73、舞踏会襲撃事件
「どうして、そう思ったのかしら」
ミーアは異様な落ち着きぶりだ。きっと、自分のことを過信しているのだろう。
しかし、ウニは構わず続ける。
「そうでないと、おかしいからです」
ミーアが、これまで起こった事件――舞踏会襲撃事件や、“戦場の基地”襲撃事件など――の黒幕、または関係者だと仮定すると、犯人の像も、自ずと見えてくる。
「舞踏会襲撃事件では、犯人は平民の男性でした。ですが、彼は取り調べの際、『言ったら殺される』と繰り返していたそうです。それに、、、、、当時、王宮の警備は厳重でした。平民一人が、身一つで、王宮の舞踏会会場に忍び込めるはずがないのです」
「そうね、それがどうかして?」
「『王族の護身用の小刀』――ミーア様がおっしゃったのです。それくらいしか、持ち込めないだろうと」
だったら、王族の関与を疑うのは、普通の流れだ。ウニも、そう思った。
「ええそうね。でも、だからって、わたくしが関係してるとは言えなくてよ?」
「はい。消去法です」
まず、国王陛下と王妃は――言わずもがなだ。国王はそのとき病にかかっていたし、王妃たちはおそらく、彼の様子を見たり、そばにいてあげたりしただろう。舞踏会のとき、王妃一人はいただろうが、そもそも事を起こしてもなんの特もない。
他の王子や姫も同じだ。社交で忙しい中、襲撃を手伝えるはずもない。さらに、継承者問題真っ只中なのだから、そんな余裕どこにもないだろう。
だが、ミーアはどうだろう。これまで、滅多に姿を見せず、存在自体あやふやだった。同じ王族のように社交を任されることもないだろうし、比較的時間があったのではないか。侍女もいなく、監視の目はかいくぐりやすかったと言える。それに――
「舞踏会の前、国王陛下の容態が急変しました。そのとき、王宮内は混乱していた。そのどさくさに紛れて、、、、、どういう手を使ったかはわかりませんが、犯人の男と接触したのではありませんか?」
あの騒動にまぎれて、宮殿内を移動するのは、容易かったはずだ。
ウニは唇を噛みしめる。自分が早く西の塔に向かっていたら、事が起こらずに済んだかもしれなかったからだ。




