70、最初からおかしかった。
しばらくそのまま呆然としていたウニだったが、ハッ、と我に返った。
(こんなことをしている場合じゃないっ、早く、戻らないと!)
「サラス!もう十分です、戻りましょうっ!」
「ええ!もういいんですか!?」
うん、とウニには頷き、急いで“国王の知識棚”を出て、扉を閉める。
東の塔へ向かう途中、ウニはずっとミーアについて考えていた。
なぜなら、ミーアの一言で、ウニはここまで来たからだ。
ミーアがあのとき、“国王の知識棚”を口にしていたから。
逆に言えば、あれがなければ、ウニは底と一生関わりがなかったと言える。
もし、ミーアが今の状況を望んで呟いたのだとしたら、、、、、一番怪しいのは彼女ではないだろうか?
自分の主君を疑うのは、とてつもなく苦しい。そうではないと願いたい。だが、今は情報が欲しい。ウニの頭の中は、色とりどりの首飾りが絡まり合って取れないように、こんがらがりすぎなのだ。
(なにか、、、、、変なことはなかった?)
はじめから、、、、、。
***
思えば、最初からおかしかった。
ミーアは、とても恥ずかしがり屋だと聞いていた。だったら、なぜそんなすぐに、赤の他人であるウニを受け入れられたのか?
ウニはシャイどころか、フレンドリーな性格(?)なので、全くわからないが、侍女を一人も入れないなどとあれだけ人を寄せ付けないでいて、ウニにすぐ心を開くなど、どれだけ良い人柄でもそれはないのではないかと思ってしまう。
もちろんわからない。もしかしたらあの時、ウニの発した言葉に心を打たれたのかもしれない。だが、それとは別に、そんなにすぐに信じるだろうか?
少し響いた程度じゃ、その翌日に、彼女を信じてみよう、などと急に懐くのは、おかしくないだろうか。“その人を信じる”と“その人に少し好意を抱く”は、似ているようで似ていない。もしも、本当に感じたのだとすれば、ウニが来るまでに、そういう存在はいなかったのだろうか?
ウニの前任や、召使い。使用人に、そう思える者はいなかったのだろうか?
いたとしても、裏切られたのなら、もっと警戒してもいいと思うが、、、、、。
ミーアはウニの一つ下。今年で18になる。逆に言えば、それほどまでずっと部屋に閉じこもってたのだ。物語の中ならまだしも、どれだけ優しい言葉をかけられても、そんなすんなりうまくいくものなのか。
ウニにはよくわからない。こんな事を考えて、失礼だ、王家に対する侮辱だ、と捉えられても変だとは思わない。ミーアと同じような境遇の人に怒られても仕方ないかもしれない。だが、おかしいと感じてしまうのだ。
(もしかして、、、、、ミーア様は、本当は、人見知りではない?)
だったら、なぜ、あれだけ部屋に人を入れなかったのだろう?
(もしも、、、、、もしも、なにか隠し事や、知られたらいけないことを、ミーア様にあるとすれば、、、、、)
――すべての、辻褄が合う。
もし、、、、、その、隠し事が、あの一族と関係あるのだとしたら?
「――、、、、、!」
、、、、、これで、すべてが、つながった。
(でも、本人に確認しなければ、何も始まらない。それに、すべて私の想像だし……まだわからないことだって、ある)
では、行こうではないか。――“西の塔”に。




