第2話 属性Sの人には逆らってはいけません
やってきました。後宮(仮)です。
豪華絢爛といって過言ではない建物ですよ?雰囲気に呑まれて萎縮しているのは決して私がヘタレなわけではないのです。
そもそも、後宮(仮)といっても、后妃選定期間である1年間だけの後宮であり、普段は離宮として使われているんですよ。
皇族の方々が利用するのだから、豪華であたりまえなんです。
馬車に揺られながら、窓から豪華な建物をビビリながら眺めていたら、どうやら入り口に到着したようです。
外側からゆっくりと馬車の扉が開けられた。
私を拉致してきた(腹黒い)騎士が手を差し出してきたので、小さく息を吐き出しながらゆっくりと腰を上げ、その手に自分の手を置いた。
ゆっくりと馬車から降りたった私の前には、これまた豪華な扉と、いかにもな感じの執事っぽいおじ様と、いかにもな感じのメイドっぽい女性が立っていた。
「ご到着をお待ちしておりました、シン・カズサ様。このたび、后妃選定期間中の1年間この後宮(仮)の管理を任されましたコウ・アズマと申します。こちらはメイド達を束ねるメイ・アリサです。1年間よろしくお願い致します。」
2人は優雅にお辞儀すると、流れるような動作でそのまま1歩下がり、後宮(仮)のドアを両側から開けてくれた。
「さあ、どうぞ。お部屋にご案内いたします。」
***
遠ッ!部屋遠ッ!・・・・2人に先導され、広く長い廊下を歩きましたとも!
階段も沢山上りましたよ!?なにコレ?嫌がらせ?
「シン・カズサ様、こちらが紅玉の間で御座います。これから1年間、こちらの部屋でお過ごしいただきます。部屋は3部屋あります。寝室以外の部屋はお好きにお使い下さい。浴室は寝室から行ける様になっております。また、御用の際には各部屋に設置されている伝心鏡でお呼び下さればすぐに伺います。メイドを呼ぶ場合もそちらでお願いします。」
紅玉の間に入ると、落ち着いた感じのいい雰囲気の部屋だった。
窓から外を覗けば、どうやら後宮(仮)の角部屋で、逃げるのに便利そう・・・
「決して逃げ出そうとか考えないで下さいね(黒笑)?あぁ、そうそう遅ればせながら、私はこのたび后妃候補のシン・カズサ様付きの護衛として1年間共に過ごさせて頂きますアズ・サカキと申します。1年間よろしくお願い致します。あぁ、私の事はサカキとお呼び下さい。」
・・・こえぇぇぇぇぇ!ニヤッ(黒笑)て笑った。絶対にこの人の属性はSだ!(怖)・・・ん!?
「え?今何か、1年よろしくとか聞こえた気が・・・」
「はい。(1度で覚えろ)シン・カズサ様付きの護衛ですから、1年間ずっと一緒です。」
「・・・・・・・・・・・・・エエエエエエェェェェェェェェェェッ!Σ(゜Д゜ノ)ノ」
このぎんいろの騎士もとい、サカキは、私を見ながらニッコニッコしている。
あぁぁぁぁぁぁ、こんなのが常に一緒とかありえん。いやありえてしまっているから、ありえんというわけではないが・・・。
私が1人で脳内パニックに陥っている間に、執事っぽいおじ様コウ・アズマさんが、部屋からいなくなっていた。どうやら後は、メイドの・・・・アッ!そうそうメイ・アリサさんに任せて自分の仕事に戻ったようだ。メイドのメイ・アリサさんはメイドらしく、壁際に佇んで冷めた眼でこちらを見ていた。
(怖!)なんか、このひともサカキと同じ属性の匂いが・・・!
1人で悶えていたら、なんだか恥ずかしくなってきた。
「ええっと、メイ・アリサさん?これからお世話になります。よろしくお願いします。」
ペコリと頭を下げると、メイ・アリサさんがニッコリと微笑んでくれた。
「こちらこそよろしくお願い致します。メイド頭のメイ・アリサと申します。アリサとお呼び下さい。これから、この後宮(仮)に住む為のルールをお話させて頂きます。」
・・・え?ルール?何それ?
「の、前にお茶と軽食の準備をさせて頂きますね。立ちっぱなしでお疲れでしょう?お座り下さい。」
そういって、アリサが部屋にある伝心鏡でお茶の手配をしてくれました。
割と気さくな感じな人で、嬉しかった。
それに、学園からそのまま拉致されてきたから、おやつも食べてなかったのですよ。
お気遣いに感謝です。おやつは大事ですよ?脳に糖分を入れておかないと集中も持続しませんからね。
お茶が早く来ないかなとウキウキしながら待っていた自分に後悔したのは、2時間後でした(泣)