始まりの学園
エタったらごめんなさい。
季節は春。桜舞い散る出会いの春。ここ、帝國学園の校門の前に一人の男が仁王立ちしていた。
「……俺は絶対、この学校の頂点に上り詰めてやる」
男はそう宣言して、帝國学園に足を踏み入れた。
さて、俺がこの春から通う帝國学園は全国から集められたあらゆる分野の一位の高校生しか入学を許されていない日本屈指の高校だ。俺はこの高校でトップに君臨しいずれは日本を牛耳るほどの大物になってやるんだ。
ちなみに俺は「記憶力」で一位を取った。自分が覚えていることならどんなことでも検索できる。ネットタイプと辞書タイプがあって、ネットタイプなら調べたいことをピンポイントで検索でき、辞書タイプなら調べたいことに関連したことも同時に調べられる。まぁ瞬間記憶能力とかカメラアイとかと一緒にしてくれていい。
「あ、えっと佐山くんだよね? 僕、隣の席の風魔桜です。よろしくね」
っと、ぼーとしてたら話しかけられた。俺はそっと隣の席を見やる。
可愛い。それはもう美少女だ。髪は男の子の様に短髪で小さくて愛くるしい目、小ぶりな体で胸は小さい。そして、何故か男用の制服を着ている。……え?
「あ、一応先に言っとくけど僕男の子だからね」
風魔は俺の舐めまわすような視線に気づいたのかそう言い添えた。
「あ、あぁすまん。俺は佐山佑樹……ってもう知ってるか。俺の方こそこれからよろしく」
「うん! あ、これからは僕のこと桜って呼んでよ。その方が親近感あるしさ」
「お、おう」
なんか、近いな。男って分かっててもドキドキしてしまう。桜、桜か。
「……フフッ」
「ん? どうしたの?」
やばい、口に出ちまってたか。
「や、なんでもない」
「そう?」
なんとか誤魔化せたか? それにしても桜が小首を傾げてるのはこうなんと言うか。
「あ、おはよう影山くん」
桜はさっきの俺との話は何もなかったかのように今度は斜め前の奴、つまり俺の前の席の奴に声を掛けた。コミュ力高ぇな。
「あ、お、おはよう」
桜が声を掛けた影山とかいう奴は小太りで眼鏡を掛けた暗い奴だった。額に汗をかいてきて、確実にキョドッている。しかし、こいつも何かしらの一位なわけだ取り敢えず声だけでも掛けておくか。
「よう、俺は佐山佑樹だ。よろしくな」
「あ、影山晴太です。よろしく」
影山は首だけこちらに向けて応える。
「なぁ影山はなんの一位なんだ?」
「あ、いや。……一応、ハッキングです」
影山は心底自信なく言う。けれど、ハッキングって
「それ、めっちゃかっこいいじゃねぇか!!」
「………………え?」
「そうだね。かっこいいよ影山くん!」
桜も応える。って俺めっちゃテンション高いじゃねぇか。鎮まれ俺のテンション。
ふと、影山の方を見ると若干口角が上がっており桜の方をちら見している。こいつ、自分がかっこいいって言われたと勘違いしてるんじゃないだろうな? あと
「影山、お前に一つ忠告しておいてやる。……桜は男だ」
「…………はい?」
言われ、影山は桜を見た。桜は照れ臭そうに影山に言う。
「うん。そうだよ。男の子……だよ」
それから数秒、影山は桜を見つめ動かなくなった。そして一瞬、ニヤリと笑った。
おい、その笑みはなんだ、おい!
桜も影山の笑みを見逃さなかったのか困ったように笑う。すると、一人の女の子がトコトコと歩いてきて桜の後ろに座った。桜はこの雰囲気から逃れようとしたのかその子に話しかける。
「おはよう、松岡さん。僕は風魔桜、よろしくね」
女の子は、桜に話しかけられたことにびっくりしてその後体を縮こませながら言った。
「あうぅ、ま、松岡楓です。よろしくお願いします」
松岡さんはとても可愛い女の子で、全体的に小さくて小動物のようだ。何かに怯えているみたいに震えている。
「俺は佐山佑樹。よろしくね」
影山と同じ理由プラス可愛いので俺も一応挨拶する。
「お、お願いします」
俺は影山の肩を軽く叩く。
「ほら、お前も挨拶しろよ」
「え、いや、僕なんかがおこがましいというか」
「お前、それでいいのか?可愛い女の子と仲良くなれるチャンスだぜ」
それを聞いた影山は松岡さんに声をかける。それだけ聞くと可愛い女の子と仲良くなる為に声を掛けたみたいだな。
「あ、その。影山晴太です……」
「……松岡楓です」
うむ、二人とも性質が同じだから面白いな。と、そう思ったところで教室の扉が勢いよく開いた。
「はい、席に着いてください」
どうやら担任のようだ。扉付近には副担任もいる。
よし、ではそろそろ始めるとするか。佐山佑樹の学園生活を。