59、ノアはすべてを諦めた。
「は?“国王の知識棚”ぁ?」
ウニはその日の夕食のとき、ノアにミーアの言葉について質問してみた。
「うん。なんか『天候を操る一族』について説明したら、そう呟いていまして」
――、、、、、もしかしたら、“国王の知識棚”だったらあるかもしれないわね、、、、、
ミーアはたしかにそう言っていた。
だから、ある意味仕事の先輩であるノアに聞いてみたのだ。
「まぁ、たしかにあるが、、、、、」
そこで言葉を区切り、ノアはジトリと湿った視線を投げかけてきた。
「それで?何を企んでいる」
さすがノアだ。完全にウニの生態を把握している。
ウニは背中に冷や汗が出てくるのを感じながら、えーっとぉ、、、、、と目を泳がせる。
「ちょっと、『天候を操る一族』のことについて、知りたくなっちゃって、、、、、ですねぇ」
「ほう?それで、首を突っ込もうと、、、、、?」
観念したようにコクリと頷くウニに、ノアは嘆息した。
彼は色々と諦めた顔で、言う。
「心配して言っているんだが、、、、、まぁ、止めたところで、やめるわけがないか」
「はい。そうですね」
「認めるな」
そして、気怠そうにノアは訊ねる。
「で、何が目的だ。吐いて楽になれ」
まるで罪人を見るような目でそう言うノアに、ウニは少し引っかかったが、まあいいか、と話し始めた。
「そのですね、まぁ、ノアさんが何回も注意してきたのはわかって、重々承知しているのですが、、、、、やっぱり人間、好奇心というものはあると思うんですよ、、、、、」
黙って先を促すノア。
「だから、、、、、そのぅ、えっと、、、、、今夜、潜入しようと思っていまして」
「は?どこに」
ウニは目線を右にずらしながら、小さく呟いた。
「その、“国王の知識棚”、に」
ノアはたっぷり十秒沈黙した後、目を見開き、怒鳴った。
「はぁ!?」
はい、ごもっともです、、、、、と思いながら、ウニは慌てて付け足す。
「いえ!ちゃんとバレずにやるんで!!安心してください」
「そこじゃないわ!」
ノアはめずらしく取り乱しながらも、心を落ち着けるように深呼吸する。
「ふぅ、はぁ、、、、、まずは、そこまで行った経緯を説明しろ」
「はい。ミーア様が“国王の知識棚”に私の欲しい情報があるかもと言っていたからです」
「単純すぎるだろ」
押し殺した声で呻くノアに、ウニが、怒ってばっかりじゃ老けますよ、と言うと、案の定殴られた。
殴られた場所をさすっていると、ノアが続ける。
「お前、わかっているのか?バレたら良くて幽閉。悪くて処刑、、、、、」
「この国に処刑はありませんよ。そもそも、暴力は禁止です」
「体術が武器のお前が言うな。というか、今話したことを俺が流すかもしれないぞ、誰かに。そしたらお前はもれなく終身刑だ」
物怖じせず、ウニは可愛らしくパチンとウィンクする。
「だいじょうぶです。そのときは、わたしがノアを道連れにするので」
「ハッ、洒落になってないぞ」
「はい。洒落じゃないので」
「、、、、、お前が言うと笑えないな」
乾いた笑みを漏らすノアに、ウニは首を傾げた。
「というか、なんでノアは他人事のように言うんですか?」
「は?」
「だって、ノアがこの話を聞いた時点で共犯なんですよ?」
その言葉聞くと同時に、ノアは全てがわかり、同時に終わったような顔でうなだれる。
「そうか、まぁ、わかっていたさ、、、、、」
「はい!なので、行きましょう!」
「――“国王の知識棚”潜入調査!!」




