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性春時代  作者: あかいとまと
春休み
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春休み半ば

### 春休み半ば


「なぁ、ハヤト。あと何日で中学校の入学なんだ?」


 ハヤトのベッドに寝転がり、漫画を読みながらカズが訊く。


「丁度、あと1週間だよ」


 ベッドに寄りかかり、こちらも漫画を読みながらハヤトが応える。


「中学に入ったら新しい友達が出来るかな?」


 不安そうに言うカズに、ハヤトが応える。


「カズは人見知りをしないから直ぐに友達が出来るだろうな」


「そうか? オレ、仲良く出来ると思うか?」


 さらに不安そうに言うカズに、ハヤトは微笑みながら応えた。


「もちろん、誰とでも仲良く出来るさ」


「そうかな〜? 何かオレ、心配なんだよな〜」


 そう言うカズに、ハヤトは忠告をした。


「カズ。小学生の時のように、ふざけて皆んなのチンコを触りまくるのはやめろよ?」


「えっ、何で? チンコを触らなきゃ友達になれないじゃん!」


 そう言うカズに、呆れたようにハヤトが応える。


「別にチンコを触らなくても普通に友達にはなれるからな?」


「そうなのか?」


 信じられないとでも言ったような顔でカズが聞いてくる。


「でもさ、相手のを触って、自分のも触ってもらって、それでこそ本当の友達になれるんじゃねーのか?」


 その言葉を聞いて、ハヤトは呆れる。


「動物じゃ無いんだから、そういう事をしなくても友達にはなれるんだよ」


「えっ、人間だって動物じゃん!」


 不思議そうに言うカズに、


「そりゃあ、そうだけど。普通、人間はそういう事をしないもんだぞ?」


 と、ハヤトは諭す。


「えっ、もしかして、オレっておかしい!?」


 そう言って顔をしかめたカズに、ハヤトは優しく言う。


「ちょっと、おかしいとこはあるかな?」


 カズはその言葉を聞いて落ち込んでしまった。


 カズはベッドにごろんと仰向けになり、天井を見つめながら溜息をつく。


「オレ、変なのかなぁ〜⋯⋯」


 ハヤトはその言葉に少し困った表情を浮かべたが、すぐに優しい笑みを向けた。


「変ってほどでもないよ。ただ、ちょっと他の人と考え方が違うだけだ。悪いことじゃないけど、中学になったら、ちょっとだけ気をつけてたほうがいいかもしれないね」


 カズはまだ納得いかない様子で、腕を組んで真剣な顔になった。


「でもさ、オレ、小学生の時、ああいうのしか友達と遊ぶ方法わかんなかったんだよな。だって、触ったらみんな笑ってたし、喜んでたじゃん?」


 ハヤトは苦笑しながら首を振る。


「でもさ、中学になったら、ちょっとそういうの、恥ずかしいっていうか⋯⋯。特に男子は、敏感な年頃だから、変に触られると引いちゃう人もいるかもしれないよ?」


 カズは眉をひそめ、考え込む。


「⋯⋯敏感?」


「うん。つまり、そういうの、ちょっとプライベートな部分だから、他人に触られるのを嫌がる人もいるってこと」


 カズはしばらく黙っていたが、やがて小声で呟いた。


「⋯⋯オレ、友達、出来ないかも」


 ハヤトはその言葉に胸が痛んだ。

 カズは決して悪い奴ではない。

 ただ、人と接する方法が、ちょっとだけズレているだけだ。

 でも、そのズレが中学という新しい環境では通用しないかもしれない。


「カズ。俺がいるじゃん。俺と仲良くしてれば、きっと大丈夫だよ」


 カズは目を丸くしてハヤトを見た。


「えっ、ホント? オレ、ハヤトとずっと一緒にいられるの?」


「うん。でもさ、俺だけじゃなくて、他の人もいるよ。俺が紹介するから、少しずつ慣れてけばいいと思う」


 カズは少し安心したように微笑んだ。


「オレ、ハヤトが好きだよ。友達よりも、何よりも、ハヤトが一番好き」


 ハヤトは少し照れくさそうに頬をかいた。


「⋯⋯ありがと。俺もカズとは長い付き合いだからな。でもさ、他の人も大事にした方がいいよ?」


 カズは再び真剣な顔になり、ベッドから起き上がった。


「分かった。オレ、中学になったら、もうちょっと大人っぽく振る舞うようにする。でもさ⋯⋯」


「ん?」


 カズは恥ずかしそうに目をそらしながら、小声で言った。


「もし、他の人がオレのに触ってきても、オレ、断れないかも⋯⋯」


 ハヤトは思わず吹き出してしまった。


「えっ、今度は触られるほう!?」


 カズは真顔で頷く。


「うん。だって、触られると気持ちいいし、オレ、断るの苦手なんだ」


 ハヤトは笑いながらも、少し真面目に考えた。


「⋯⋯カズ。それも、ちょっと危ないかもな。誰にでも触られたら、トラブルになることもあるから、気をつけてくれよ?」


 カズは首を傾げながらも、頷いた。


「分かった。オレ、触るのも、触られるのも、もうちょっと気をつける」


 ハヤトはホッとしたように微笑んだ。


「よし、じゃあ、中学でも仲良くやっていけるよう、一緒に頑張ろうな」


 カズは嬉しそうに笑った。


「うん! オレ、ハヤトと一緒なら、何とかなる気がしてきた!」


 その時、カズのスマホが鳴った。


「あっ、オレの兄貴から電話だ」


 カズは立ち上がって部屋の隅に行き、通話を始めた。


「はいはい、何だよ?」


 ハヤトはその様子を見ながら、少し考えていた。


 カズは確かに変わっている。

 でも、その純粋で素直な性格は、人を惹きつける魅力がある。

 中学という新しい世界で、少しは大人っぽくなるかもしれないし、逆にそのままで、誰かと深い友情を築くこともあるかもしれない。


 ハヤトは、カズのことを心配しながらも、どこか楽しみだった。


「⋯⋯カズ、お前の中学生活、どうなることやら(笑)」


 そう呟き、ハヤトは再び漫画に目を落とした。







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