77、だって、お母さんが好きだもの。
私にはどうやって脱出したのかはわからない。それでも、きっとあの母ならばできるだろう。行動力については言うまでもないが、それ以上に曲がったことが嫌いな性格だったから。
おかしくなってからも、その気質が変わらなかったのか、それとも単に気まぐれだったのか、私には訊けないし訊く権利もない。だって、辛かっただろうから。
母の初恋であると同時に、人生を共に歩む予定だった男性、つまり私の父は、今はどこにいるのかはわからない。
私にとってはどうでもいいけれど、母からしてみれば、今回の件の元凶だ。
しかし、それが自分を愛し愛された者だったとすれば、それはどれだけ辛いものだっただろうか。
まあ、別に今更父のことなんてどうでもいいけれど。
私はお母さんが大好きだ。その容姿も、性格も、もちろん、私を利用している現在も。
ああ、そうね。まだ話していなかった。なぜ私がここにいるのか。
理由は単純。子供でもわかること。ただの「仕返し」。たったそれだけ。
昔の母ならば、そんな私情でこんな大それたことは絶対にしなかっただろう。もっと冷静に自分の状況を判断して、何をするべきか、どうすれば良いのかを、必ず模索する。そういう性格だった。
しかし、もう昔の母はいない。今の母は、自分の欲望のままに、感情のままに行動する、暴力的な人だ。
だから娘である私のことだって、ただの道具としてしか見ていない。それは普通なら、非難されるべき行いだろう。
でも、それでいいのだ。だって、私は母を愛しているから。
だから「王族になれ」と言われれば王族になるし、「自分を捨てろ」と言われたら自分を捨てる。
なので今回のことも特に抵抗はなかった。「母を体よく使い、あげく牢に入れた者共に復讐する」ただそれだけだ。そのために約20年間閉じ込められることになったとしても、そんなこと些事だろう。
“私が母を愛しているから”
他の理由など必要だろうか?




