高校生活の始まり
### 高校生活の始まり
高校入学の当日。
朝の陽射しが柔らかく校舎を照らす中、カズは制服を着て、胸に高鳴る期待と不安を抱えながら、新しい高校への第一歩を踏み出した。
しかし、その足取りはどこか重く、表情もどこか硬い。
緊張のあまり、彼の胃はきゅっと縮こまり、頭がくらくらするような感覚に襲われていた。
校舎の中に入ると、カズはすぐにトイレに駆け込み、吐き気をもよおした。
それを見た友人たちは心配そうに声をかけたが、カズは「大丈夫、ちょっと休めば」とだけ言って、保健室に向かうことにした。
保健室のドアを開けると、そこには優しそうな雰囲気の保健教諭の女性がいた。
彼女はカズの顔色を見てすぐにベッドを勧め、静かに話を聞いてくれた。
「大丈夫? 気分が良くなったら帰っても良いわよ」
カズはベッドに横になりながら、彼女の言葉に軽くうなずいた。
少しの間、静かな時間が流れ、彼は深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着けようとした。
「はい。もうだいぶ良くなりました」
ようやく、カズはそう答えることができた。
彼の顔色も少しずつ元に戻り、先ほどの不安な表情は薄れていった。
制服を整えてベッドから起きると、彼は丁寧にお礼を述べる。
「ありがとうございました」
そう言って、保健室を後にする。
外に出ると、春の風が心地よく肌を撫で、カズは少しだけ気持ちが楽になったように感じた。
校舎を出て、校門に向かうと、そこには多くの部活の勧誘がひしめいていた。
中学の頃と同じように、バスケットボール部やサッカー部、吹奏楽部などが新入生に声をかけている。
しかし、カズはそれらを素通りした。
彼の興味は、もう一つの世界にあった。
マンガや小説の創作活動に没頭する日々。
中学の頃からその道を歩み始め、少しずつ自分のスタイルを確立しつつある彼にとって、部活に時間を割く余裕はなかった。
「カズ、もう平気なのか?」
校門のところで、カズの幼なじみであるハヤトが待っていた。
彼はカズのことを心配そうに見つめている。
「あぁ、ごめんごめん。もう大丈夫だ」
カズはそう言って、ハヤトの隣に並んだ。
二人の影は、朝の光を浴びながら伸びていて、どこか懐かしい雰囲気を漂わせていた。
「また、あんなことになったのか?」
「うん⋯⋯ちょっと緊張しすぎたみてー。でも、もう大丈夫。今日は新しいスタートだしな」
カズはそう言って、軽く笑った。
彼の笑顔には、少しずつ自信が戻ってきているように見えた。
「そうか。なら良かった。お前、また何かあったらいつでも頼れよ」
「ああ、ありがとうな」
二人は校門を出て、街へと向かう。
新しい制服を着た彼らの姿は、どこか眩しく、そしてどこか切なげにも見えた。
カズは心の中で、こう誓っていた。
「今年は、自分の道をもっと突き詰めていく一年にしよう」
彼の高校生活は、少しずつ動き始めていた。




