愛を知らない少年
これは一応短編にしていますが、シリーズで長編っぽくしていくつもりです。
皆さん、初めまして。
私は夢の案内人です。これから皆様には様々な『夢物語』を見ていただきます。
『夢』・・・ここではいわゆる別次元の実話・・・のような物でしょうか?
まぁ皆様がいる世界とは違う私達の世界の話ですね。
今回はある愛されなかった少年の話です。
舞台はそうですねぇ・・・呪いがあった時代ですから1000年ほど前でしょうか?
皆さん知っていますか?実は私達の次元には本当に呪いは存在していたんですよ。
まぁその世界を信じるかどうかは貴方自身です。
ん?
そんな事より私の名前を教えろですって?
う~ん・・・・では『叶夢』とでも名乗っておきましょうか。
なんでそんなに言い方がハッキリしないのかって?
もう何百年も生きたせいで名前なんて覚えてないからですよ。
それはさておき・・・・
『愛を知らない少年』お楽しみください。
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ある国には、言い伝えがありました。
その言い伝えとは『鎖のアザを持ったものは呪われており、周りの者を不幸にする』という物でした。
国民はその言い伝えを信じており、普通のアザを持っているだけでその人は除け者にされました。
ある国のある村には、ある一人の少年がいました。
その少年に名前は無く、誰からも愛されたことも愛したこともありませんでした。
何故ならその少年の白く細い首には、まるで首を吊る縄のようにグルリと一周赤黒い鎖のアザがあったからです。
そのため少年は生まれて直ぐ母親にこの村に捨てられ、皆から『忌み物』として扱われてきたのでした。
嫌われ者の少年には感情というものが無かったので、本来ならば美しいはずの大きな青色の瞳にはいつも暗い闇だけが映っていました。
ある時少年が外に獣を狩りに出かけると、一匹の兎がぐったりと倒れていました。少年はその兎を、家に持って帰って食べようと掴みました。
すると兎はなんと悲鳴を上げたのです。
「いやぁ!食べないで!!」
少年が驚いて手を引っ込めると兎は必死に命乞いを始めました。
その兎の瞳はほかの兎とは違う淡い金色で少し変わっているようです。
「お願いします!どうか食べるのだけはやめてください!!私は元々天の者なのです。ですから私を食べても美味しくないですよ!ですからどうか・・・」
「天の・・・・人なの?」
「はいそうです!なので私を食べると腹を壊しますよ!!」
少年は必死に頭を下げる兎を見ながら思い出しました。
いつか『天にいる神様は何でも一つだけ願い事を叶えてくれる』と大人たちが言っていたことを。
少年は兎に向かって言いました。
「じゃあ・・・願い事を聞いてくれたらいいよ。」
「本当ですか!?で、できる限りのことはさせて頂きますよ!」
「なら・・・・友達になって。」
今まで友達のいなかった少年はそう願いました。
あとからどんなに自分がつらい思いをするかも知らずに・・・
兎はブンブン首を振りながら言いました。
「もちろんです!しかし私が天に帰れる力が付くまでですよ?」
「・・・・・うん。」
こうして奇妙な友人関係が始まりました。
兎と少年はたくさんの事を話しました。
兎の名前は『リアン』といい、ある日誤って足を踏み外し天からおちたところを少年に見つかったのでした。
力が付けば本来の姿に戻って天に戻れると兎は言いました。
少年はリアンが早く天に帰れるように、毎日食べ物を用意してあげました。
その一方で誰かと笑いあったり、食事をするのは初めてだった少年は、リアンに不思議な感情を抱いていました。
しかし、誰かに必要とされたことも、必要としたのもこれが初めてだったのでその感情に少年自身が気付くことはありませんでした。
暫くたち、別れの日がやってきました。
その日リアンの体は淡く光り始め、白い髪と金の瞳に大きな翼を持った美しい姿へと姿を変えました。
リアンは言いました。
「私は天に帰ります。もうあなたと居ることは出来ません。」
その言葉を聞いた少年は、何故かは分かりませんが、心のどこかにぽっかりと何かを失った感覚を味わいました。
少年はその感情が何なのかは分かりません。しかし『リアンに帰ってほしくない』ということだけは分かりました。
少年はリアンに必死に頼みました。
「お願い、まだ待って!何故かは分からないけど、リアンがいなくなったら僕・・・・・凄く寂しくなると思うんだ!!僕には君しかいないんだ!!」
しかしリアンは寂しそうに笑いました。
「ごめんなさい・・・・私が天に帰らなければ、この世はうまく回らなくなってしまいます・・・・さようなら、私はあなたが大好きでした。」
そう言ってリアンは翼を広げ天へと羽ばたいていきました。
リアンが行った後、少年はあっという間の出来事にただただ呆然としていました。
すると突然少年の青い瞳から透明な液体が出てきました。
それは突然出てきたかと思うとドンドン出てきて止まらなくなりました。
次第に自然と口からはしゃっくりが出始めうまく息を吸えません。
そう少年は気付いたのです。
自分はリアンが好きだった。ずっと誰かが自分を愛してくれることを求めていた・・・・・と。
しかし少年は気付くのが遅すぎました。
もう自分を好いてくれたリアンはいません。
少年はまた一人になったのです。
全てが手遅れだったと知った少年は、腰にあったナイフで自分の首を傷つけました。血が地面に落ち、赤い染みを作ります。
しかし少年は手を止めることなく、泣きながらナイフで自分の首を傷付け続けました。
血はボタボタと流れ続け、足元に大きな水溜りほどの血が流れ落ちたとき、少年は静かに地面に崩れ落ちて死にました。
そして少年の首には、ナイフで傷だらけになった鎖のアザだけが残っていました。
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ふふっ
皆さん楽しめましたか?
それでは次の物語でまたお会いしましょう。
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