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性春時代  作者: あかいとまと
春休み
47/50

高校中退

### 高校中退


 それから数日後。

 カズは両親と共に高校を訪れ、退学届けを提出した。

 担任や校長からは期待の言葉を述べられ、残念がられたが、最終的には退学を認めてくれた。


「今までお世話になりました」


 そう言って頭を下げるカズと両親に、校長が言った。


「カズ君のこれからのご活躍を期待します」


 カズと両親は再び頭を下げると、高校を後にした。


 その日の夕方、高校から帰宅した兄貴に、カズは残念がられた。


「せめて高校までは出て欲しかったな」


 そう言う兄貴に、カズは、


「ゴメン。どうしてもマンガの連載と小説の連載の方に集中したかったんだ」


 そう言って、頭を掻いた。


「ハヤトに報告はしたのか?」


「まだ。どう話していいか分からなくて」


 そう言うカズに、兄貴は言った。


「ハヤトならお前の出した結果を認めてくれるだろ」


 そう言って、カズの肩を叩く。


「ほら、行って来いよ」


 兄貴にそう言われ、カズはハヤトのもとへと向かう。


 部屋に行くと、ハヤトはベッドに横になり雑誌を読んでいた。


 カズが入って来たのを横目で見ながらハヤトが言う。


「カズが来るのは久し振りだね。どうかした?」


 言いながら雑誌を閉じると、身体を起こしてあぐらをかく。


「あのさ、ハヤト⋯⋯オレ、高校を中退した」


 目線を合わせずにカズがそう言うと、ハヤトは、


「最近忙しそうだったもんね」


 と、優しく言う。


「オレ、どうしても三つの事がやりかねててさ⋯⋯それで、マンガの連載と小説の連載に集中する事にしたんだ」


「カズが出した答えなら俺は反対しないよ。でも、よく決断したね」


 カズは少し驚いた表情でハヤトを見た。

 予想していたのは怒りや心配、あるいは呆れだった。

 だが、ハヤトの反応はそれとは少し違っていた。


「カズが出した答えなら俺は反対しない」


 ハヤトはそう言うと、微笑んだ。

 その笑顔に、カズは胸の奥に何か温かいものが広がるのを感じた。


「オレ、お前に迷惑かけるつもりはなかったんだ。でも、どうしてもマンガと小説に集中したくて⋯⋯」


「分かってるよ。お前が何を考えているか、俺には分かる。お前は昔から、一度決めたことにはとことん突き進むタイプだったからな」


 ハヤトは立ち上がり、窓辺に歩いていった。

 夕暮れの光が柔らかく部屋を照らしている。


「でもな、カズ。高校を辞めるってことは、それなりのリスクがある。世間の目も変わるし、将来の選択肢も狭まるかもしれない。でも、お前ならそれを乗り越える力があるって信じてるよ」


 カズは黙って聞いていた。

 心のどこかに残っていた不安が、少しずつ溶けていくような感覚だった。


「それにさ、お前が今やろうとしていることって、普通の高校生じゃ絶対にできないことだろ? マンガと小説、両方の連載って、並大抵の努力じゃ無理なんだよ。お前、本当にすごいことやってるんだぜ?」


 カズは恥ずかしそうに顔を赤らめた。


「そんなことないよ⋯⋯ただ、やりたいって気持ちが強かっただけで」


「いや、ただじゃないよ。お前のその“やりたい”っていう気持ちが、他の人間にはない才能なんだよ。俺にはそれがよく分かるんだ」


 ハヤトはカズの肩をもう一度軽く叩いた。


「だから、これからも頑張れよ。お前が大成功したら、俺も誇れるからな。お前の友達として、親友として、応援してる」


 カズは目を潤ませながら、小さくうなずいた。


「ありがとう、ハヤト。オレ、絶対に成功してみせる。兄貴や両親、学校の先生たちにも、この選択が正しかったって思ってもらえるように」


 ハヤトは笑いながら言った。


「お前がそう言ってくれるなら、俺も安心だ。でもな、成功するってのは、他人に認められることじゃなくて、自分自身に納得できることなんだぜ。お前が納得して進んだ道なら、どんな結果になっても後悔はないってことだ」


 カズは深く息を吸い込み、そして吐き出した。


「分かった。オレ、自分の道を信じて進むよ」


 ハヤトは頷き、また雑誌を手に取った。


「じゃあ、俺はこれからもお前の応援するよ。でもな、たまには顔出せよな。お前の顔を見ないと、ちょっと寂しいからな」


 カズは笑顔で答えた。


「うん、また来るよ。これからもよろしくな、ハヤト」


 そう言って、カズは部屋を出た。

 外はすっかり夕暮れで、空はオレンジ色に染まっていた。


 彼の心には、これまでにないほどの覚悟と希望が満ちていた。


 高校を辞めたという事実よりも、これから始まる人生の方が遥かに重要だった。


 カズは歩きながら、心の中でこう呟いた。


「俺の物語は、今から始まるんだ」







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