50、笑うウニ
ウニは戦士になりたかった。
無論そのつもりで毎日修練していたのはユウマも知っているし、ウニが実際それを目標にしていたのは事実だ。
だが肝心なのは理由の方である。
――早く姉さんに恩返しがしたい。
それがウニの本心だった。
ユウマは見返りも求めずウニを拾い、尽くし、労ってくれた。
いつの間にかそれが当たり前となっていた毎日に、ウニは独り立ちすべく終止符を打ちたい。
だが、1人前になるには師を上回る必要がある。
しかし、それは不可能と言えよう。
(だって、姉さんは初老、、、、、ヴッウン、40歳目前なのにバケモノすぎる。今の私は確かにそこらの連中よりは強い。でも、姉さんと比べれば明らかに“経験”が少ない)
でもウニはもう迷惑をかけたくないのだ。
そのためには、少なくとも本気を出さなきゃ勝ち目がない。
「――ごめんなさい、姉さんッ!」
一瞬で、瞬き一回分の僅かな時間でウニはユウマの鼻先まで近づいた。
そしてこれまた人外のスピードで顎を狙い、気絶させようとする。
「うわっ!速い!」
しかし、いとも簡単に避けられる。
(ここまでは想定内、、、、、!次に蹴りを――)
「よいしょ」
その瞬間、視界が反転した。
「は?」
脳が状況を理解したときには、ウニはユウマに馬乗りされていた。
「ウニ、まだまだよ」
視界には屈託なく笑う師匠の顔。
「うわ、サイコパスかよ」
人に馬乗りして子供みたいに笑うなんて、、、、、と半ばドン引きするウニに、ユウマは心外そうな顔をしたあと体をどける。
「ひどいわね、昔は可愛かったのに」
「すみませんね、今は可愛くなくて」
軽口を叩きながらウニは立ち上がる。
負けた。あっけなく。
ウニは俯いた。
「わ、泣いちゃった!?大丈夫よ、数ヶ月でここまで出来るのもすっごいから!!もう!本当すごいなぁわたしの弟子は!」
ユウマが慰める言葉を聞きながらウニは――
――笑っていた。




