表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

彼女の一途すぎる愛にKANPAI

作者: a-m

短編2作目もコメディーです


世界観が変わりまして今回は現代小説です


暇つぶしの程度のかるーい小説です。


さらさらーっとお読み下さいませ

愛しの彼は言いました。



「無理です。本当に無理です。ごめんなさい。勘弁してください。」



全く迷う事無く瞬時に答えたのです。



3年間ですよ?


3年間ひたすら愛し続けた彼に0.1秒すら迷ってもらえず


拒否された(わたくし)はどうすれば良いのでしょう。



「・・・理由をお聞きしてもよろしいでしょうか」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ついに・・ついに・・・この日を迎えた ようやくだ ようやく言えるっっ



高校入学当初から本当に・・ほんとーに毎日のように彼女は俺を尾行し続けた


もう 本当に恐ろしいまでの執着心を発揮してくれた


軽くトラウマなことも多々あった


今思い出しても恐ろしい




家まで尾行され電柱の陰から「おやすみなさい」と幽霊のように囁かれた


休日に友人と遊んでいて気づけば背後に彼女を発見した


カラオケで歌っていればドアの窓から彼女がのぞいていた


図書室で授業をサボっていたら、本棚の陰からシャッター音が聞こえた


何かと思えば、盗撮されていた


盗撮被害を言い並べればきりがない


それが今、この瞬間 卒業式の当日まで3年間続いたのだ


俺の高校生活=ストーカー被害にあった暦


こんな公式が簡単に頭に浮かぶ






そんな彼女の名前は佐々木 うた


さらさらの栗色の長髪に、ぱっちり二重の眼に、白い肌


もし・・彼女がほんの少しでも普通だったら


もし・・彼女がほんの少しでも常識というものを持っていたら


きっと彼女は全校の男子共からモテモテのウハウハだっただろう



何が悲しくて神様は彼女にこんな性格を与えたのかっっ




そしてそんな彼女に何故か入学式の日に標的にされてしまった俺はといえば


平凡も平凡 素晴らしくどこまでも平凡な一般男子であり


本来ならば彼女のような"美少女"に好かれるような男ではない・・


嬉しくもないのにたってしまった"美少女から愛されちゃう平凡男子"フラグ


もしだ もし


もし、彼女が世間一般にいう普通の"美少女"であったならば


俺はきっと最高の高校生活を送っていたはずである



あぁ 何故ですか 神様


お願いだから天は二物を与えて下さい


彼女限定でいいですから与えて下さい




ということで、俺の目の前で無表情のまま涙を流す彼女に話を戻そう



説明した通り俺は3年間彼女からストーカーされ続けた



だけれど、ちゃんと話しかけられたのは今が初めてなのである


それを考えると余計怖くなるが・・・





家の前の電柱の陰から「おやすみなさい」と囁かれた事は多々あった


体育の後、猛ダッシュで俺の横を通り過ぎた彼女に


「お疲れさまでしたあああ」と叫び声をかけられた事も多々あった



朝教室に行くと、机の引き出しの中に白い小さな紙に、


これまた小さな赤い文字で「おはようございます」と書いておいてあった事も多々あった



って、また考えだすと怖いし、しかも多くありすぎて言えないけれど


まぁ、そういう接触は毎日のようにあったのに、



ちゃんと面と向かって声をかけられたのは今が初めてなのである








無事卒業式が終わり、俺はこれで彼女と縁が切れる事に正直安堵していた。


そんな俺の安堵を凄まじい破壊力で粉々に壊した彼女・・・





教室で友人らと「卒業しても友達だ」的な王道トークをしていた時


俺と向き合っていた友達がいきなりフリーズし、顔中に恐怖を浮かべた



その瞬間俺は気づいたね


背後に奴がいるっっっ・・って。



怖々振り向いたら、俺の本当にすぐ背後に張り付くように佇んでいた彼女を発見し


俺は恐ろしすぎて悲鳴すらあげられなかった。


そして初めて、彼女をすぐ側で見た俺は、やっぱり普通なら美少女だ


・・・・なんて場違いな事を思ったり・・



俺とがっちり目を合わせた彼女は無言で俺に手紙を渡してきた。


恐怖に震えながらも受け取った手紙には・・



"今すぐ裏庭に来て下さい。"



いや・・・口で言って下さいよ・・・




無言で俺を見続ける彼女に俺も無言で了承の意を示すように頷いた。



すると、彼女は静かに教室を立ち去った。




そしてその場に残された俺と友人2名は無言で視線を合わせたさ


俺は確信している・・あの時、皆の心は一つだった



"漸く待ちに待った瞬間が訪れるのだ”ってね・・。





そう、漸く俺に告白というものをしてくれるのだ



今迄あんだけストーカーしていたくせに、


一度も彼女から"好き"というワードを示してくれた事はなかった



だからこそ、俺も彼女に断りの言葉を入れる事が出来ず今に至ったのだ。



ようやく よーうーやーくー 言えますっっ








そして予想通り彼女は俺に告白した。



「ずっと好きでした。そしてこれからも永遠に好きです。私と恋人同士の関係になって下さい。」



可愛い声でした。



えぇ、可愛いです



確かに顔も声も可愛いです



今迄の行動がなければ俺は迷わずテンションアップアップで即okしていたことでしょう



でも俺は言いました ようやく言えました



言ってやりました



「無理です。本当に無理です。ごめんなさい。勘弁してください。」



その言葉を10秒ほどかかって理解した彼女の表情は無でした。


もう完璧な無表情でした。


だけれど、瞳だけは違いました。


ひと雫の涙が彼女の美しい頬に流れました。



って・・・ぎゃあああああああっっっ



泣いている!!!泣いているぞっっっ!



俺は人生で初めて女子を泣かせてしまったっっ



色男でもないのにっっ


平凡なほど平凡なノーマル男なのにっっ



あわあわ、と慌てる俺に彼女は囁くように言ったんだ



理由を説明しろと・・




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




(わたくし)の言葉に彼は慌てるように言いました。



「りっ理由っ?!そんなっっそんなの今迄のキミの行動が理由だよっ」


早口言葉ではないのですから、もっとゆっくり仰ってくれればいいのに


愛しい愛しい彼は矢継ぎ早に言い連ねました。




「だって考えてみてよっ?!キミ、俺のこと毎日、本当に毎日観察?


っていうかストーカーしてたよね?!怖すぎるでしょうっっ?怖いよっ!」




え?ストーカーですか?


私の記憶ではそのような犯罪を犯した覚えはないのですが・・・


まぁ、愛しい彼のお言葉ですから、黙認致しましょう。



そして、私の告白を断る理由をまだまだ彼は言い連ねます。



「学校がある日だけじゃなく、休日まで気づけば背後にいるなんて


一体なんのドッキリ?!っていうか心霊現象?!」




私は幽霊ではありませんので、心霊現象という言葉は間違っているように思えるのですが


愛しい愛しい彼のお言葉ですから、黙認致しましょう。




そして私は約10分程黙認し続けました。



息も切れ切れな彼。



漸く理由を言い終えたようです。



ですが、いくら聞いても納得ができません。



愛する彼のお言葉ですから黙認は致しますが、私の認識とはかけ離れているのです。



3年間一途に愛し続けた私の想いは、


こんな納得のできない理由ばかり並べられても消滅はしないのです。



「良治様・・・愛しい貴方のお言葉ですから納得はできなくても反論は致しません。



このようなすれ違いの理由は、私の努力不足が原因だと思われます。



良治様、これからはもっと良治様に私のこの激しい愛が伝わりますよう、一層の努力をいたします。



大学生活では良治様の御武運を見守るだけではなく、


毎日いかなる時も良治様のすぐお側で良治様をお支え致しますわ。」



私のこの熱い想いが伝わったのでしょうか。


良治様の素晴らしく平均的なお顔が固まりました。


2分待っても固まったままの良治様。



あぁ、これは一途に3年間想い続けた私に対する良治様ならではのお礼なのでしょうか?



こんなお側でお写真をとれる機会を下さるなんて!







カラスが山に帰る頃


いくら待てども戻ってこない良治を心配した彼の友人達が裏庭にやってきました。


そこには泣き崩れる良治と


溢れんばかりの笑顔で嬉々として写真を取り続けている佐々木 うたを発見しました。



その光景を目にした友人達は無言で裏庭をあとにしました。





帰り道、友人達は囁き合います。



「俺、予言しちゃっていい?」


「俺も予言しちゃっていい?」





「「良治ってきっと死ぬ迄ストーカー被害にあい続けるよな」」






息がぴったりな彼らの言葉を裏付けるかのようなイベントが催されたのは8年後でした。




「良治様?これで私達死ぬ迄一緒ですね!」



「はい。もう・・・はい。良いです、きっともうそれで良いです。」




ある晴れた空の下


とある教会で、ある一組のカップルが神様に見守られながら結婚式を催しました。


幸せいっぱいに微笑みバージンロードを歩く美しい花嫁と


そんな花嫁を苦笑しながらも迎える平凡な青年の姿。


そんな彼らを見つめる良治の高校時代からの友人2人は今でも息ぴったりです。



「「予言があたった。俺達○スト○ダム○よりすげぇっ!」」


今回は現代のコメディー


2作続いてコメディー短編


きっと次はある意味シリアスなスプーキー小説

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ