ケーキ
その幸せは紛い物で、辛く苦しい思いを塗り固めて甘い恋にしていただけだった。
頭を撫でてくれた手は暖かかった。
降り注ぐようなキスは優しかった。
すごく甘くて少しずつ食べ進めていった。
貴方のくれた何気ない言葉の端々に、私をズタズタに切り裂くものがあって、それに気づかないようにしてた。
苦い部分に辿り着かないように。
甘い部分を残すように。
貴方は私の存在は愛してくれたけど、私自身を愛してくれていなかった。
別れを切り出したのは私のはずなのに…
食べ残した部分は苦くてまだ、食べられそうにない。
その後、ぐちゃぐちゃに崩して捨てた。