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5、人見知りの姫

 「ああ、、、、、どうしましょう」

 自分のベッドに座りながら、ミーアは悶々と考えていた。

 なぜなら今日は―自分の護衛になる、“無血の戦士”ウニ・シェルムが挨拶に来るのだ。人見知りのミーアにとって、挨拶は最も困難なことの1つである。

 王国の一姫である分際、それは許されないことだとわかってはいるが、護衛は顔なじみの者だけで十分だ。新しい、はじめましての人は、できれば会いたくない。

(だって、、、、、きっと幻滅されてしまう)

 こんなのがシェラール王国の姫だなんて、、、、、と、ミーアはずっと言われ続けてきた。それでまた傷つくのは、勘弁だ。だったら、最初から関わらないほうがいい。

 はぁ、、、、、とため息をついたとき、部屋の扉から声が聞こえた。

「王国機密戦闘部隊“戦士”ウニ・シェルムです。失礼してもよろしいでしょうか」

 ひぃ!ついに来たんだわ、とミーアは驚いた。そして、私はこの国の姫なのよ、、、、、しっかりしないと、と己に言い聞かせ、口を開く。

 「、、、、、どうぞ」

 やった!噛まずに言えたわ!と喜んだのも束の間、その後の挨拶でミーアは見事に噛み、そのままベッドに沈んだのだった。



***



「んん、、、、、ここは、、、、、?」

ミーアはきちんと寝かせられた状態で目を覚ました。

「あ、お目覚めですか?ミーア様。すみません、失礼だとは思ったのですが、少し体の位置を変えさせていただきました」

起き上がってみると、自分の横には黒髪に海色の瞳の少女がいた――ウニだ。

 彼女の姿を見た瞬間、ミーアは自分がさらした醜態を思い出した。

「!、、、、、ごめんなさい。わたくし、、、、、なんて姿をお見せしてしまったのかしら。がっかりしたでしょう、こんなのがシェラール王国ミーア姫なのよ、笑いすらできないわ、、、、、」

自分が人見知りなことも忘れ、羞恥に顔を赤くさせてうつむくミーアに、ウニはそっと声をかけた。

「あの、、、、、わたし別に、ミーア様にがっかりなどしていません。むしろ、、、、、感心しました」

へ?と顔を上げたミーアに、ウニは恥ずかしさと気まずさが混ざったような表情で言葉を続ける。

「その、なんていうかですね、すっごく上から目線で失礼なことになると思うんですけど、、、、、自分の短所を認められて、自分より立場が下の人にきちんと謝罪できる方って、見たことなくて、、、、、。大体の方が人のせいにするんです。だけど、ミーア様はそんなこと全然しなくて。優しいなぁ、素敵だなぁって感心しました」

言った後、ウニは真っ青になって謝罪した。

「も、申し訳ありません!とても偉そうなことを!どうかお許しくだ、、、、、」

「ありがとう」

自然と喉から出た。

「本当にありがとう、、、、、わ、たくし、こんなに嬉しくて、誇らしくなったのは、いつぶりかしら」

「、、、、、へ?」

ウニは目を丸くして固まっている。

 相変わらず言葉はたどたどしくて怪しいが、なんだかここまで喋ったのは久しぶりな気がしたのだ。



――彼女なら、大丈夫かもしれない。ウニが護衛になってくれるなら、本当の自分を出せるかもしれない。



そう思えたことに、ミーアは驚きつつも嬉しくなって、目の前にいる少女に向けて柔らかく微笑んだ。

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