75、問
ウニは行き着いた自分の考えに恐ろしくなり、ブンブンと頭を振った。
(そんなわけない!今までミーア様の護衛をしてきたのが何よりの証拠でしょ!)
ウニが自分に言い聞かせていると、ミーアは、フフフ、とその様子を楽しそうに眺める。
「無理しなくていいのよ?ウニ。そう。ミーアなんて王族、そもそもいなかったの」
そう言ってニコニコ笑うミーアに、ウニは寒気を覚え、そんなわけないです!と叫んだ。
「だったら、今までのは何だったんですか!?わたしだけじゃなく、隊長も、ノアだって!みんなミーア様のこと知っているん――」
「簡単よ、操ってたの」
「え、、、、、?」
(あや、つる、、、、?)
ウニは、まるで初めて言葉を聞いた赤ん坊のように、目を瞬かせた。
(操るって、どういうこと?そんな魔術、聞いたことないよ)
そもそも、そのような術があれば、とっくの昔に禁止になっているはずだ。だって、そうだろう。人体を乗っ取って操るなんて技、恐ろしいことこの上ない。
だがウニは、ある一族のことを思い出した。
「“天候を操る一族”、、、、、」
そうだ、ミーアが言っていたではないか。とても信じられないが、自分はマシーラの子供であると。
そう考えたウニは、またもや激しく頭を振った。
「信じられない!し、信じたくない、、、、、だって、だったら!」
ウニの叫び声に、静かに答える者がいた。ミーアだ。
「ええ。信じられないわよね、信じたくないわよね。まさか自分たちが――ウニたちが、私に記憶を弄られている、なんて」
「、、、、、」
「確かに、そんな魔術は世に出回ってないわ。だけど、存在はするのよ。我が一族にはね」
「、、、、、」
「私たち一族は、決して天気の魔術だけじゃないの。だって、それだけじゃとっくに滅びているもの。他にも、たくさんの実験をして、たくさんの犠牲を払って、ときには怪しい儀式で生贄を捧げたりして、、、、、色々な魔術を生み出したわ。そう、色々ね」
「、、、、、」
ウニは頭の中に一気に入ってくる情報に耐えられず、いわゆるフリーズ状態だった。
ミーアは崩れ落ちるウニの体を支え、耳元で呟いた。
「そうね。だから、私すべてを話すわ」
ゆるゆると顔を上げるウニに、ミーアはニッコリと微笑む。
――それはとても、歪な笑みだった。
「まだ、なんにも話してないもの。きっと、ウニはその賢しい頭で証拠も何も全部考えているんだから、今頃抵抗したって遅いわ。だったら、私がすべて言うの。だって、そっちのほうがかっこいいじゃない?」
ミーアはすっかり明るくなった空を、窓越しで見つめながら、その柔い唇をそっと開いた。
「そうねぇ、どこから話そうかしら、、、、、私が、“ミーア姫”になったときからにしましょうか」




