54、ウニのマジギレ
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「で、状況を説明してくれますか?」
そう言ってウニは全く目の笑っていない笑みを顔に浮かべる。
足元には、正座したノアと謎のダサ男がいた。
先程までは絶好調だった男だが、今ではウニの鬼の形相にプルプルと震えている。
――早朝におきた事件。その争いで勝ったのは紛れもなくウニであった。
ウニはこう見えて圧倒的な武力派。2人が彼女の逆鱗に触れたときには、もう遅かったといえよう。
なお、そのあとどのようにウニが暴れたのかはあえて言わないでおく。
さすがのノアも、ウニのただならぬオーラと殺気に若干焦った様子で、両手を意味もなく動かす。
「いや、ウニ落ちつ、、、、、」
「ノア。わたしは、今、説明をお願いしているんです」
「、、、、、はい」
般若のような顔をチラつかせるウニに、他の食堂にいる者たちも何も言えない。
――ウニが起こっている理由は2つ。ノアに“馬鹿娘”呼ばわりされたことと、朝の優雅な食事を邪魔されたことだ。
そんなのことで?と思うかもしれないが、ウニは、朝は普段より怒りっぽいタイプなのだ。
さらに、最近起こっている妙な事件が重なり、ウニの精神状態はここのところ不安定だった。
――つまりは、少々テンションがおかしいまま怒っているということになる。
そんな状態なので、ウニは度を知らないその恐ろしい顔のまま口を開いた。
「で、あなたはどちら様ですか」
それまで沈黙を貫いてきた“夜露死苦男”は、恐る恐るといった感じで言葉を絞り出す。
「さ、サラスです、、、、、姉貴」
「姉貴は結構」
ピシャリと言い放つウニに、男――サラスは肩を竦める。
ウニはその様子にため息を付き、言葉を続けた。
「そのダッッッッッサイ服装で2人して寮を走り回って、食堂に乗り込んできて、、、、、」
ウニの言葉に、ダサい!?とサラスが小さく声を上げたが、すぐにノアに口を塞がれた。
一方、ウニはそれに気づくこともなく話を続ける。
「はぁ、、、、、今日はせっかくの買い物だったのに、、、、、朝から気分が台無しです」
その一言にサラスは反応した。
「そうです!姉貴!!今日は、楽しい楽しいショッピングなんですよねぇ!?」
待ってましたと言わんばかりに話すサラスに、ウニは勢いを削がれた様子で、う、うん、と頷く。
「たしかに、そうですけども、、、、、」
「だから俺様、ノアくんがかっこよくなれるように手を尽くしましてぇ、、、、、」
身振り手振りをつけながら話すサラスに、ウニは、ふんふん、と頷いたあと、ニッコリ笑う。
それに安心したのか、釣られるようにサラスもニッコリ笑う。
「わかってくださいましたか、あね、、、、、」
「うんうん、わかりましたよ、あなたの頑張りは。でも先程も言った通り単刀直入に言うと、あなたのセンスはそう、壊滅的にダサイです。はい、それはもう」
その言葉にサラスは怖いのと傷ついたので涙目になる。はたから見ればそれはまるで、ちょっと生意気なチワワとそれを躾けるピットブルだ。
「なので、ノア」
急に呼ばれたノアはビクッと肩を竦ませ、はい、と返事をする。
「あなたには着替えてもらいます。今すぐ、いつものローブに着替えてらっしゃい」
そしてその言葉を合図に、ノアは駆け出していった。
「サラス」
次に呼ばれたサラスは、鼻声で返事をする。
「ばい、、、、、」
「あなたももっとマシな服に着替えてきてください。な、る、べ、く、シンプルなもので」
「、、、、、は、はひ――っ!」
それを幸とばかりに、ズダダダダッ、とサラスは逃げていった。
そしてウニは一人、はぁっ、とため息をつくのだった。




