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ケマケマ  作者: ラズ
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第一話 ふしぎな卵

戦争中のシャダル国に謎の女がやってきます。

 むかし、とても仲の悪い二つの国があった。

 二つの国はいつのころからか戦争ばかりするようになっていた。


 ある日そのいっぽうの国であるシャダル国の王宮に、ひとりの女が


「ぜひとも王さまにお目どおり願いたく」


 とやってきた。この女は王宮にいる年老いた学者の知り合いだったので、その学者の口ききによって王さまに会うことができた。

 女は黒い服をまとい、首からは長い数珠をたくさんたらして、その目はまるで緑の炎のようなかがやきを宿していた。


 たくさんの兵士が左右ずらりとならんだ王の間で、女はひざまずき、そしてわきに抱えていた木箱をかかげていった。


「ケマケマの卵にございます」

「ふん、聞きなれぬ言葉だな」


 女の前の玉座に座った王さまは、つまらなそうにいった。


「ケマケマは、この世界が作られた初めのころに生まれた生きものです。世界をささえる柱とも、またヒラニア・ガルバとも呼ばれているものでございます」


「われが今もとめているものは、戦にうち勝つための強き武器と、強き兵士たちだ。心をなぐさめる手段ならあまるほどある。――この女を向こうへ」


「偉大なる王よ。わたしの首をはねる前に、いま少しの時間を……」


 女は木箱を石だたみの上へ置いた。そうしてフタのつまみをもちあげると、四方の箱の面がたおれ、中身が見えるようになった。


 灰色の、一個の玉……。


 王は片手でやっとつかめるほどの大きさの真珠をもっているが、それよりも少し大きく、表面はよくみがかれた石のにぶい輝きをはなっている。


「ケマケマの卵は、外の光によって割れるのです」


 女がいうと、同時に玉の表面が小さくはじけた。床の上でゆらゆらとゆれながら、卵のなかから外へ出ようとする何かが、少しずつ姿をあらわしていく。

 やがて表面からのぞいた顔を見たとき、王や兵士たちは思わず目を見ひらいた。


 くああ――くああ――……


 うぶ声が静まり返った王の間にひびく。

 それはまったく人間の赤ん坊の泣き声に似ていたが、姿は世にも奇怪なかたちをしていた。


 顔はサカナそっくりだが、肉のようなピンク色をしていて、しかもサカナとちがってまぶたがあるらしく、その目はまだ開かれていない。ちいさくうごめいている四つの足はこれまた人のものによく似ているが、しかしそれらは体をおおっているカメの甲羅のようなものの穴からのびていた。


 身を乗り出し、この初めて目にする生き物に釘づけとなった王に、女がいった。


「この長き戦を終わらせる者でございます」

お読みいただきありがとうございます。

おそらく全4話になります。

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