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ノックスの十戒をすべて破ろう


 その部屋は完全なる密室だった。ドアも窓も鍵がかけられ、地下室へと続く抜け穴さえも外からは開けられないように施錠されていた。外部からの侵入は、誰であろうと完全に不可能であった。


 そんな完全な密室で、その惨劇は起こった。その部屋の主たる比嘉 イマル氏が、謎の毒物により、スライム状になって発見された。


 比嘉氏が発見された状況は、日課として家の壁面を這って屋根まで登ろうとしていた同じ家の住人である(コウ)氏が、窓からスライムと化した比嘉氏を目撃し、それから黄氏は他の住人にそれを伝え、住人たちがドアを壊して踏み込み発見に至った。


 この家には比嘉氏を除いて、4人の住人がいる。


 第1発見者であり、中国人雑技団の一員として働き、超人的な身体能力を持つ(コウ) 太阳(タイラン)氏。


 医者であり、毒物に関する知識を持ち、一般的な毒物であれば入手が可能である黒井(くろい) 夜空(よぞら)氏。


 建築家であり、建物の構造等に詳しい赤井(あかい) (ゆう)氏。


 ミステリー作家であり、様々なトリックに関する知識を有している青井(あおい) (そら)氏。


 比嘉氏の死体(と思われるスライム)が発見されて程なくして警察は捜査に乗り出したが、現代の科学では比嘉氏をスライムへと変化させた毒物に関しては一切の情報を得ることはできず、比嘉氏の死亡推定時刻すら、最後に目撃された前日の18時から、黄氏が死体を目撃した9時までにしか絞り込めなかった。


 また、捜査を難航させたのが、比嘉氏がいた部屋が密室であったことだ。比嘉氏の死体が発見された部屋は10畳ほどの広さがあり、ドア、窓、地下室へと繋がる抜け穴まで、完全に施錠されていた。窓と抜け穴には外側から開ける鍵は存在せず、たった1つしかないドアの鍵は部屋の中で発見された。


 ここまでで推理に必要な手がかりは出揃った。ここからはあなたの出番だ。物語の世界に入って、見事事件を解決してほしい。


 4人の住人と警察が比嘉氏の死体が発見された部屋にて見分を行っているところに、突如として、あなたが現れた。あなたは、唖然とした表情であなたを見る人々に告げる。


「私がこの事件を解決してみせましょう。犯人は、この中にいます」


 4人の住人と警察たちは、あなたに様々な質問をするが、あなたはそれに答えずに、推理を始める。


「今回の事件で注目するべきポイントは2つ。


1. 部屋は完全な密室であったこと


2. 犯行に使われた毒物が未知のものであったこと


 ここで、容疑者である皆さん4人の特徴を確認しましょう。


 黄さん。あなたは、超人的な身体能力を持っていますね。現に今も、天井にぶら下がって私の話を聞いておられる。


 黒井さん。あなたは一般的な毒物であれば、それを入手することができますね。ただ、今回の犯行に使われた毒物は一般的なものではありませんが。


 赤井さん。あなたは建物の構造に詳しい。現にこの建物には抜け穴がありますし、あなたならそれをうまく利用することも可能でしょう。ただ、今回の犯行では、部屋が完全な密室であったことは確認されています。


 青井さん。この中で、奇想天外なトリックを考えつくのはあなただけでしょう。私たちが思いもつかない方法で、犯行を可能にしたのかもしれない。


 さて、ここまで整理すれば、皆さんにも犯人がわかることと思います」


 そこであなたは手元でサイコロを振る。1なら黄氏、2なら黒井氏、3なら赤井氏、4なら青井氏、5なら自殺、そして、


 その出目は6。それはすなわち。


「犯人は、私です」


 6なら自分。


 あなたは犯人が自分であるという結論ありきに推理を始める。


「この部屋は完全に密室でした。しかし、私であれば、現実世界からこの世界のいかなる場所にも現れることができます。つまり、密室であることはまったくもって問題になりません。


 さらに、この世界よりもはるかに技術の進歩した現実世界では、この世界で未知である毒物も入手可能です。


 つまり、私が犯人であれば、2つの問題はクリアされます。


 元々、私は多重人格です。おそらく、犯人は私の別人格。これが、真相です。たぶん」


 こうして、犯人を暴いたあなたは、晴れて物語世界の警察に逮捕されることとなった。めでたしめでたし。


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