕じゃなくて取り壊しかあ。

 残念だなあ。良い味出してるのに。


 1階の真ん中のドアの前に来ると、松永先輩がこの鍵いつの時代のもの? というようなおもちゃみたいな小さな鍵をポケットから取り出す。

 私が先輩の誕生日にプレゼントした招き猫のキーホルダーを付けてくれている。

 先輩が鍵を丸いドアノブに挿して回すとガチャリと音がして、すんなり過ぎるほど直ぐにドアが開いた。


 中に入って、最初に目についたのは部屋を囲う深緑の網だった。


「何これ? 前に来たときは無かったよね」

「初めて見るか? これは、【蚊帳かや】。網戸に穴開いててさ、窓を開けると蚊が入ってくるから」


 松永先輩が眉を上げて、なぜか得意げだ。


「【蚊帳】? ……へえ、今どきこれを使っている若者わかものがいようとは」

「【若者】って……なんだよ。実は昭和生まれなのか? 平河」

「平成だってば!」


 蚊帳。何か古い本で見て知ってはいたけど、実際見るのは初めてだった。

 懐かしいような微かなカビっぽい匂いがした。

 それと何か別の匂いも……。


「珍しいだろ。ばあちゃんがもう使わないっていうから貰って来た」

「そうなんだ」

「ばあちゃんたちってさ、なんでも大切にとっておくよな。もらいものの包装紙とか紙袋とか缶とかリボンとかさ……」

「うんうん、ジャムとかコーヒーの瓶とかも、必要以上に貯め込んでるよね」

「いつか何かに使えるかもってな」

「ふふふ……」


 何でもないことを、ふたりで笑いあう。


 松永先輩は、蚊帳をよけて部屋の奥へ行くと出入り窓をガタガタさせながら開けた。


「暑くて悪いな。エアコンの調子がいまいちでさ、扇風機頼み。今、冷たい麦茶を出すから座ってて」

「……うん」

「さあ、平河。遠慮なく中へ」


 松永先輩は戻ってくると、蚊帳の網の一部を持ち上げて優雅に手招きする。


「うん……」

「部屋の中にテントを張ってるみたいで、わくわくしないか?」

「する!」


 松永先輩の目が新しいおもちゃを見つけた子どもみたいにキラキラしてる。

 たまにそんな目をする先輩を見ると嬉しくなるのは……やっぱり好きってことかな。


 先輩は私を蚊帳の中に閉じ込めると、扇風機のスイッチを入れた。

 風が流れるだけで、少し涼しくなった。

 そして、先輩は部屋の隅にあった四角いお菓子の缶のようなものの蓋をあけた。


 それって、もしかして、この匂いの正体?

 蚊取り線香!?


「先輩、それ……」

「ばあちゃんから分けて貰ってきた」


 先輩がそれにライターで火を点けると、煙があがって独特の匂いが広がり始めた。

 お仏壇用のお線香と似てるけど、蚊取り線香の方は少し植物の香りが混じっているような匂い。


 昔だったら、よくある夏の匂いなんだよね。


「これでよしと。少し煙いけど、我慢な」

「うん」


 松永先輩の部屋は玄関入ってすぐ左に小さい流し台があって、右手にお風呂とトイレ、奥は6畳の畳敷き。

 部屋の隅に布団がいつも重ねて置いてあって、それから教科書と専門書みたいなのも積まれている。

 この部屋に入るのはもう何回目だろう。

 こんなに緊張するのは、初めて来たとき以来かもしれない。


 今までとは違う一歩進んだお付き合いになるんだよね。

 こんなにドキドキして同居とか、できるのかな?

 先輩が私と結婚するつもりって、本当に本気なの?


 

 松永先輩は、買ってきた夕飯用の食材を流し台の横にある冷蔵庫に入れてから、茶色の液体の入った透明なポットを取り出した。


 私は本題に入る前に、その背中に向かって、まずはさっき聞きたかったことを口にした。


「ねえ、先輩。待ち合わせ場所に来た時、私のこと、なんで名前で呼んだの?」


 少し間があって、


「そうだっけ?」と、松永先輩が背を向けたまま言う。

「とぼけないでよ。ちゃんと聞こえたよ。先輩が私のこと名字じゃなくて【友陽】って名前で呼んだの」

「……覚えてないや」

「そんなあ~」


 はぐらかすなんて、ずるい!


 松永先輩がお盆にガラスのコップを2つと麦茶ポットを載せて蚊帳の方へ来たので、私は蚊帳の裾を持ち上げた。


「ありがとう」


 と、身体を曲げて、そこから入ってくる。

 

「名前で呼んでくれたこと覚えてないの?……」


 そんなもんなのかな?


「どっちでもいいだろ。婚約者になる予定だし」


 そ、そうだけど……? ち、違う、そういうことじゃなくて~。


「だから、それ、おかしくない? 私、まだ結婚を申し込まれてもいないし返事もしてないんですけど。それ以前に先輩から、す、好きとか言われてない」

「これだけふたりで一緒にいて、わかんないものか」

「……わからないよ」

「鈍いな」

「私は鈍くないよ。じゃあ、松永先輩は私の気持ち、わかるの?」

「……わかってるつもり。俺のことすごい好きだろ?」


 そ、その照れくさそうな顔、なんなのです? 卑怯もの~。自信過剰!

 

「う、うぬぼれすぎじゃない? やっぱり、わわわ、わかってない」

「そうかな?」


 か、顔が熱いし、頭が沸騰してくる。


「まあ、落ち着けよ。お互い水分を補給しよう」


 松永先輩はポットから2つのコップに麦茶をたっぷり注ぐと、片方を私の方へ寄越し、もう片方のお茶を一気に飲んで、ふうっと息を吐きだした。

 私もごくごくといただいた。

 身体に染み渡る、美味しさ。


 夏はやっぱり麦茶がいいよね。


 そして、だんだん外が薄暗くなって来ていた。

 蚊帳の中という閉鎖的な空間で、小さいテーブルをはさんで先輩とふたりきり。

 胡坐をかいて座る先輩に対して、私は……正座しちゃってる。

 先輩はリラックスしているみたい。

 というか、先輩はいつもと変りないのに、私は……妙に意識して。


 前にこの部屋に来たときは、何をしたり話したりしてたんだっけ? ふたりで。


「平河? なんで急にそんなにガチガチなんだ? だから、俺は……」

「……先輩?」

「俺といる時は素の平河でいて欲しかったから、俺に慣れるまで色々遠慮してた」


 遠慮? 頭の中の思考がぐるぐると渦を巻く。

 まるでそこで煙っている蚊取り線香のように。


 何か遠慮してたの?

 ここは後輩の私からきちんと言うべきなの?

 私、松永先輩のこと……。


「好きだ」「……好き」


 かぶったー! 大事なとこで。

 え? 先輩、私に好きって言った? 好きって~~~!?


 心臓が爆発寸前。


「平河、パニくるなよ。」

「よく聞き取れなかった。もう一回言って!」

「パニくるなよ」

「その言葉じゃなーい!」

「ははは、好きだ。おまえのそういうとこ」

「よ、余計な尾ひれが付いた~」

「何回も言わせるな。照れくさいだろ」

「他に私のどこが好き?」


 私の問いかけに、松永先輩が視線を少しずらしながら……。


「同好会活動には誰よりも早く来て、会うときはいつも俺のこと待っててくれたよな。雨でも雪でも台風でも。平河が必ず待っていてくれるっていう安心感。熱があるのに待ってたときは、バカかと思ったけど……」


 先輩……最後のバカは余計です。


「平河への信頼は大きいけどな、それ以上に色々心配。同好会に入りたての頃は気が強そうなふりして、びくついてたのバレバレで、明らかに男慣れしてないみたいに見えた。……実をいうと、スギが平河のこと可愛いって言ってたんだ」

「え? 杉本先輩が? 私を?」


 か、可愛いだなんて。照れちゃうよ。


 人当たりの良い、ソフトな印象の杉本先輩の顔が思い浮かんだ。

 明るくて場を盛り上げるのがうまくて、いつも女の子に囲まれてる印象がある。

 お散歩がメインの、どちらかと言えば地味なこの同好会に女の子が数人入っているのは、みんな杉本先輩目当てだったと思う。


「あいつと俺、同じ高校だったんだ。地元に彼女がいるの知ってた。だから、あいつが平河に必要以上に近付かないように俺が盾になろうと思った。おまえ、最初は俺に対してビクついて警戒してたはずなのに、ちょっと慣れて来たと思ったら、もう俺を疑いもしない。誤算だった。すんなり部屋についてくるし、俺を自分の部屋にも簡単に入れるし、ふたりきりになっても平然として、俺を男じゃなく先輩という枠にはめて安心してるし。俺が杉本みたいな肉食系なら、とっくに食われてたぞ」

「うそ? あの杉本先輩が肉食って……。え? せ、先輩? それはどういう意味?」


 頭の中が混乱してるのに、む、胸のドキドキが止まらないんですけど。


「今更、何慌ててんだ? 俺を意識し始めたのだってここ最近だろう? さんざん部屋ここに来て、無防備に昼寝までして、どれだけ俺を悩ませたと思ってる?」


 悩ませたって。か、身体が火照る。あ、汗が。


「何があっても俺を待っていてくれる。そんな平河だから、結婚したいと思った。俺の気持ちはわかってて欲しい。結婚は平河の卒業後でもいいけど、同居のことは早めに決めなきゃないから、平河が良ければすぐにでもご両親にお願いに行く」


 私の両親にお願いって……本当に本気なんだ。

 胸にジンと来た。


「はい」


 私がコクリと頷くと、松永先輩が瞬きをして表情を緩ませた。

 と思ったら突然、松永先輩が獲物に目を付けた獣のように私ににじり寄って、手を伸ばしてきた。


 な、なになになに?


「口に青のりついてるぞ」

「え、嘘、やだ、早く言ってよ」


 ここで青のりって……。

 口元を手で隠そうとすると、先輩に手首を掴まれた。


「取ってやる」


 松永先輩の長い指が、私の唇を優しく撫でたり摘まんだり引っ張ったりした。


 青のりなかなか取れないのかな?

 見つめられて、う、動けない。なんか恥ずかしいし。


「ぼーっとした目で見るなよ」

「え?」


 見ちゃダメなの?


 私は目を閉じた。


「と、閉じるな~」


 どっち~!?


 慌てて目を開けると、松永先輩がそっぽを向いていた。


「は~、嘘だよ。……俺が、触りたかっただけ。青のりはついてない。これでも平河をビビらせないように、控えめにしてんだから、察しろ」

「は?」


「いや、やっぱりキスくらいしておくか?」

「な……くらいって。投げやりな~」


 って、え? キ、キス?


「こっちも緊張してるんだから、黙っとけ」


 緊張? 松永先輩が?


 先輩が大きい手で私の頬を優しく包んで、顔を寄せてくる。

 も、も、も、もしかして、本当にキスされるの~? とうとうファーストキスだよ!!


 私は、期待に胸を膨らませて、もう一度目を閉じた。


 少し待って触れてきた熱は……。


 はい? ほっぺ!? 唇じゃないの?


 少し残念な気持ちになりながら目を開けると、先輩は15センチほど私から距離を取っていた。

 

「他のアパートの住人はもうみんな引き払ってて、いるの俺だけ。だから気兼ねなく声や音を出せる。今日は少し遅くなってもいいだろ? あと送ってくから、ゆっくりしていけよ。友陽ゆうひ


 な、名前でまた呼んでくれた!!

 キュンてなったー。胸キュンて、本当にあるんだ。

 どうしよう、顔が自然とニヤけちゃう~。


「……夕飯食ったら、……しような」

「!?」


 え~~!!!? 何? しよう……って。なんで松永先輩そんな熱っぽい目線を送ってくるの?

 もしかして、あの儀式のこと? 恋人たちが当然のようにするあの……。



「庭で花火」


 え……。は、花火?


 よく見たら先輩の視線は私ではなくて、私の後方にあった花火セットに注がれていた。


 あ、花火ね、花火。


 そうだよね、この松永先輩に限ってね。うん、やだ、おかしな想像してしまった。私、ばか。


「花火、良い……ね」



 ズズっ、バサバサバサ!!!

 変な音~!?

 な、なに? なにごとォ~~!?

 突然目の前が緑!?


「ぎゃあああ~!!!!」


「……ハハハ」


 び、びっくりした~。怖かった。

 なのに、松永先輩は珍しく朗らかな笑い声。


 なんと、吊っていた蚊帳が、急に私たちの頭上に落ちてきたのだ。

 ふたりで網の罠にかかったみたいな状況だった。

 先輩は、全く動じてない。


「大丈夫か、平河。壁もボロいからな」

「せ、先輩~」


 蚊帳が落ちて来るなんて、あり得ない!

 ホラーだよ、ホラー!!


 ハッと気が付くと、私は半べそで松永先輩に抱きついていた。


「ビビりだからな、友陽は……。大丈夫だから」


 松永先輩は蚊帳を持ち上げて私の頭を撫でながらそう言うと、今度は私の唇にそっと優しいキスをくれた。


 こ、このタイミングで~!?

 せ、せんぱい……。

 私のファーストキス。一瞬過ぎてよくわかんなかった。

 先輩、もう一回ゆっくり丁寧にお願いします! と言いたい~。


 先輩を見上げて、もう一度目を瞑って、無言で催促をしてみた。


「だから、青のりは付いてないって」


 そうじゃなくて~~!!


「さ、蚊帳を吊り直したら、夕飯作るぞ」


 そうだ! そういえば、今夜の夕飯メニューは先輩の得意な豚キムチチャーハンだった。

 これ、美味しいんだよなあ。

 私が作るとべちゃべちゃになるんだけど、先輩が作るとなぜかパラっとして美味しくて、先輩の家でご飯を食べる時はいつも作ってもらってる。


 だめだ、これ食べた後だと歯磨きしないとキスできない。


 上を見上げたまま目を瞑って考えてたら、首が疲れてクラクラしてきた。

 そしたら後頭部が支えられた……。


「しぶといやつだな。控えめにしたのに」


 え?


 二回目のキスは……××××。


 私はこの時、松永先輩と結婚しても良いかなと思ってしまった。


 どんだけチョロいんだ、私―。



♢♢♢♢♢♢



 そして、お盆。


 松永先輩は結婚前提で同棲したいと、堂々と私の両親の前で挨拶してくれた。

 うちの両親はというと、最初は慌てふためいたものの、先輩の落ち着き払った誠実そうな態度と、内定をもらっているという某有名メーカーの内定決定通知書を見ると、見事に手のひらを返した。

 社会貢献になるとか、善は急げとか訳の分からないことを言い出す始末で。

 晩婚化や少子高齢化が進む中、両親はひとりっこの私の将来の心配がひとまずなくなって安心したのか、両手をあげて歓迎し始めた。


 お父さん、お母さん、こんなあっさり承諾していいんですか?

 まあ、とにかく、なんだろ。

 これで良いのかは、まだわからない。

 でも、なんだかとても幸せな気持ち。


 私は横に正座しているスーツ姿の松永先輩を見て、カッコイイと思ってしまってるんだから。


銘尾 友朗さま、この度は素敵な企画に参加させていただきまして心より感謝いたします。

最後までお読み下さった皆さま、本当にどうもありがとうございました。


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